2012 Fiscal Year Research-status Report
筋萎縮性側索硬化症との発症起因の共通性に基づいた緑内障発症機構解析
Project/Area Number |
24592622
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
大坪 正史 浜松医科大学, メディカルフォトニクス研究センター, 助教 (10327653)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 緑内障 / 相互作用タンパク / 遺伝子 / シグナル伝達 / 神経科学 |
Research Abstract |
以下に本年度の成果を示す。 1.OPTNの蛋白品質管理の破綻/オートファジー惹起によるレスキュー: (1)緑内障変異のうち症状が重篤であるE50K変異体ではOPTNが一部凝集体(foci)として存在し、空胞形成は極めて顕著に亢進した。この際、fociの空胞周囲への局在が見られ、SLC4A2も共在した。特定の薬剤(仮称STR)処理によって、この空胞の形成は、顕著に抑制され、foci形成も減少した。HeLaS3細胞の他、神経由来細胞Neuro2Aなどにおいても、同傾向がみられた。(2)シグナル伝達関連蛋白について検討を加えた。OPTNの正常型及びE50K変異体での差異は認められなかったが、STRによる空胞形成の低下の際に、PERKリン酸化の低下、WFS1発現の上昇、LC3発現の上昇を認めた。(3)前項の薬剤STRの効果がAP惹起によるものか、すなわちオートファジーを惹起することが当該構造形成を抑制し得るか否かを検討したところ、ラパマイシンによるAP誘導により同様の結果が得られた。また、3-MA処理によるAP阻害により薬剤の効果は抑制された。 2.緑内障変異とALS変異の違いの検討: 緑内障原因変異H26D、E50K、M98K、H486RおよびALS原因変異Q314L、Q454E、E478G、K557T等を持つFLAGタグ付加OPTN発現プラスミドを作成した。これらをHAタグ付加SLC4A2と共に細胞に導入し、タグ抗体による免疫蛍光法で、顆粒および空胞を観察した。 (1)顆粒は、既報告があるE50K以外のH486Rなど緑内障変異でも、顕著に観察された。また、空胞形成についても、緑内障変異に顕著な亢進が見られた。(2)一方、ALS変異では、Q314Lなど一部の変異で顆粒形成が見られたが、一概に顆粒は形成されず、空胞についても、A481Vに微細なモノがみられるのみで、形成は観察されなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では、1)OPTNの蛋白品質管理機能の破綻が疾患要因であることの検証、2)緑内障家系の患者特異的に見出されたSLC4A2のアミノ酸置換体の意義の探求、を目的としている。 空胞形成を抑制する細胞内応答が、オートファジー惹起であることを明らかにすることで、「蛋白品質管理機能の破綻が疾患要因であること」の傍証と「対処方策」を見出した。しかし、SLC4A2のG26E変異体の部分断片化については、充分に検討できていない。一方、H25年度予定していた「緑内障変異とALS原因変異の差違」については、部分的に先行実施して、空胞および顆粒形成に違いがあることを明らかにしている。 その意味では、平成24年度目標としては若干の遅れがあるものの、研究計画全体を見た場合、概ね順調に進行していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今回観察したシグナル分子の変化および空胞形成抑制を、STR処理がオートファジー経路を惹起することより引き起こすを明らかにした。細胞内の蛋白のクリアランスを向上させることが、発症や進行の抑制効果が得られる可能性があることが推測される。 本研究の目的である異常タンパクの処理系の破綻が発症原因であることの傍証とのなる事象である。また、空胞様異常構造も神経細胞内凝集体も、何らかの機序による蛋白品質管理の一環で形成されると考えられるが、同一遺伝子の変異でも、起こる疾患の種類に対応して、それらの形成に差違が生じることから、両疾患の発症機序に違いがあることを意味すると推測される。 上述の結果から、オートファジーの惹起で、両疾患の発生が抑制されるのかについても、元の研究目的に加え、検討を要する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、緑内障および筋萎縮性軸索硬化症(ALS)の想定される発症機序のうち、蛋白品質管理機能について、我々が同定した『原因遺伝子OPTNとOPTN結合蛋白SLC4A2との共発現により惹起され、ERストレスに起因することが示唆される異常構造(Vacuole;空胞)の形成』に着目し、この応答の機序を明らかにすることにより、1)OPTNの蛋白品質管理機能の破綻が疾患要因であることの検証、2)緑内障家系の患者特異的に見出されたSLC4A2のアミノ酸置換体の意義の探求、を目的としている。 達成度の項目で記したように、本年度は、本来次年度の内容であった部分に着手したこともあり、本年度予定していた研究費使用に遅滞が生じている。よって、次年度は、本来本年度予定していた研究内容をも実施することで、本年度および次年度の総計の研究費を使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)