2013 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病網膜症における可溶型VAP-1の産生メカニズムとその病態関与
Project/Area Number |
24592615
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野田 航介 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90296666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神田 敦宏 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (80342707)
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Keywords | 糖尿病網膜症 / 白血球接着分子 / 酸化ストレス / VAP-1 / MMPs |
Research Abstract |
糖尿病網膜症の病態基盤には慢性炎症と酸化ストレスが関与している。vascular adhesion protein (VAP)-1は白血球接着分子および酵素としての機能を有し、炎症と酸化ストレスの双方に関連する興味深い分子である。本研究の目的は、糖尿病網膜症における可溶型VAP-1の産生メカニズムおよびその病態機序への関与を明らかにすることにある。昨年度は、ラット網膜血管内皮細胞(TR-iBRB2)に糖負荷をおこなうと、既存の膜型VAP-1が切断(shedding)されて可溶型VAP-1として放出されること、炎症性サイトカインTumor necrosis factor (TNF)-α,interleukin (IL)-1βで同細胞を刺激しても糖負荷と同様に可溶型VAP-1が培養上清中に増加することを明らかとした。今年度は、それらの下流で膜型VAP-1 sheddingに関与する分子について検討した。 TNF-αおよびIL-1βは、蛋白分解酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)の活性化をおこなう代表的なサイトカインである。糖負荷をTR-iBRB2におこなう際にMMPファミリーの阻害剤BB94を用いると、糖負荷による可溶型VAP-1の放出は低下することが明らかとなった。一方、他の白血球接着分子E-selectinやL-selectinの切断酵素であるADAMに対する阻害剤KB-R7785を用いても可溶型VAP-1の増加は抑制されなかった。また、MMP-2およびMMP-9の選択的阻害をおこなうと、BB94と同様の阻害効果が得られることが分かった。 以上の結果は、MMP-2およびMMP-9が膜型VAP-1のsheddingに関与していることを示していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画は「眼内における可溶型VAP-1産生メカニズムの探索」であったが、前述のごとく、今年度の検討でMMP-2およびMMP-9が膜型VAP-1を切断する酵素であり、炎症性サイトカインであるTNF-αおよびIL-1βの下流で可溶型VAP-1の産生メカニズムに関与していることが明らかとなった。以上のことから、概ね順調に研究計画は遂行されていると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に当たる次年度は、TNF-αおよびIL-1β以外のサイトカインによる可溶型VAP-1産生メカニズムの探索、ならびに可溶型VAP-1の糖尿病網膜症病態における役割について検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画当初はVAP-1 sheddingに関与する候補分子としてさまざまな蛋白分解酵素が想定されたため、網羅的解析の施行が必要となることを念頭に予算を組んでいたが、検討開始早期にその同定が可能となったため。 VAP-1はその酵素機能を介して糖尿病網膜症においても酸化ストレス亢進に関与している可能性がある。次年度は最終年度にあたるため、本項目に関する検討に使用する。また、低酸素刺激やVEGFによる刺激が可溶型VAP-1産生に関与するかの検討はまだ終了していないため、並行して同検討にも使用する予定である。
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Research Products
(3 results)