2013 Fiscal Year Research-status Report
セミカルバダイズ感受性モノアミンオキシダーゼ阻害剤による加齢性眼疾患の抑制
Project/Area Number |
24592640
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
橋爪 公平 岩手医科大学, 医学部, 助教 (50407095)
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Keywords | 眼科学 / 白内障 / 抗加齢医学 / 酸化ストレス / 糖尿病 |
Research Abstract |
本研究の目的は、加齢性眼疾患のモデルに対してSemicarbazide-sensitive mono-amine oxidase (SSAO)阻害剤を投与することによって、疾患の治療となる可能性を探りつつ、加齢性眼疾患の病態を追究することである。 前年度はSSAO阻害剤2剤(U-V002, or U-V002 analogue)を用いて、ステロイド誘発鶏胚白内障モデルへの効果を調べた。その結果2剤とも白内障形成を抑制し、水晶体中のグルタチオン量の減少を抑制した。2剤の比較では有意差はなかったが、U-V002 analogueのほうが抑制効果が強い傾向にあった。 本年度はU-V002 analogueを用いて、ストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病ラットにおける糖白内障に対する効果を調べた。5週齢のWistarラットにたいしてSTZ(60 mg/kg)を尾静脈に静注し、STZ糖尿病モデルラットを作成した。STZ投与翌日から治療群としてU-V002 analogue溶液を、溶媒群として溶媒を1日3回で両眼に点眼投与した。またSTZ投与後1週間後の血糖値測定で血糖値が500 mg/dl以上の個体のみ実験の対象とした。ミドリンP点眼で散瞳し細隙灯を用いて7週間後、9週間後、12週間後に水晶体混濁を観察した。水晶体の混濁は0~4のスコア化し評価した。その結果、溶媒群では7週間後に2.28 ± 1.07、9週間後に2.89 ± 1.16、12週間後に3.56 ± 0.51の混濁であったが、治療群では7週間後に1.33 ± 1.32 (p = 0.023)、9週間後に1.78 ± 1.15 (p = 0.017)、12週間後に3.28 ± 1.02 (p = 0.668)の混濁で、7週間後と9週間後で混濁の抑制がみられた。SSAO阻害剤が糖尿病白内障の進行を抑制する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度はステロイド誘発鶏胚白内障モデルに対するSSAO阻害剤の投与実験を行い、SSAO阻害剤の抗酸化能によって白内障が抑制されることが示された。平成25年度はSSAO阻害剤の点眼投与によってストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットにおける糖白内障の進行抑制を示すことができた。 以上より、おおむね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度はステロイド誘発鶏胚白内障モデルで研究を行った。このモデルは酸化ストレスによって生じる白内障で、SSAO阻害剤の抗酸化能によって白内障が抑制されたと考えられた。平成25年度はストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットにおける糖白内障の進行をSSAO阻害剤の点眼投与によって抑制することができた。その作用機序のひとつは鶏胚での研究と同様に抗酸化作用によるものと考えられるが、糖白内障の機序はそれだけではない。 SSAOによりアミノアセトンが脱アミノ化されるとメチルグリオキサールと過酸化水素とアンモニアを生産されるが、糖尿病ではSSAOの活性が亢進し、2型糖尿病患者の血清中でメチルグリオキサールの濃度が増加していることが報告されている。メチルグリオキサールは、advanced glycation end-products (AGEs)のひとつであるアルグピリミジンの産生に関与する。糖尿病ラットの水晶体中のメチルグリオキサール、アルグピリミジンの濃度が高いことや糖尿病患者の水晶体中のAGEs濃度が高いことが報告されている。糖尿病における糖白内障では、ポリオール蓄積説、酸化ストレス説、グリケーション説がある。SSAOが酸化ストレス以外にもグリケーションを介した糖白内障の発生機序にも関与する可能性が考えられ、SSAO阻害剤がグリケーションの抑制を介した機序で糖白内障の進行を抑制する可能性がある。 平成26年度はステロイド誘発鶏胚白内障モデルに対してSSAO阻害剤を点眼投与実験の再現性を確認するとともに、実験で得られる検体(水晶体、血液)をもとに、メチルグリオキサールやアルグピリミジンなどの濃度測定を行い、SSAOの糖白内障への関与や糖白内障の病態について明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験が能率よくできたために、用いた鶏卵の数を少なくなったため。 サンプル中の物質の測定を効率よく進めるため、外注による検査も検討している。その輸送費に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)