2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24592671
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
近間 泰一郎 広島大学, 大学院医歯薬保健学研究院(医), 准教授 (00263765)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高 知愛 広島大学, 大学院医歯薬保健学研究院(医), 特任講師 (70314797)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 神経再生 |
Research Abstract |
本研究の究極の目的は,角膜移植や角膜屈折矯正手術であるレーシック術後などに生じる角膜神経再生異常に伴う神経麻痺性角膜症に対する新しい角膜神経再生治療法の開発である。そのために,今回は3次元ゲル培養法を用いた神経線維誘導を評価できる培養システムの確立とコラーゲンビトリゲルを併用した共培養系を用いて神経細胞と角膜細胞(上皮細胞,実質細胞)との相互作用および調節機構を探索することを目的とする。 本年度は,1)3次元ゲル内培養法の確立と神経線維誘導因子の検討と2)神経細胞と角膜細胞の共培養システムの確立を予定していたが,コラーゲンゲル内で神経細胞(ラットの三叉神経細胞あるいはPC12)が安定して培養できる条件の決定において,ゲル内での培養条件が不安定で,現時点では培養法の確立に至っていない。条件確立後に種々の誘導因子を含んだディスクをゲルへ置き,神経細胞の線維伸長を顕微鏡下で観察・定量化し評価する予定である。 一方,神経細胞と角膜上皮細胞の共培養では,株化神経細胞(PC12)を用いてin vitro系で角膜細胞と共培養を試み,その両者の共培養に成功した。その共培養の方法としては,コラーゲンタイプIビトリゲル膜を用い,その両面に神経細胞と角膜細胞を同時に一定期間培養を行い,その後,角膜細胞内の変化の解析を行った結果,角膜実質細胞では,神経細胞の存在下で実質細胞からのMMP-1の発現が顕著に増加し,さらに炎症性サイトカインIL-6の分泌も増加することを明らかにした。また,神経細胞の存在下で、角膜上皮細胞の重要な機能であるバリアー機能をつかさどる上皮細胞の重層化の促進が見られた。 以上より,この研究で見出した共培養系を応用し,3次元ゲル培養に展開することで,生体内の環境に近づけることが可能になり,神経麻痺性角膜症や様々な角膜疾患に対する新しい治療法の開発に結び付く可能性を期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は現在までやや遅れていると自己評価している。 神経細胞の3次元ゲル培養の条件設定がなかなか困難な状況であり,その後の研究予定が進んでいない点があげられる。一方で,コラーゲン膜を用いた培養系は,株化神経細胞(PC12)と角膜細胞の共培養の確立、さらに解析も順調に進んでいる。すでに、その内容は学会、雑誌などに発表している。 このコラーゲン膜を用いた培養系で得られた情報をもとに,3次元ゲル培養法の確立とその解析と共に神経再生に際して生じる神経線維の走行異常を是正する(神経)因子の同定に結び付けることが可能であると考えられます。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の進め方としては,コラーゲン膜を用いて確立した培養系で得られた結果を元に3次元ゲル培養共培養系を確立することに重点を置く必要がある。具体的には,株化神経細(PC12)と神経細胞(三叉神経)を用いて,3次元ゲル内での挙動が最も安定する条件を確立することである。その後,培養下でどのような因子(神経性因子)により神経細胞が強く反応するかを見出したい。 さらに,神経細胞と角膜細胞の共培養系での炎症性サイトカインあるいは成長因子などの変化もBio-Plexなどの手法をもちいて明らかにし,神経の走行をコントロールできる条件を見出したい。この情報が,神経再生時に生じる走行異常の改善に重要な示唆をもたらすものと期待する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度研究費の使用計画としては,前年度研究費使用傾向からも明らかであるように主に消耗品の購入に使用されると考える。培養に主に使われる3次元ゲルの構築に適したゲルの購入に供すると考える。さらに,炎症性サイトカインの解析や成長因子,神経因子の同定に用いる様々な神経ペプチドなど,高額の消耗品の購入が予想される。 その他,研究で得られた結果を社会、国民に発信するため、様々な学会での発表(旅費),論文を国際誌に発表(その他:校閲)のために研究費を使用させていただく予定である。
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