2013 Fiscal Year Research-status Report
頭頸部癌による腫瘍免疫抑制機構の解明と新規治療法の開発
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24592589
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
櫻井 大樹 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10375636)
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Keywords | 頭頸部癌 / 免疫抑制 / 骨髄性抑制細胞 |
Research Abstract |
頭頚部癌の治療は、これまで手術・放射線・化学療法の3者を組み合わせて行われているが、進行症例では再発・転移をきたすことが多く予後は不良である。さらなる治療成績の向上には新たな治療の開発が急務である。近年、癌細胞は骨髄性抑制細胞を誘導し免疫システムを抑制することで、免疫系から逃れて増殖しやすい環境を構築していることが明らかになってきている。このことは治療への抵抗性や、免疫治療が有効に効果を発揮できない原因として重要なものと考えられている。本研究は、頭頸部癌患者における骨髄性抑制細胞の増加と免疫抑制への関与、また関連するmicroRNA(miRNA)の同定とその機能解析を行い、腫瘍免疫を賦活させる新規治療薬の開発に結び付けることを目指している。 千葉大学医学部附属病院、耳鼻咽喉・頭頚部外科にて治療を行った頭頸部腫瘍患者に対し研究の説明と同意取得を行い、治療前の採血より、末梢血中の骨髄性抑制細胞(MDSC)のプロファイルおよびその変動について蛍光標識抗体を用いフローサイトメトリーにて解析した。その結果、健常者や他の腫瘍と比較し、顆粒球系MDSCおよび単球系MDSCともに頭頸部扁平上皮癌でのみ有意な増加を認めた。G-MDSCのみが末梢血T細胞と有意な逆相関を認め、T細胞の増殖を抑制していた。これに対し抗腫瘍免疫に関与するNKT細胞に対して増殖抑制は明らかでなかった。またG-MDSCの増加群と非増加群の二群に分け、手術検体よりRNAを抽出し、miRNAの網羅的な発現解析を行い有意差の大きい候補miRNAを複数選択した。頭頸部扁平上皮癌の患者血清よりRNAを抽出し、PCR法を用いて選択した候補miRNAの発現解析を行い血清での発現を解析した。さらに扁平上皮癌の手術検体からこれらのmiRNAの発現について検証を行っている。今後、選択したmiRNAより標的遺伝子の探索を行いMDSCの増加と癌局所における免疫抑制とに関与する分子ネットワークの解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究において、千葉大学医学部附属病院、耳鼻咽喉・頭頚部外科にて治療を行った頭頸部腫瘍患者に対し、引き続き症例を増やし治療前後に採血を施行し、各リンパ球分画、顆粒球系G-MDSC、単球系M-MDSCの比率を測定し、蛍光標識抗体を用いフローサイトメトリーにて解析した。頭頸部扁平上皮癌のみでG-MDSCおよびM-MDSCの有意な増加を認めた。G-MDSCのみが末梢血T細胞と有意に逆相関することを確認した。一方抗腫瘍免疫に関与し免疫療法としても期待されるNKT細胞については、末梢血における減少やMDSCとの相関を認めなかった。そこでMDSCによるT細胞とNKT細胞の影響の違いを調べる目的で、G-MDSCの増加する頭頸部扁平上皮癌患者の末梢血単核球分画より磁気ビーズを用いて、CD15陽性のG-MDSCを除去したものと除去しないものとにおいて、NKT細胞の特異的リガンドであるαガラクトシルセラミドを用いた刺激によるNKT細胞の増殖活性を比較検討した。その結果、G-MDSCを除去したものと除去しないものでNKT細胞の増殖には明らかな違いがないことを確認した。その機序としてG-MDSCの産生する抑制因子として報告のあるH2O2に対し感受性の違いがあるかについて検討した。活性化T細胞およびNKT細胞の培養液にH2O2を添加するとT細胞は濃度依存的に細胞死が増加するのに対しNKT細胞の変化は小さく、有意な違いが認められた。このことからNKT細胞はT細胞に比べH2O2対する耐性が高く、G-MDSCに対する感受性の違いを説明する機序として明らかにした。 また、頭頸部扁平上皮癌において、G-MDSCの増加群と非増加群の二群に分け、手術により切除された検体において差異の大きい候補miRNAについて、頭頸部扁平上皮癌患者の血清中における発現を解析したが、血清中には有意な発現は認めなかった。そこで、手術症例の検体数を増やし候補miRNAの発現についてPCR法によって検証を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として以下を行う。頭頸部癌で増加するMDSC自体の機能を分子レベルでの解析を進めるために、手術症例の検体数を増やしmiRNAの発現についてvalidationを進める。validation後にMDSCの増加群で有意な変動のあるmiRNAの機能解析を行う。候補miRNAを扁平上皮癌細胞株に添加し、癌細胞への増殖、浸潤など機能的な変化の有無を調べる。また腫瘍免疫に関与するT細胞およびNKT細胞をCD3/CD28抗体およびαガラクトシルセラミドによりそれぞれ刺激し、その培養液中に候補miRNAを添加し、活性化時における増殖、サイトカイン産生などの機能への抑制などの影響、細胞死の増加など免疫抑制作用の有無について解析する。また扁平上皮癌細胞株おいての候補miRNAの変動を確認し、増加しているmiRNAに対してはsiRNAの手法によりその発現を抑制し、癌の増殖、浸潤能への陽性効果など、癌の性質に関わる機能を持つものか解析を行う。また候補miRNAのターゲット遺伝子の探索と、その発現するタンパクについても探索を進め、さらにその中からリンパ球抑制に関連する分子ネットワークの解明を進める。また末梢血リンパ球、白血球にmiRNAを添加し、MDSCの誘導への関与ついてもも解明を進めていく。上記研究を遂行するために研究費を使用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
手術を先行治療とする頭頸部扁平上皮癌患者において、術前に採血を施行し、末梢血中のリンパ球および各リンパ球分画割合、MDSCのsub-populationの増加率を、フローサイトメトリーにて解析を行ったが、治療方針の変化などから当初の想定より手術症例数が少なく症例の偏りに変化があった。またMDSCの顕著な増加群の少なさや非増加群および軽度増加群が多く、また磁気ビーズを用いたMDSCの分離回収率の低さなどの問題もあった。また実験結果からNKT細胞へのMDSCの影響を調べる細胞増殖実験への比率を増加し、新たな機序の解明実験なども進めたが、当初想定していた遺伝子解析やPCR解析の実験計画、進行予定から変化があり未使用額が生じている。 今後の研究方策としては、手術症例について引き続きmiRNA発現の検証実験を行い、MDSCの増加群で有意な変動のあるmiRNAの機能解析を進める。候補miRNAを扁平上皮癌細胞株に添加し、癌細胞への増殖、浸潤など機能的な変化の検討を進めていく。また腫瘍免疫に関与するT細胞およびNKT細胞を刺激し、その培養液中に候補miRNAを添加し、各リンパ球の活性化時における増殖、サイトカイン産生など機能抑制などの影響について解析する。上記研究を遂行するために、MDSC、各種リンパ球の同定と分離のための抗体などフローサイトメトリー試薬、磁気ビーズ関連試薬、遺伝子解析に必要となるRNA関連試薬、遺伝子発現解析試薬、サイトカイン産生測定のための抗体などELISA関連試薬など購入のために研究費を使用する。その他、情報収集や研究成果発表のための学会参加費用、論文作成に関わる費用を研究費より使用する。
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