2013 Fiscal Year Research-status Report
アデノウイルス眼感染症の新しい薬物治療の探求と臨床実用化に関する研究
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24592686
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
内尾 英一 福岡大学, 医学部, 教授 (70232840)
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Keywords | アデノウイルス / 結膜炎 / 抗ウイルス薬 / ガンシクロビル |
Research Abstract |
アデノウイルス(HAdV)Dは流行性角結膜炎を生じ,臨床的にも公衆衛生学的にも重要な病原体である。ガンシクロビルはサイトメガロウイルス,単純ヘルペスウイルス,水痘帯状疱疹ウイルスなどへの有効性がin vitroで報告されている。今回は下記の方法で,結膜炎を人に生じる型に対して,ガンシクロビルの有効性を検討した。A549細胞による培養系を用い,本邦の結膜炎起炎型である3, 4, 8, 19aおよび37型を用いた。増殖抑制作用の評価には薬剤自体の細胞毒性を検討した後,ガンシクロビルをその希釈倍率の種々の濃度でHAdVに24時間作用させ,さらに7日間培養し,定量PCR法でアデノウイルスDNAを測定すした。指標としては細胞毒性のCC50(50% cytotoxic concentration)とEC50(50% effective concentration)およびそれらの比である選択指数を用いた。 ガンシクロビルのCC50は212 µg/mlであった。ガンシクロビルのEC50は型によって異なっていたが,2.64~5.10 µg/mlであった。有意な増殖抑制効果はすべての型について見ることができた。選択指数は41.6~80.3であり,良好であると考えられた。 ガンシクロビルにはHAdVの3, 4, 8, 19aおよび37型に有意な抑制作用が見られた。これらの結果から,今後この薬物をアデノウイルス眼感染症の治療薬として使う可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アデノウイルス結膜炎治療薬は依然として確立されておらず,今回の実験モデルによるin vitroの実験系は薬物のアデノウイルスへの作用を比較していく上では有用であり確立されたものである。ガンシクロビルはサイトメガロウイルスやヘルペスウイルスに対して実際に臨床応用されている薬物であり,これまでもさまざまな臨床データやウイルス学的な報告が行われている薬物である。しかしアデノウイルスについてはごく限られた研究で,結膜炎を生じない型に限っての報告が行われているのみであり,わが国で流行性角結膜炎を生じる代表的な,3,4,8,19および37型を用いた比較研究の結果は眼科臨床において今後の治療薬の方向性を知ることができ,きわめて重要な結果であるといえる。動物モデルにおける研究が行えればさらに望ましいため,そのための基礎的な研究は引き続き行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の大きな特徴は,抗アデノウイルス作用薬物の評価を包括的,網羅的に行うことである。対象薬物は,核酸系および非核酸系逆転写酵素阻害薬,プロテアーゼ阻害薬などの抗HIV薬,シドフォビル,ガンシクロビルなどの核酸アナログ誘導体,化学合成物質の生理活性物質である内因性殺菌性オキシダントや抗菌ペプチドの中からhCAP-18,N-chlorotaurineなどを用いる。さらにアデノウイルスレセプター阻害物質のGRGDSPペプチドや,インターフェロンおよびなどを検討の対象として,すでにウイルス学的な研究を行っており,上記のような成果を挙げている。このような広範囲の網羅的な薬物を対象とした探索的なアデノウイルス治療薬研究は従来行われてこなかった独創性の高い研究である。このような計画が可能である背景には,私たちの研究グループがアデノウイルス流行株のPCR-sequence法によるウイルス構造蛋白のシークエンス解析を既に詳細に行っていることがある。
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Research Products
(10 results)