2012 Fiscal Year Research-status Report
セミカルバダイズ感受性モノアミンオキシダーゼ阻害剤による加齢性眼疾患の抑制
Project/Area Number |
24592640
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
橋爪 公平 岩手医科大学, 医学部, 助教 (50407095)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 眼科学 / 白内障 / 抗加齢医学 / 酸化ストレス / 糖尿病 |
Research Abstract |
本研究の目的は加齢性眼疾患のモデルに対してSSAO阻害剤を投与することによって疾患の治療となる可能性を探りつつ、加齢性眼疾患の病態を追究することである。 Semicarbazide-sensitive mono-amine oxidase (SSAO)阻害剤の白内障形成への効果を、鶏胚ステロイド白内障モデルを用いて検討した。放卵後の受精卵を37℃、湿度68%で孵置し、15日齢で受精鶏卵気室部にヒドロコルチゾン0.50 nmol / eggを投与し、鶏胚ステロイド白内障モデルを作成した。SSAO阻害剤であるU-V002(0.13 mg / ml)およびU-V002類縁体(0.14 mg / ml)を、ヒドロコルチゾン投与後3時間後、10時間後、20時間後に200 μl投与し、 48時間後に解剖を行った。対照群には生理食塩水を投与した。水晶体混濁の程度を1~5のスコア化し評価した。また水晶体中の還元型グルタチオン量の測定も行った。 水晶体混濁のスコアは、対照群(3.47 ± 0.97)、U-V002(2,79 ± 1.03, p=0.035)、U-V002類縁体(2.80 ± 1.00, p = 0.016) で、SSAO阻害剤が有意に混濁を抑制した。水晶体中グルタチオン量は対照群(3.98 ± 0.68 nmol / lens)、U-V002(4.59 ± 0.80 nmol / lens, p = 0.028)、U-V002類縁体(4.88 ± 0.88 nmol / lens, p< 0.001) で、SSAO阻害剤が有意にグルタチオン濃度を回復させた。 SSAO阻害剤(U-V002、U-V002類縁体)は鶏胚ステロイド白内障を抑制した。その機序としてヒドロコルチゾンによって誘発された酸化ストレスに対して、SSAO阻害剤の抗酸化作用が働いた可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は当初の予定通り鶏胚ステロイド誘発白内障モデルに対してSSAO阻害剤の投与実験を複数回行い、SSAO阻害剤がこのモデルにおける白内障を抑制することを確認することができた。さらに平成25年度に行う予定のSTZ誘発糖尿病ラットの予備実験を開始することができた。 以上より、おおむね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の鶏胚ステロイド白内障モデルを用いて研究を行なった。このモデルは酸化ストレスによって白内障を生じるモデルで、SSAO阻害剤の抗酸化力によって白内障が抑制された。 今回のステロイド誘発鶏胚白内障モデルでは、高血糖が生じているが、本来の糖尿病自体の病態にSSAOが関与していることが知られている。糖尿病における糖白内障の機序として、ポリオール蓄積説、酸化ストレス説、グリケーション説がある。SSAOは、過酸化脂質の産生など酸化ストレスに密接に関わり、本来の糖尿病における糖白内障の発生に関与する可能性が考えらる。さらに、糖尿病ラットの水晶体中のメチルグリオキサール、アルグピリミジンの濃度が高いことや糖尿病患者の水晶体中のAGEs濃度が高いことが報告されており、グリケーションを介した糖白内障の発生機序にも関与する可能性が考えられる。今後のテーマとして、実際に糖白内障に対してSSAO阻害剤が効果を持つかを検討することとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ラットやマウスにストレプトゾトシン(STZ)を経静脈あるいは腹腔内することによって、膵臓のランゲルハンス島が選択的に破壊され糖尿病になることが知られている。 平成25年度はこのSTZ糖尿病ラットモデルを用いてSSAO阻害剤の効果について検討する。 5週齢のWistarラットに対してSTZ(60mg/kg)を静注し、STZ糖尿病モデルラットを作成する。STZ投与翌日からSSAO阻害剤溶液、コントロールとして溶媒を1日3回で点眼投与する。またSTZ投与後1週間後に血糖値を測定し血糖値が500mg/dl以上の個体のみを実験の対象とする。STZ投与後約4週間でわずかな前嚢下混濁が生じ始め、やがて3か月以内に水晶体全体が白濁する。従って点眼投与は約3ヶ月行う予定である。白内障の観察はミドリンP点眼にて散瞳し細隙灯で観察、スリットフォトをデジタルカメラで撮影する。とりこんだ画像を元に前嚢下混濁を水晶体混濁面積率で評価する。さらに実験終了時には水晶体を摘出し、水晶体中のタンパク濃度、還元型グルタチオン濃度(GSH)、ビタミンC濃度、AGEs量を測定する。組織学検討は全眼球を固定しパラフィン切片を作成して行う。HE染色および免疫組織染色を行う。抗酸化物質の増減を検索することによりSSAO阻害剤が抗酸化作用として働いたかどうかが分かり、AGEs量を検索することによりSSAO阻害剤がAGEs産生を抑制したかどうかが分かる。糖尿病白内障における白内障形成の機序を明らかにするとともに、糖尿病白内障の予防薬(あるいは治療薬)としてのSSAO阻害剤の可能性について研究する。
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