2012 Fiscal Year Research-status Report
蝸牛発生、機能維持、蝸牛障害におけるセラミド、スフィンゴ脂質の影響の検討
Project/Area Number |
24592541
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田渕 経司 筑波大学, 医学医療系, 講師 (80361335)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 晃 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10156474)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 蝸牛 / 有毛細胞 / 耳毒性 |
Research Abstract |
スフィンゴ脂質は主に動物細胞膜を構成する脂質であり、以前は細胞膜の構成物質としてとらえられていたが、細胞の増殖、機能維持、細胞死に関与することが判明してきた。セラミド、sphingosine-1-phosphate (S1P)等の生理活性スフィンゴ脂質は、癌の発生や各種臓器障害、免疫異常等の疾患において重要な働きを示し、これらの疾患において、創薬ターゲットとして注目されている。内耳におけるスフィンゴ脂質の働きは不明な点が多いが、24年度では特にS1Pのゲンタマイシンにより惹起される内耳障害に対する役割を明らかとするために研究を施行した。 S1Pの蝸牛保護作用について、その作用点となるS1P受容体の面から検討した。外因性のS1Pはゲンタマイシンによる蝸牛有毛細胞死を軽減した。S1P受容体はS1PR1-5の5種類のサブタイプが存在することが知られているが、ラット蝸牛のタンパク電気泳動による実験から、蝸牛においては、S1PR1,2,3の各サブタイプの発現が蝸牛コルチ器、蝸牛神経を含む蝸牛軸のいずれにも認められることがわかった。本結果に基づき、蝸牛において発現の認められるサブタイプであるS1PR1,2,3の各拮抗薬のゲンタマイシンによる耳毒性に対する効果を検討した。S1PR2拮抗薬はゲンタマイシン耳毒性を増強したが、S1PR1および3拮抗薬はゲンタマイシン負荷による蝸牛外有毛細胞の消失率に影響を与えなかった。S1PR2拮抗薬投与により、ゲンタマイシン投与による蝸牛でのカスパーゼ3、9の発現が上昇することも判明した。以上から、蝸牛ではS1PR1,2,3の各受容体の発現が認められ、中でも、S1PR2がS1Pの有毛細胞保護効果に関与することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究開始にあたり予定した研究はすべて終了した。本年度は生理活性スフィンゴ脂質の中でもS1Pに着目したが、その受容体の発現、各サブタイプのゲンタマイシン耳毒性に対する効果についても確認しえた。しかしながら、本検討により、蝸牛外側壁におけるSIPRの発現の有無、また、S1Pが蝸牛でin vivoでどのような作用を呈するか等、新たな課題が発生した。今後の研究期間において、このような疑問についても、解明を試みていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
S1Pがゲンタマイシン過剰投与による蝸牛障害において保護的に作用するのに対し、セラミドは障害進行性に働くことを報告した(Nishimura B, Tabuchi K, et al. Neurosci Lett 2010: 485: 1-5)。セラミドの合成経路にはde novo合成経路、スフィンゴミエリンからの変換経路等が知られているが、内耳障害時のセラミド合成につ いてはその経路がはっきりとしていない。まずセラミドの内耳における合成経路についてそれぞれの経路を検討する。スフィンゴミエリンからセラミドへの変換酵素であるスフィンゴミエリナーゼについては酸性、中性、ア ルカリ性の3種類が存在するが、特に中性スフィンゴミエリナーゼを中心に内耳における発現、作用を検討する。動物はp0-p5のマウス、ラットを使用する。蝸牛を摘出し、有毛細胞をインキュベータで器官培養する。ゲンタマイシン、シスプラチンなどの耳毒性物質を投与し、各種薬剤の効果を確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度においても新たに大型の研究機械を新たに導入する必要はないと考えている。実験に使用する動物、薬物等の消耗品に対する支出が主なものとなると考えている。
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Research Products
(3 results)