2014 Fiscal Year Research-status Report
筋萎縮性側索硬化症との発症起因の共通性に基づいた緑内障発症機構解析
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24592622
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
大坪 正史 浜松医科大学, メディカルフォトニクス研究センター, 助教 (10327653)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 緑内障 / 筋萎縮性側索硬化症 / 異常蛋白蓄積 / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
以下に本年度の成果を示す。 1.オートファジー経路:OPTNの関する凝集体の発症に関する役割を明らかにするために、STR作用経路の候補としてmTOR経路について検討した。STRおよびmTOR阻害剤による活性化状態は、リン酸化特異的抗体を用いたウエスタンブロットで評価した。mTOR阻害剤は、mTORおよびその経路下流のp70S6Kのリン酸化を阻害した。一方、STRは、これらのリン酸化に影響を与えず、別経路によりオートファジーを活性化することが示唆された。 2.オートファジー誘導の確認:マーカー蛋白LC3に対するsiRNAを用いて、これら薬剤による効果が確かにオートファジー活性化によるものであることを確認した。2種のsiRNAのうち蛋白産生を低下させた1種は、これら薬剤の効果をキャンセルした。 3.異常タンパク蓄積:これまでの緑内障性変異による異常タンパク蓄積に加え、TDP-43のALS性凝集体に対して検討を開始した。C端側の断片TDP-25が細胞質に凝集し、これが強い細胞毒性を有すると考えられている。これらに対してオートファジー誘導の効果を検討することで、疾患発症原因の共通性を探る。 4.モデル動物を用いた検討:オートファジー誘導による異常タンパク蓄積の軽減が、in vitroでも発症の抑止に働くかについて、家族性ALSの原因遺伝子SOD1、および孤発性のALS患者の原因遺伝子TARDBPの疾患モデルトランスジェニックマウス2系統を用いた検討を実施中である。 5.OPTN自身の性状:酸化ストレスで固定されるOPTN共有結合3量体(cOPTN3)の「3量体」は分子量からの演繹であったので、今回、この分子構成について検討を加えた。2種のタグ(FLAGとGFP)付加OPTNを共導入して、PLA法による結合特異的可視化と、この時のHMCの分子量および2種の抗タグ抗体との反応性から、HMCが複数のOPTN分子を含むことを示す結果を得た(PLoS ONE 9(7): e101206, 2014)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では、1)蛋白品質管理機能の破綻が疾患要因であることの検証、2)緑内障家系の患者特異的に見出されたSLC4A2のアミノ酸置換体の意義の探求、を目的としている。 現在までに、培養細胞で、活性化経路の差違があってもオートファジーの誘導が行われれば緑内障変異に関する異常タンパク蓄積に関する表現型を抑制し得ることを見出した。また、ALS原因遺伝子産物の凝集体形成についても検討を開始し、発症起因の共通部分である機構に関する知見を獲得しつつある。また、生体での意義を見極めるためSOD1とTDP43の2系統のALSモデルマウスを用いたオートファジー誘導による発症改善の検討を開始したが、後者の獲得に遅滞が生じた。また、培養細胞系での検討についても、生体での知見を反映させる必要があるため、未使用額を生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
今回観察したシグナル分子の変化および空胞形成を抑制しうるオートファジー経路の惹起を引き起こすSTR処理が、細胞内の蛋白のクリアランスを向上させることで、発症や進行の抑制効果が得られる可能性があることが推測される。本研究の目的である異常タンパクの処理系の破綻が発症原因であることの傍証とのなる事象であることからも、オートファジーの惹起で、両疾患の発生が抑制されるのかについても、検討を要する。疾患モデルマウスを用いた発症の抑制を引き続き検討すると共に、生体および培養細胞系におけるシグナル伝達経路を解析することで、発症および発症抑制のメカニムズを明らかにする。また、培養細胞の系を用いた、SLC4A2のアミノ酸置換体による空胞様異常構造あるいは顆粒(foci)の形成に与える影響と、その疾患発症における意義についても引き続き検討を加える。TDP-43に起因するALS性凝集体に対するオートファジー誘導による改善効果を検討することにより、発症機序の共通性についても、さらに追究する。
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Causes of Carryover |
前項までに記したように、本年度は、緑内障および筋萎縮性軸索硬化症(ALS)の想定される発症機序について、培養細胞系および疾患モデル動物を用いて検討する予定であったが、後者については2系統を同時に検討開始するのが煩雑となることと、受注生産的側面があるために年度中に十分に入手することが困難であったため、また、培養細胞系での検討についても、生体での知見を反映させる必要があるため、未使用額を生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため、生体を用いた検討の継続分と、ALSでの異常タンパク蓄積に関する表現型に関する培養細胞を用いた検討を次年度に実施する。また、緑内障家系の患者特異的に見出されたSLC4A2のアミノ酸置換体の意義の探求を空胞形成の時間的空間的に蛍光顕微鏡観察することでおこなう。従って、H27年度は、上述の推進方針の遂行に必要となるため、本年度未使用ぶんの研究費残分の研究費を使用する予定である。
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