2013 Fiscal Year Research-status Report
細胞極性崩壊による発癌機構に着目した婦人科腫瘍の悪性化予測バイオマーカーの開発
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24592506
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長阪 一憲 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30624233)
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Keywords | 子宮頸癌 / ヒトパピローマウイルス / 発癌メカニズム / 転写物 / ノンコーディングRNA |
Research Abstract |
子宮頸部異形成レベルの細胞と、子宮頸癌細胞を比較し、ハイリスクヒトパピローマウイルス(以下HPV)感染から子宮頸癌に至る癌化の過程について、HPVと細胞の両者の網羅的遺伝子発現解析によって発癌予知バイオマーカーを探索することを目的とした。子宮頸部異形成レベルの細胞(W12E)と子宮頸癌細胞(CaSki, SiHa)に関して、次世代シークエンサーを用いた網羅的オミックス解析とバイオインフォマティクス技術で遺伝子発現を検討した。HPVには9つの蛋白質発現に至る(コードされた)遺伝子があるが、HPVゲノム由来のコードされていない(ノンコーディング)RNAは同定されていない。1) CAGE解析の導入:HPV16陽性のCIN1由来のW12細胞と子宮頸癌細胞株SiHa、CaSki細胞のRNAを抽出し、細胞内の全RNAの5’ 端にマーカーをつけ、次世代シークエンサーで網羅的オミックス解析(CAGE法)を行った。CAGE法により細胞内の全転写物の転写開始点とRNA量がわかる。全ノンコーディングRNAをウイルスもしくは細胞ゲノム上にマッピングした。2) 全転写開始点の同定: HPV16ゲノムにマッピングされたノンコーディング RNAの各転写方向と転写産物を確認し、転写開始点を網羅的に同定した。また細胞および臨床頸部検体での、新規に同定された転写物をクローニングした。3) ウイルス側の解析:新規に同定された転写物の発癌メカニズムにおける役割を検討するために、その転写物の発現ベクターを作製し、培養細胞で強発現させ、HPV16陽性細胞に与える影響を調べた。4) 細胞側の解析:バイオインフォマティクスのデータベースを用いて遺伝子発現解析を施行し、CINから癌へ至る過程で上方制御、および下方制御されている遺伝子群をそれぞれ抽出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子宮頸部上皮異形成細胞株であるW12E細胞には16型HPVがエピゾームとして存在しているが、子宮頸癌細胞株であるCaSKi細胞あるいはSiHa細胞では16型HPVが宿主側のゲノムにインテグレーションされている。次世代シークエンサーを用いた網羅的解析によりウイルス側、細胞側の全ての転写物を確認することで16型HPV感染により細胞が発癌へ向かう過程を検討した。その結果、16型HPV感染細胞ではウイルス側の転写開始点がセンス鎖に22個、アンチセンス鎖に8個あり、未知の転写物が含まれていた。未知の転写物のうち、最も発現量の高い転写物は、HPV16のE1遺伝子上に転写開始点があり、アンチセンス鎖方向のノンコーディングRNA(E1 アンチセンス)であった。一方で、細胞側のCIN由来W12細胞に比して、子宮頸癌細胞株で最も抑制されていた遺伝子群が、細胞極性・接着系であった。PDZドメイン蛋白質の下流で作用する遺伝子群が網羅的オミックス解析によっても抑制されていることが確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の結果、CAGE法によりHPVゲノム由来のアンチセンスRNAを新規に同定した。E1アンチセンスは、頸癌細胞で欠失し、E1発現を相補的に負に制御することから、CINからの発癌を抑制するバイオマーカーとなりうる。また、細胞側の検討では、癌化誘導においてPDZドメイン蛋白質の下流で作用する遺伝子群が抑制されていることがわかり、今後は子宮頸癌だけでなく、卵巣癌においても細胞極性、接着因子系路の意義について検討を進めて行く予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に、臨床サンプルを対象とした次世代シークエンサーでの網羅的解析を行い、その結果をもとに簡便に検出でき、診断へ実用化できる方法への応用を進めて行く予定であったが、子宮頸癌異形成モデル細胞からの分析より新規ノンコーディングRNAを同定し得たため、細胞極性に焦点を当てた計画を一部変更した。このため、臨床サンプルを使用したバイオインフォマティクス解析などを次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。 26年度では、子宮頸癌の発癌メカニズムを次世代シークエンサーで網羅的に解析した結果を用いて、診断へ実用化できる方法への応用を進めていく。そのための経費に使用して行く。また、卵巣癌の悪性化診断を実現して行くための基礎的検討を培養細胞、マウスモデルを用いて進めて行く。これらの経費に使用して行く予定である。
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[Journal Article] High-risk human papillomavirus correlates with recurrence after laser ablation for treatment of patients with cervical intraepithelial neoplasia 3: a long-term follow-up retrospective study.2014
Author(s)
Inaba K, Nagasaka K, Kawana K, Arimoto T, Matsumoto Y, Tsuruga T, Mori-Uchino M, Miura S, Sone K, Oda K, Nakagawa S, Yano T, Kozuma S, Fujii T.
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Journal Title
J Obstet Gynaecol Res
Volume: 40
Pages: 554-560
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Matrix metalloproteinase (MMP)-9 in cancer-associated fibroblasts (CAFs) is suppressed by omega-3 polyunsaturated fatty acids in vitro and in vivo.2014
Author(s)
Taguchi A, Kawana K, Tomio K, Yamashita A, Isobe Y, Nagasaka K, Koga K, Inoue T, Nishida H, Kojima S, Adachi K, Matsumoto Y, Arimoto T, Wada-Hiraike O, Oda K, Kang JX, Arai H, Arita M, Osuga Y, Fujii T.
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Journal Title
PLoS One.
Volume: 27;9(2)
Pages: e89605.
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Anti-tumor activity of olaparib, a poly (ADP-ribose) polymerase (PARP) inhibitor, in cultured endometrial carcinoma cells.2014
Author(s)
Miyasaka A, Oda K, Ikeda Y, Wada-Hiraike O, Kashiyama T, Enomoto A, Hosoya N, Koso T, Fukuda T, Inaba K, Sone K, Uehara Y, Kurikawa R, Nagasaka K, Matsumoto Y, Arimoto T, Nakagawa S, Kuramoto H, Miyagawa K, Yano T, Kawana K, Osuga Y, Fujii T.
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Journal Title
BMC Cancer.
Volume: 13;14
Pages: 179
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Cyclin D1 harboring the T286I mutation promotes oncogenic activation in endometrial cancer.2013
Author(s)
Ikeda Y, Oda K, Hiraike-Wada O, Koso T, Miyasaka A, Kashiyama T, Tanikawa M, Sone K, Nagasaka K, Maeda D, Kawana K, Nakagawa S, Fukayama M, Tetsu O, Fujii T, Yano T, Kozuma S.
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Journal Title
Oncol Rep.
Volume: 30(2)
Pages: 584-588
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Increased tissue levels of omega-3 polyunsaturated fatty acids prevents pathological preterm birth.2013
Author(s)
Yamashita A, Kawana K, Tomio K, Taguchi A, Isobe Y, Iwamoto R, Masuda K, Furuya H, Nagamatsu T, Nagasaka K, Arimoto T, Oda K, Wada-Hiraike O, Yamashita T, Taketani Y, Kang JX, Kozuma S, Arai H, Arita M, Osuga Y, Fujii T.
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Journal Title
Sci Rep.
Volume: 1
Pages: 3113
DOI
Peer Reviewed
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