2012 Fiscal Year Research-status Report

癌抑制低分子核酸を基点とした癌転移能に関する新規分子ネットワークの解明

Research Project

Project/Area Number	24592590
Research Category	Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
Research Institution	Chiba University
Principal Investigator	関直彦千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345013)
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha)	花澤豊行千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90272327)
Project Period (FY)	2012-04-01 – 2015-03-31
Keywords	マイクロRNA / 癌抑制遺伝子 / ゲノム / 扁平上皮癌
Research Abstract	近年、タンパクコード遺伝子の発現調節に関わるRNA分子として、タンパク質をコードしない機能性RNAの一つであるmicroRNA（miRNA）が注目されている。miRNAは、配列特異的にタンパクコード遺伝子を標的として、その分解や翻訳を阻害する事で遺伝子の発現を制御している。miRNAの発現異常は、癌の発生、進展、転移において重要な役割を担っている事が報告されている。今回の解析では、これまでに我々の作成したmiRNA発現プロファイルの中で、発現抑制を認めるmiRNAに注目し、癌の浸潤・遊走に関与するmiRNAの探索を目的とした。癌細胞株に成熟型miRNAを核酸導入し、癌細胞の浸潤・遊走を抑制するmiRNAを探索した。解析の結果、新たにmiR-218がその有力候補となった。 miR-218の癌抑制機能は、頭頸部扁平上皮癌、尿路上皮癌、腎細胞癌由来の細胞株で認められ、更に、これら癌種の臨床検体において発現抑制されていた事から、miR-218は、ヒト癌において浸潤・遊走に関与する癌抑制型miRNAである事が強く示唆された。miRNAの大きな特徴として、一つのmiRNAが複数のタンパクコード遺伝子発現を制御している事である。そこで、癌抑制型miRNA-218が制御する遺伝子群の探索を行った。その結果、細胞の浸潤・遊走に関わるFocal adhesion pathwayに関与する複数の遺伝子が抽出された。この中から、Laminin-332の構成タンパクの一つであるLAMB3を見出した。Laminin-332は、細胞の基底膜を構成する主要なタンパク質の一種であり、細胞の接着、遊走、増殖に関与する報告がある。miR-218の発現抑制によるLAMB3の発現異常は、ヒト癌の転移に大きく関与する事が示された。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason これまでに報告してきた癌miRNA発現プロファイルから、癌細胞において発現抑制されているmiRNAに着目し、癌の浸潤・遊走に関わる癌抑制型miRNAとしてmiR-218を見出した。更に、miR-218が制御する分子ネットワークを抽出し、この中から、標的遺伝子、LAMB3を探索した。この他にも、miR-218が制御する候補遺伝子を見出している事から、miRNAが制御する癌転移に関する分子ネットワーク研究の発展が期待できる。
Strategy for Future Research Activity	ヒト癌の転移抑制型miRNAとして、miR-218を見出した。このmiRNAを基点とした、癌抑制効果の新規分子ネットワークを解明する事は、癌の転移メカニズムの解明に繋がる事が期待される。今後の解析として、miR-218の癌転移抑制効果を動物モデルで検証する。更に、miR-218が制御する分子ネットワークについて、in vitro、in vivoの両面で解析を継続し、癌転移の機序について検討を行う。本解析の成功例をモデルとして、癌miRNA発現プロファイルから、新規癌抑制miRNAを探索し、癌転移制御に関する分子ネットワークの抽出を継続する。
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding	研究費はmiR-218を導入した細胞株における遺伝子発現解析を行う為に用いる。またin vitroおよびin vitroにおけるmiR-218導入実験のための核酸合成費用および動物飼育費用に用いる。