2012 Fiscal Year Research-status Report
皮膚由来多能性前駆細胞から角膜内皮細胞への分化誘導
Project/Area Number |
24592644
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
榛村 重人 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (00235780)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 悟 慶應義塾大学, 医学部, 特任講師 (50398781)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 角膜内皮細胞 / 皮膚幹細胞 / 水疱性角膜症 / 再生医療 / 角膜移植 / 神経堤細胞 |
Research Abstract |
神経堤由来の細胞でEGFPの蛍光を発するWnt1-Cre/floxed EGFPマウス皮膚組織からSKPsを分離し、培養増殖させることに成功した。このマウスから得られたSKPsもEGFPの蛍光を発しており、SKPsが神経堤細胞由来であることが確認された。既報の方法ではマウスSKPsを効率的に増殖させることが困難であったが、GSK-3β阻害剤(BIO)を培養液中に添加することで効率的に増殖させることにも成功した。我々の開発した角膜実質幹細胞(COPs)から角膜内皮細胞への分化誘導法を応用し、SKPsにレチノイン酸、BIO等の誘導因子を添加し接着培養したところ、tight-junction形成の指標であるZO-1の発現が確認され、Ussing chamberでのNa,K-ATPaseポンプ機能評価にても十分なポンプ機能が確認された。更に平成25年度の計画に先駆けて、この誘導した細胞をウサギ角膜に移植しin vivo機能評価を行った(n=4)。移植後8日目の時点で、コントロールの角膜内皮剥離眼は著明な角膜浮腫を呈し角膜厚が1105.8±165.9μmに増加するのに対し、SKPs誘導細胞移植眼では角膜透明度が維持され角膜厚は544.0±85.0μmに維持された。しかし実際の角膜内皮は単層細胞層であるのに対し、SKPs誘導細胞は一部重層化しており、角膜内皮細胞マーカー群でも基底膜構成因子(4型及び8型コラーゲン)の発現が不十分であるので、ポンプ機能は十分であるものの完全に角膜内皮細胞と同等の細胞には誘導しきれていないと思われる。現在はSKPsとCOPsのDNAマイクロアレイを解析中で、角膜内皮への誘導に何が足りないかを検討中である。ヒト皮膚細胞からのSKPs分離に関しては本大学の倫理委員会の承認を所得した。実際の分離培養は平成25年度から開始する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、平成24年度は、マウスおよびヒト皮膚組織からSKPsを分離し、in vitroで誘導実験を行い、角膜内皮マーカー群の発現確認と、Ussing Chamberを用いたNa,K-ATPase活性測定を行う予定であった。 マウスの実験系では、SKPsの効率的な分離培養に成功した。我々の報告した角膜実質幹細胞から角膜内皮細胞への分化誘導法を応用して、SKPsを、tight-junctionの形成がみられ、かつin vitroでの評価系でNa,K-ATPaseポンプ機能を十分に持った細胞に誘導することができた。更に、平成25年度に先駆けてウサギを用いたin vivo実験系での機能評価も行い、この細胞がin vivoでも十分なポンプ機能を有することを確認できており、この部分に関しては当初の計画以上に達成できている。一方細胞の重層化の抑制と基底膜構成因子の発現が解決すべき課題であり、そこがクリアできれば、ヒトSKPsからの誘導もスムーズに行えると思われるので、来年度初頭は重点的にそこに取り組む必要がある。 また当初は予定していなかったが、上記の課題に対する対処として、DNAマイクロアレイでSKPsとCOPsの比較も行い現在解析中であり、この結果がSKPsの誘導法の改善に有用な手掛かりになると考えている。 当初の計画以上に達成できている部分と未達成な部分があるが、全体を総括するとほぼ予定通りの進捗状況と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように、まずマウスSKPs誘導実験での、重層化の抑制と基底膜構成因子の発現の課題を最優先で行う。DNAマイクロアレイの結果はすでに出ており、現在はこれを解析中である。これをもとにSKPsを角膜内皮に誘導するのに何の因子が足りないか検証を進める。それと並行して、我々は神経堤細胞から角膜内皮細胞への分化誘導に際し、転写因子p63の発現を抑制することが単層細胞への分化誘導の鍵となっていることを見出しており。この成果をもとに、SKPsでのp63の発現をコントロールすることで単層上皮化が可能となるか検証を進めていく予定である。 ヒト皮膚細胞からSKPsへの分離培養を開始し、マウス実験での結果を順次応用してin vitroで誘導実験を行い、角膜内皮マーカー群の発現確認と、Ussing Chamberを用いたNa,K-ATPase活性測定を行っていく予定である。誘導法が確立されれば出来るだけ早くウサギへの動物実験を開始する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。
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Research Products
(7 results)