2015 Fiscal Year Research-status Report
蝸牛発生、機能維持、蝸牛障害におけるセラミド、スフィンゴ脂質の影響の検討
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24592541
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田渕 経司 筑波大学, 医学医療系, 講師 (80361335)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 晃 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10156474)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 蝸牛 / 有毛細胞 / シスプラチン |
Outline of Annual Research Achievements |
スフィンゴ脂質(sphingolipids)は主に動物細胞において、その細胞膜を構成する脂質であり、以前から細胞膜構成物質としての重要性が認識されていた。スフィンゴシン、セラミド、スフィンゴシン-1-リン酸、セラミド-1-リン酸などのスフィンゴ脂質は、細胞膜構成脂質であるとともに、細胞内で生理活性メディエータとして働くことが近年注目されている。 ラット蝸牛有毛細胞のシスプラチン耳毒性に対するセラミド、スフィンゴシン、スフィンゴシン-1-リン酸の効果をそれぞれ検討した。コルチ器をラット蝸牛より摘出し、CO2インキュベータ内で器官培養を行った。培養液にシスプラチンを負荷し、シスプラチンによる蝸牛有毛細胞障害の程度を組織学的に観察した。セラミドをシスプラチンとともに培養液に添加すると、シスプラチン単独の蝸牛有毛細胞障害に比し、その障害性が増強した。また、スフィンゴシンを同様にシスプラチンとともに投与すると、やはりその有毛細胞障害は増強される結果を得た。セラミド、シスプラチンの添加での効果に対し、スフィンゴシン-1-リン酸をシスプラチンとともに投与すると、蝸牛有毛細胞のシスプラチン障害が、有意に軽減された。また、スフィンゴシンをスフィンゴシン-1-リン酸に代謝するスフィンゴシンキナーゼの阻害薬投与により、シスプラチン耳毒性は増強した。これらの結果はセラミド、スフィンゴシンはシスプラチン耳毒性を増強し、スフィンゴシン-1-リン酸はこの毒性を軽減すると考えられた。スフィンゴシン投与における蝸牛有毛細胞死においてはカスパーゼ3の蝸牛有毛細胞における発現が有意に増強しており、スフィンゴシンの投与がシスプラチンにより惹起される蝸牛有毛細胞のアポトーシス死を増強するのものと考えられた。蝸牛におけるスフィンゴシンキナーゼの発現はスフィンゴシンキナーゼ1、2の両サブタイプの発現が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度研究開始時に予定した研究はすべて行えている。結果もスフィンゴ脂質の蝸牛有毛細胞の生死の決定に対する重要性を裏付けており、本脂質群の蝸牛での重要性が本研究により確認された。研究を進める中で、セラミド―1-リン酸の蝸牛への働きはどうかという疑問もわいてきており、今後の検討課題とし行きたい。
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Strategy for Future Research Activity |
スフィンゴシン、セラミド、スフィンゴシン-1-リン酸の蝸牛での重要性が本研究により確認された。また、スフィンゴ脂質間でその作用は全く異なっており、これらの脂質の代謝の制御が蝸牛において非常に重要であることが分かった。今までに検討されていないセラミド―1-リン酸の蝸牛への働きについてまず今後の検討課題として行きたい。また、これらの代謝を制御する酵素群の役割についても引き続き検討を進めたい。
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Research Products
(2 results)