2013 Fiscal Year Research-status Report
卵巣明細胞腺癌におけるDNAチェックポイント機構制御の解明と新規治療戦略の構築
Project/Area Number |
24592525
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
重富 洋志 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20433336)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 浩 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40178330)
吉田 昭三 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (40347555)
川口 龍二 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (50382289)
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Keywords | 卵巣明細胞腺癌 / 癌化 / チェックポイント / 細胞周期 / claspin / HNF-1beta |
Research Abstract |
卵巣明細胞腺癌の抗癌剤耐性は、その予後が悪い要因となっている。これまで明細胞腺癌では細胞周期異常をきたしていると報告されていた。我々の研究では明細胞腺癌に特異的に過剰発現する転写因子HNF-1betaがDNA損傷チェックポイント機構を制御していることを明らかにした。それぞれのチェックポイントに特異的に作用する抗癌剤を上記細胞株に添加したところG2期チェックポイント機構に異常をきたしていた。HNF-1betaがchk1タンパクのリン酸化を持続させ、異常な細胞周期の停止をもたらし抗癌剤耐性をきたす機序が考えられた。持続的なチェックポイント機構の活性化はアポトーシスへの誘導が阻害されるだけでなく、遺伝子不安定性につながる。これが子宮内膜症からの癌化機序の一つの可能性がある。しかし、転写因子がタンパク質のリン酸化を直接制御する機構についての報告はない。我々は、現時点では、HNF-1betaがchk1の周辺タンパクの発現を制御しているわけではなく、chk1タンパクの分解系に影響を及ぼしているのではないかと考えている。タンパクの分解にはユビキチン化によるプロテアソーム系がある。その中でもclaspinはchk1タンパクのリン酸化に関与するタンパクであり、現在、HNF-1betaの有無によるその挙動について検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
chk1タンパクのリン酸化持続の機序について調べている。claspinはchk1タンパクのリン酸化に関与するタンパクであり、HNF-1betaの有無によるその挙動の変化ついて検討している。claspinはwestern上でHNF-1betaの有無により発現の差を認めていた。さらに、chk1タンパクのリン酸化をきたすブレオマイシン添加によりclaspinの発現は、HNF-1beta陽性細胞で明らかに持続していた。つまり、HNF-1betaはclaspinの発現を制御することにより、chk1の持続的なリン酸化をもたらしている可能性が示唆された。そこで、次にclaspinを一過性にノックダウンすることによりchk1のリン酸化持続がどのように変化するかを検討した。HNF-1betaがclaspinの発現を制御してchk1リン酸化の持続をきたしている場合は、claspinをノックダウンすれば、HNF-1betaの有無にかかわらず、chk1リン酸化は解除され、HNF-1beta陰性細胞と同じwestern像が確認されるはずである。現在、効率の高いclaspinの一過性ノックダウンのプロトコール確立に難渋しているが、上記を示唆する現象をwesternにて観察できている。
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Strategy for Future Research Activity |
claspinのノックダウン効率の高いプロトコールを確立させる。siRNAの選定だけでなく、エレクトロポレーションも含めたトランスフェクション方法についても検討している。そしてclaspinのノックダウンによりHNF-1beta陽性細胞においても、chk1リン酸化が解除されることをwesternにて証明する。また明細胞腺癌でありながらHNF-1betaを発現していない細胞株ES2にHNF-1betaを導入し強発現するstable株を作成し、逆の現象が確認できるか検討する予定である。FACSや蛍光顕微鏡を用いてHNF-1beta、chk1、claspinの関連をさらに精査していく。claspinはユビキチン化に関与するタンパクである。近年、癌細胞におけるユビキチンを介したDNA修復メカニズムの異常を検出し、治療標的とする研究も報告されている。claspinの機序を解明することにより治療への発展できる可能性について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
claspinのノックダウン実験においてはsiRNAとwestern試薬の購入のみで研究が施行できたので次年度使用額が生じた。 現在、ノックダウン効率の向上に難渋している。siRNAの選定だけでなく、エレクトロポレーションも含めたトランスフェクション方法についても検討している。その際の試薬の購入を行う予定である。
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