2015 Fiscal Year Annual Research Report
水晶体における血管新生抑制因子の探索と血管新生緑内障の新しい病態概念の確立
Project/Area Number |
24592620
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
高村 佳弘 福井大学, 医学部, 准教授 (00283193)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲谷 大 福井大学, 医学部, 教授 (40335245)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 糖尿病網膜症 / 血管新生 / クリスタリン / 水晶体 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病網膜症の患者の水晶体を除去すると、血管新生緑内障や硝子体出血など血管が関与する疾患の併発をしばしば経験する。そこで本研究では、硝子体中において、水晶体除去前後で増減する因子の有無を調べ、その因子と血管新生との関係を検討した。 無処理眼の硝子体から得られた多数のスポットのうち、4つが水晶体除去後の硝子体において完全に消失していた。質量分析の結果、3つがウサギαAクリスタリン、1つがウシ由来のタンパク質であることを示唆した。そこで我々はクリスタリンに着目した。αクリスタリンはファミリーを形成していることから、ホモログであるαBについても検討した。無処理眼の硝子体と水晶体除去後の硝子体でのαAおよびαBクリスタリンの発現をタンパク質および遺伝子レベルで検討したところ、いずれも水晶体除去後の硝子体において発現量が減少した。αBクリスタリンは細胞増殖抑制効果を示し、その効果はαAクリスタリンとの同時添加によってさらに強められた。しかし、αAクリスタリン単独では抑制効果を示さなかった。 αクリスタリンはいずれも、水晶体由来だけでなく硝子体中に存在する硝子体細胞が発現・分泌している可能性が示された。細胞増殖試験によってαBクリスタリンが増殖抑制効果を示す作用本体であるものの、αAクリスタリンとの相互作用により相乗的にVEGFによる新生血管の誘導を抑制しうることを示唆した。つまり、水晶体除去に起因する眼内環境の変化が硝子体細胞の恒常性を破綻させた結果、αクリスタリンの発現量が低下し、VEGF量とのインバランスが硝子体内への異常な血管形成を誘導すると考えた。
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