2013 Fiscal Year Research-status Report
エピゲノム制御機構の解析に基づく難治性慢性副鼻腔炎の病態解明
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24592582
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
吉川 衛 東邦大学, 医学部, 准教授 (50277092)
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Keywords | 慢性副鼻腔炎 / エピゲノム制御機構 / 線維芽細胞 / インターフェロン誘導性遺伝子 |
Research Abstract |
治癒寛解が困難な慢性副鼻腔炎患者の臨床的な背景を検討したところ,アスピリン喘息を含めた非アトピー性喘息を合併している症例が多く,末梢血中の好酸球増多や鼻粘膜に著しい好酸球浸潤があることがわかってきた.そこで,慢性副鼻腔炎患者を,喘息を合併しない群(CRS群),喘息を合併する群(ATA群),アスピリン喘息を合併する群(AIA群)に分類し,それらから手術時に採取した鼻組織より線維芽細胞を培養し,Th1細胞などを遊走するケモカインであるIP-10/CXCL10の,ウイルス由来二重鎖RNA (poly I:C)刺激による発現増強について検討を行った.また,鼻茸組織中の免疫染色を行いIP-10/CXCL10が病態に及ぼす影響についても検討を行った. その結果,ATA群とAIA群の線維芽細胞では,poly I:C刺激によるIP-10/CXCL10の発現が有意に増強していた.また,ATA群とAIA群の鼻茸組織では,Th1細胞の浸潤がTh2細胞とともに増強していた.これらの結果から,喘息を合併した慢性副鼻腔炎患者においては,副鼻腔粘膜局所のIP-10/CXCL10の発現増強を介したTh1細胞浸潤が,難治化の一つの要因となっている可能性が示唆された. 今後,これまで本研究課題で行ってきた難治性の慢性副鼻腔炎の病態に関連するトランスクリプトーム解析などの実績をふまえて,その研究成果をさらにエピゲノム情報と比較・統合し創薬標的を探索することを目的としている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度より所属研究機関が東京慈恵会医科大学から東邦大学へ変更となったため、倫理委員会への再申請や研究体制の再構築に時間を要した。 その結果、平成24年度の遅れが25年度にも影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年、25年度に引き続き副鼻腔粘膜を採取し,さらに対照として健常者の副鼻腔粘膜(眼窩吹き抜け骨折整復術や下垂体手術時などに摘出)も採取する.それと同時に,①自記式アンケート調査による自覚症状の評価,②副鼻腔CT所見の評価,③鼻腔ポリープのスコア化,④末梢血好酸球数などの血液検査所見,⑤採取した粘膜における好酸球浸潤の評価を行い臨床データベースの構築を行い,術後経過の観察を行い予後の評価も行う. これらの手術時に採取した副鼻腔粘膜より線維芽細胞を培養し,IFN誘導性遺伝子のプロモーター領域を中心にヒストンの化学修飾の変化の確認を行う.その結果と前述した臨床情報とを統計学的に解析するため,予後不良な難治症例由来の線維芽細胞でIFN誘導性遺伝子のシグナル伝達経路で発現を増強させている因子の同定を,臨床情報の収集と同時に今後も行っていく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の所属研究機関変更の影響による研究計画の遅れのため,平成25年度も次年度に使用する研究費が生じてしまった. エピゲノム解析に使用する試薬などの物品購入や,研究成果の発表のための学会参加の旅費および論文投稿料に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)