2013 Fiscal Year Research-status Report
筋萎縮性側索硬化症との発症起因の共通性に基づいた緑内障発症機構解析
Project/Area Number |
24592622
|
Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
大坪 正史 浜松医科大学, メディカルフォトニクス研究センター, 助教 (10327653)
|
Keywords | 異常タンパク蓄積 / 緑内障 / ALS |
Research Abstract |
以下に本年度の成果を示す。 1.オートファジー惹起:前年度までに報告したHeLaS3でのOPTN変異体E50Kで認められるOPTN顆粒(foci)やSLC4A2との共遺伝子導入での空胞様構造形成の亢進に対する、特定の薬剤(仮称STR )やmTOR阻害剤による抑制の際の、マーカータンパクLC3蛋白量の上昇について、他の神経細胞系の培養細胞株などを用いて検討し、これらの細胞株においても確認した。また、島状に固まった培養細胞集団像もみられ、増殖あるいは接着への影響が示された。生体(正常マウス)でも薬剤の投与の効果を検討した。 2.SLC4A2が関与する空胞形成およびfoci形成:共焦点顕微鏡で、fociについて検討し、ゴルジマーカー周辺に存在するが完全に一致はしないこと、また、タイプラプス顕微鏡での経時的な観察により、ゴルジ体の部分分解物を(fociは)起源としないことを示唆する結果を得た。さらに、OPTNの顆粒形成/SLC4A2共存での空胞形成の過程についても、経時的に観察した。 3.OPTN自身の性状:報告がある酸化ストレスによるOPTN核移行は再現できなかったが、NRLとの共発現の検討で、常時少量は核内移行しており、それが(論文報告済みのNRLとの結合により)トラップされる可能性を見出した。一方、相同タンパクNEMOに対応する領域が存在しない第2領域を欠く変異体での、刺激なしでの核内局在を、共焦点顕微鏡で確認した。また、OPTNの細胞内での主たる存在様式が高分子複合体であること、酸化ストレスがOPTNを共有結合3量体(cOPTN3)として固定すること、E50K変異OPTNは酸化ストレス刺激なしにcOPTN3を形成することを見出した。これらはfoci形成機序とも関わり得る知見であり、緑内障の発症メカニズムの理解にも有益である(論文投稿中)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、1)OPTNの蛋白品質管理機能の破綻が疾患要因であることの検証、2)緑内障家系の患者特異的に見出されたSLC4A2のアミノ酸置換体の意義の探求、を目的としている。 空胞形成を抑制する細胞内応答であるオートファジー惹起が、特定の培養細胞だけではなく、培養神経細胞株でも観察されることを明らかにした。また、生体での検討によって、有意味であるかを見極める段階に進んだ。また、SLC4A2のG26E変異体の部分断片化についての検討のために、同現象と関連するE50K変異体で亢進される異常タンパク蓄積に関する検討をおこない、正常OPTNとE50Kでの差違を見出した。H26年度は、G26E変異体の場合の表現型を明らかにすることで、SLC4A2のアミノ酸置換体の意義を明らかにする。
|
Strategy for Future Research Activity |
今回観察したシグナル分子の変化および空胞形成を抑制しうるオートファジー経路の惹起を引き起こすSTR処理が、細胞内の蛋白のクリアランスを向上させることで、発症や進行の抑制効果が得られる可能性があることが推測される。本研究の目的である異常タンパクの処理系の破綻が発症原因であることの傍証とのなる事象であることからも、オートファジーの惹起で、両疾患の発生が抑制されるのかについても、検討を要する。疾患モデルマウスを用いた発症の抑制を検討すると共に、生体および培養細胞系におけるシグナル伝達経路を解析することで、発症および発症抑制のメカにムズを明らかにする。また、培養細胞の系を用いた、SLC4A2のアミノ酸置換体による空胞様異常構造あるいは顆粒(foci)の形成に与える影響と、その疾患発症における意義についても引き続き検討を加える。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前項までに記したように、本年度および次年度は、培養細胞系および疾患モデル動物を用いて検討する予定であるが、後者については受注生産的側面があるために年度中に十分に入手することが困難であったため、次年度使用額が生じた。 本研究では、緑内障および筋萎縮性軸索硬化症(ALS)の想定される発症機序のうち、蛋白品質管理機能について、我々が同定した『原因遺伝子OPTNとOPTN結合蛋白SLC4A2との共発現により惹起され、ERストレスに起因することが示唆される異常構造(Vacuole;空胞)の形成』に着目し、これら異常タンパク蓄積に関する機序を明らかにすることにより、1)OPTNの蛋白品質管理機能の破綻が疾患要因であることの検証、2)緑内障家系の患者特異的に見出されたSLC4A2のアミノ酸置換体の意義の探求、を目的としている。最終年度であるH26年度は、上述の推進方針の遂行に必要となるため、本年度未使用ぶんの研究費残分および次年度の総計の研究費を使用する予定である
|
Research Products
(8 results)