2012 Fiscal Year Research-status Report
頭頸部癌による腫瘍免疫抑制機構の解明と新規治療法の開発
Project/Area Number |
24592589
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
櫻井 大樹 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10375636)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 頭頸部癌 / 免疫抑制 / 骨髄性抑制細胞 |
Research Abstract |
頭頚部癌の治療は、これまで手術・放射線・化学療法の3者を組み合わせて行われているが、進行症例では再発・転移をきたすことが多く予後は不良である。さらなる治療成績の向上には新たな治療の開発が急務である。近年、癌細胞は骨髄性抑制細胞を誘導し免疫システムを抑制することで、免疫系から逃れて増殖しやすい環境を構築していることが明らかになってきている。このことは治療への抵抗性や、免疫治療が有効に効果を発揮できない原因として重要なものと考えられている。本研究は、頭頸部癌患者で増加する骨髄性抑制細胞による腫瘍免疫の抑制機構の解明と関与するmicroRNA(miRNA)を同定し、腫瘍免疫を賦活させる新規治療薬の開発に結び付けることを目的としている。 今回、千葉大学医学部附属病院、耳鼻咽喉・頭頚部外科にて治療を行った頭頸部腫瘍患者に対し研究の説明と同意取得を行い、治療前の採血より、白血球数・末梢血リンパ球の比率を測定し、また末梢血単核球分画を分離採取し、末梢血中の骨髄性抑制細胞の増加率を、蛍光標識抗体を用いフローサイトメトリーにて解析した。その結果、頭頸部扁平上皮癌、唾液腺導管癌で有意な平均値の増加を認めたが、甲状腺乳頭癌、良性腫瘍の多形線種、および健常者においては増加を認めなかった。骨髄性抑制細胞の増加する癌種において、さらに増加群と非増加群の二群に分け、手術検体より癌部を切り出しRNAを抽出した。骨髄性抑制細胞の増加群と非増加群においてmiRNAの網羅的な発現解析を行い、miRNAの発現の群間比較から差異の大きい候補miRNAを複数選択した。さらに頭頸部腫瘍の患者の血清よりRNAを抽出し、PCR法を用いて選択した5つのmiRNAの発現解析を行った。これらの解析結果より今後は、選択したmiRNAより、その標的遺伝子の探索から骨髄性抑制細胞の誘導・増殖に関与する分子ネットワークを解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究において以下を達成している。千葉大学医学部附属病院、耳鼻咽喉・頭頚部外科にて治療を行った頭頸部腫瘍患者に対し、治療前に採血を施行し、白血球数・末梢血リンパ球の比率を測定し、また末梢血単核球分画を分離採取し、末梢血中の骨髄性抑制細胞の増加率を、蛍光標識抗体を用いフローサイトメトリーにて解析した。その結果、頭頸部扁平上皮癌、唾液腺導管癌で有意な平均値の増加を認めたが、甲状腺乳頭癌、良性腫瘍の多形線種、および健常者においては増加を認めなかった。骨髄抑制細胞の増加した頭頸部癌症例において、末梢血リンパ球の低下を認め、さらにリンパ球の中でもT細胞の低下と有意に相関することを確認した。また骨髄性抑制細胞の増加している癌患者の末梢血単核球分画より磁気ビーズを用いて、骨髄性抑制細胞を除去したものと除去しないものとにおいて、抗CD3+抗CD28抗体を用いた刺激によるT細胞の増殖活性を比較検討し、骨髄性抑制細胞を除去したものにおいて活性化が増強することを確認した。骨髄性抑制細胞の増加する扁平上皮癌と、唾液腺導管癌において、さらに増加群と非増加群の二群に分け、手術により切除された検体より癌部を切り出しRNAを抽出した。骨髄性抑制細胞の増加群の中で多い方から4検体、と非増加群の中で少ない方から4検体においてmiRNAの網羅的な発現解析を行い、miRNAの発現の群間比較から差異の大きい候補miRNAを複数選択した。さらに頭頸部腫瘍の患者の血清中において、上記選択したmiRNAの発現を解析するため、血清中のRNAを抽出し、PCR法を用いて選択した5つのmiRNAの発現解析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として以下を行う。頭頸部癌で増加する骨髄抑制細胞自体の機能を分子レベルでの解析を進めるために、癌患者の末梢血リンパ球より磁気ビーズを用い骨髄性抑制細胞を分離するが、軽度の増加例では骨髄抑制細胞の分離が容易でないため、高度増加例の該当時において分離を試みる。分離した骨髄性抑制細胞に対し網羅的な遺伝子発現解析を行う。同時に健常者の末梢血よりリンパ球を回収し、T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞を分離する。残ったリンパ球を癌患者の骨髄性抑制細胞に対するコントロール細胞として網羅的な遺伝子発現解析を行う。二群間で差異の大きい候補RNAを選び、ターゲット遺伝子、そして発現するタンパクの探索を行う。さらにその中からリンパ球抑制に関連する分子ネットワークの解明を進める。平成24年度に施行した研究より得られた候補miRNAと、上記の方法で選択したRNAについて、制御する遺伝子の探索を行い、頭頸部癌細胞による骨髄性抑制細胞の誘導と骨髄性抑制細胞による免疫抑制の分子メカニズムについて解明を進めていく。上記研究を遂行するために研究費を使用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
手術を先行治療とする頭頸部扁平上皮癌患者において、術前に採血を施行し、末梢血中の骨髄性抑制細胞の増加率を、蛍光標識抗体を用いフローサイトメトリーにて解析を行ったが、骨髄性抑制細胞の非増加群および軽度増加群を多く認めたため、十分に増加している症例より行う予定であった磁気ビーズを用いた骨髄性抑制細胞を分離する実験へ年度内に進む症例が予定より少なくなった。このため当初予定より使用する試薬が少なくなったため未使用額が生じた。 今後の研究方策として上述したように、頭頸部癌で増加する骨髄抑制細胞自体の機能を解析するために、癌患者の末梢血リンパ球より磁気ビーズを用い骨髄性抑制細胞を分離し、分離した骨髄性抑制細胞に対し網羅的な遺伝子発現解析を行う。同時に健常者の末梢血よりリンパ球を回収し、T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞を分離する。残ったリンパ球を癌患者の骨髄性抑制細胞に対するコントロール細胞として網羅的な遺伝子発現解析を行う。また手術により切除された癌組織を酵素的に分解後、磁気ビーズを用い骨髄性抑制細胞を分離し、末梢血および癌組織より回収した骨髄性抑制細胞と、末梢血より分離したリンパを共培養し、細胞増殖・サイトカイン産生など活性化応答および細胞死をフローサイトメトリーおよびELISAにて解析し、骨髄性抑制細胞の誘導および腫瘍免疫抑制の分子メカニズムの解明を進める。 上記研究を遂行するために研究費を使用するが、骨髄性抑制細胞、各種リンパ球の同定と分離のための抗体などフローサイトメトリー試薬、磁気ビーズ関連試薬。網羅的な遺伝子解析のためのRNA関連試薬、遺伝子発現解析アレイ試薬および費用。さらに癌組織を分解するための酵素など、サイトカイン産生測定のための抗体などELISA関連試薬などの購入のために研究費を使用する。その他、情報収集や研究成果発表のための学会参加費用を研究費より使用する。
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Research Products
(3 results)