2012 Fiscal Year Research-status Report
好酸球性中耳炎モデルを用いた好酸球性中耳炎の病態解明と治療法の開発
Project/Area Number |
24592537
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
松原 篤 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10260407)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 亮 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (20451479)
南場 淳司 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (50361027)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 好酸球性中耳炎 |
Research Abstract |
難治性の中耳炎の一つである好酸球性中耳炎では高率に難聴を呈することが知られているが、その内耳病態についてはほとんど明らかにされてはいない。そこで、本研究では研究代表者らが新たに作成した好酸球性中耳炎モデルを使用して(Nisizawa H, Matsubara A, et al. ACTA Otolaryngol, 132: 838-844, 2012)蝸牛障害について検討を行った。 モデルの作成には、Hartley系モルモットを卵白アルブミン(以下OVA)と水酸化アルミニウムにより全身感作させた後、経鼓膜的にOVAを1、2、4週間に渡り中耳に連日注入し、対象側として左側に生理食塩水を経鼓膜的に同時に注入した。最終鼓室注入日に両側頭骨を摘出しホルマリンにて浸漬固定した後にパラフィン包埋を行い、側頭骨の切片を作成しHE染色を行い蝸牛の所見を観察した。 その結果、生理食塩水を注入した対象側では、明らかな炎症細胞の浸潤は認められず、コルチ器の形態もよく保たれていた。一方、OVA注入側では投与期間が長くなるに従って内耳への好酸球をはじめとする炎症細胞の浸潤が増加していた。1週間投与モデルでは、鼓室階にごく少数の好酸球浸潤が認められた。OVA 2週間投与モデルでは、鼓室階と前庭階に少数の好酸球と赤血球が認められた。OVA 4週間投与モデルでは、鼓室階と前庭階に多数の好酸球と形質細胞および多数の赤血球が認められた。また、血管条や基底板、蝸牛軸の血管の拡張も認められ、一部で血管壁の断裂と思われる所見や基底板の断裂と思われる所見も観察された。コルチ器の障害も強く認められ、内毛細胞、外有毛細胞、コルチトンネルの形態が消失していた。以上より、OVAを用いて全身感作を行った後に局所刺激を継続することにより、内耳にも好酸球性の炎症が惹起されコルチ器の障害を来たして難聴が進行することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者らは、我々の施設で新たに作成した好酸球性中耳炎モデルを用いて、 好酸球性中耳炎の病態解明と適切な治療法確立を目指すべく、本研究を企画したものである。 好酸球性中耳炎の病態と強くかかわると考えられるperiostinは好酸球性中耳炎モデルでは、局所刺激の2週間の時点で発現することが明らかとなり、好酸球性中耳炎の病態解明にはこのモデル使用するのが妥当であることが推測された。これらのpriostinに関する研究結果および好酸球性中耳炎モデル作成に関する結果については英文誌にて公表した。(Nisizawa H, Matsubara A, et al. ACTA Otolaryngol, 132: 838-844, 2012)研究目的の一つを達成したものと考えられる。また、好酸球性中耳炎の重要な病態の一つである難聴については、これまでほとんど明らかにされていないのが現状であった。平成24年度に行った好酸球性中耳炎モデル研究から、内耳にも好酸球性炎症が惹起され難聴の原因となることが推測された。この結果は全く新しい発見であり本研究開始前までは全く予想できなかった結果である。本来の研究目的とは若干異なる部分ではあるもの、臨床的にも極めて価値の高い研究結果であると思われる。 治療法に関しても、難聴の進行が内耳の好酸球性炎症に関わるものであれば、ステロイドを初めとした好酸球性を抑制する薬剤の使用が理にかなっていることが証明されたと思われる。平成24年度の研究目的は達成されなかった部分もあるもの、新たな進展も見られたことから、総合としてはおおむね達成されたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
好酸球性中耳炎モデルの中耳粘膜におけるperiostinとpendrinの局在を中心とした検討や細胞表面マーカーを用いた免疫組織学的研究も続行する。また、好酸球性中耳炎の最大の問題である内耳病変の解明は極めて重要な事である。モデルを用いることで、この難聴に原因を解明することができる可能性が示唆されたのは、本研究の大きな成果である。 従って、中耳における好酸球性炎症の機序の解明と内耳病変の詳細な解明を併せて進める予定である。 具体的には、1)好酸球性中耳炎モデルの新たな展開。我々が考案した方法はモデルの作成に困難を伴うために、簡便にモデルを作成する方法を検討する。2)内耳における好酸球性炎症機序の解明を行う。eotaxinなどの好酸球遊走に関わる種々の物質の同定も行う予定である。3)難聴の機序の解明。これまでの結果からは血管条における血管障害やコルチ器の障害が難聴の原因として推測されるが、時間経過によりこれらがどのように障害されるかは明らかではない。そこで血管系についてはCys-LT受容体などの局在を検討することにより、好酸球性炎症が血管条障害に関わるかどうかを検討する。また。コルチ器障害については、内耳の好酸球浸潤の時間経過など併せて検討しながら、難聴の病態を解明することで好酸球性中耳炎の難聴の適切な治療についても検討を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
免疫染色用試薬である一次抗体の購入費が予定よりも下回ったために次年度の研究費が発生した。 25年度は調査する予定の物質が増えるために、この研究費は新たな一次抗体の購入費として使用する。
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Research Products
(4 results)