2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24592660
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
柿崎 裕彦 愛知医科大学, 医学部, 教授 (20329783)
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Keywords | 総涙小管 / 涙嚢 / 弾性線維 / マイエル洞 |
Research Abstract |
今回の研究目的は、涙嚢と総涙小管の関係、特に、涙嚢から総涙小管への逆流防止機構を、解剖学的・生理学的に明らかにすることにある。 平成24年度の研究では、まず、総涙小管の涙嚢への開口部を観察し、涙嚢に含まれる部分の涙小管の長さが平均1344.9μm、径が287.5μm(14標本)であることを明らかにした。この研究成果はOrbit(2013 Oct;32(5):294-7.)に掲載された。さらに、涙嚢鼻腔吻合術後の内総涙点の動きを瞬目に関連して観察した研究では、閉瞼時に内総涙点は耳側へ移動、開放し、開瞼時には鼻側へ移動、閉塞するが、その閉塞は不十分であることが明らかとなった。また、この動きがマイエル洞形成に関与していることも明らかにした。この研究成果はAm J Ophthalmol(2013 Nov;156(5):1051-1055.)に掲載された。また、総涙小管の涙嚢への開口部が膨らんでいるマイエル洞には2種類あり、それらが、各々、涙嚢由来、涙小管由来であることを明らかにした。この研究成果は現在、投稿の準備中である。 平成25年度には、涙嚢から総涙小管への逆流防止機構には、涙道周囲の弾性線維の密度、分布が重要な役割を果たしていると考え、解剖用死体から得られた標本に弾性線維染色を行って観察した。総涙小管周囲では弾性線維の分布は顕著でなく、それ以外の涙小管周囲に特異的に分布していることが明らかとなった。この研究成果は現在、Ophthal Plast Reconstr Surに投稿中で改定の状態である。涙嚢に関しても同様の研究を行い、涙嚢粘膜下には弾性線維の分布が顕著ではないことが明らかとなった。この研究成果に関しては現在、投稿の準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解剖学的研究によって、以下の内容が明らかとなった。1.総涙小管の涙嚢への開口部の平均の長さが1344.9μm、径が287.5μm(14標本)であること。2.総涙小管の涙嚢への開口部が拡張したマイエル洞が2種類示され、それらが各々、涙嚢由来、涙小管由来であったこと。3.総涙小管周囲には弾性線維の分布が顕著ではなかったこと。4.涙嚢粘膜下には弾性線維の分布が顕著ではなかったこと。また、鼻内視鏡を用いた研究では、瞬目に同期した内総涙点の動きが明らかとなり、閉瞼時に内総涙点は耳側へ移動して開放し、開瞼時には鼻側へ移動し閉塞するが、その閉塞は不十分であった。この動きがマイエル洞形成に関与していた。以上より、解剖学的研究や鼻内視鏡を用いた研究においては、目的は達成されたと考える。 しかし、昨年の本報告において指摘した事項、すなわち、実際の患者での緑内障点眼後の総涙小管部の長さ、径の検討」、また、「眼表面厚センサーを用いた研究」はまだ行っていないため、この点においては、研究は達成されていない。
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Strategy for Future Research Activity |
実際の患者での緑内障点眼後の総涙小管の長さ・径の検討:涙嚢鼻腔吻合術の術前患者に対して、すでに市販されている交感神経刺激点眼薬、副交感神経刺激点眼薬をそれぞれ点眼し、総涙小管の長さ、径に対する点眼薬の影響を調べる。 眼表面厚センサーを用いた研究:涙嚢鼻腔吻合術後患者の総涙小管涙嚢開口部の開口状態を眼表面厚センサーと関連させて観察する。すなわち、閉瞼圧がどのように総涙小管涙嚢開口部の開口状態に影響を与えているかを調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は特に大きな機器の購入がなく、また、研究成果発表の回数もそれほど多くはなかったため。 掲載論文の掲載費支払い。研究成果の発表。機器の購入。
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