2013 Fiscal Year Research-status Report
肝芽腫におけるisoform別CEACAM1発現欠失の機序の解明及び臨床的意義
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24592693
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
仲谷 健吾 新潟大学, 医歯学系, 助教 (20625173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
窪田 正幸 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50205150)
若井 俊文 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50372470)
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Keywords | CEACAM1 / CEACAM6 / 肝芽腫 / 病期 / 遠隔転移 |
Research Abstract |
【研究の背景・目的】がん胎児抗原関連細胞接着分子(CEACAM; carcinoembryonic antigen-related cell adhesion molecule)は、免疫グロブリン・スーパーファミリーに属する接着因子であり、様々なタイプの細胞における増殖・遊走・分化に深く関与していることが知られている。本因子はCEACAM1-8からなる数種類のファミリー因子で構成されており、各因子が異なる生物活性を有している。なかでもCEACAM1は、4種類のアイソフォームからなるmRNAの組み合わせを通して多彩な作用を持つ接着因子の代表格であり、特にがん細胞の増殖に大きく影響することから、がん患者の予後因子として注目を集めている。そこで本研究では、いまだ原因・病態メカニズムが不明である肝芽腫におけるCEACAM因子の発現動態を解析して、同疾患の予後予測マーカーの可能性を検討している。 【これまでの研究成果】 これまで申請者らは、肝芽腫におけるCEACAM1の発現動態を詳細に検討した結果、悪性度が高く、予後不良な症例ではCEACAM1が発現消失していることを見いだし、同因子が、特に肝芽腫の肺転移の予測マーカーとして有望である可能性を報告している(J Pediatr Surg ‘09)。本研究では、さらにCEACAMファミリーの臨床病理学的意義の可能性を探る目的で、CEACAM1と同様、悪性疾患におけるバイオマーカーとして報告がなされているCEACAM6に着目し、当該施設で経験した肝芽腫11例における発現形式を、免疫染色・Western blot解析した。興味深いことに、がん病巣におけるCEACAM6発現レベルはCEACAM1とは大きく様相が異なっており、11例中11例において、がん部におけるCEACAM6の強い発現が認められた。この解析結果は、CEACAM1とCEACAM6の組み合わせが、精度の高い肝芽腫バイオマーカーになりうることを示唆している(国内・海外研究会での発表準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① 肝芽腫データベースの構築: 本疾患を研究するうえで最大の問題点は、わが国における症例数が少なく、各医療施設におけるデータ・臨床サンプルの蓄積が乏しいため免疫病理学的領域における知見が欠落している点が挙げられる。申請者らは、本研究を通して、当該施設で経験した症例の臨床データ・病理学的所見に関する詳細なデータベースを構築できた。わが国における肝芽腫の分子生物学的解析を進めるうえで、有用な解析ツールを入手できたものと自負している。 ② CEACAM1 & 6両因子の同時解析によるバイオマーカーの提唱: 肝芽腫は、極めて進展の速度が速い悪性腫瘍であり、早期発見のタイミングを逃したケースでは、予後・転移を正確に予測しえることが求められている。本研究では、これまでの申請者のCEACAM1に関する研究結果に加えて、肝芽腫においてCEACAM1とは全く異なる変動を呈するCEACAM6の発現形式を明らかにしえた。本成果は、治療困難な小児がん患者の延命に寄与しえるバイオマーカーの研究分野に貢献できたものと考える。 ③ 肝芽腫に対する分子生物学的解析手法の確立: 本研究を通して、これまでほとんどメカニズムが不明であった同疾患検体のDNA/RNA/タンパク抽出サンプルを準備することが可能になった。 なお、本年度より、通常業務における役職の変更があり、研究に対する準備期間を含めた研究面での整備が、さらに見込める状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで述べたとおり、本研究のこれまでの成果によって、CEACAM1およびCEACAM6の同時解析が、肝芽腫の病態診断に有用であることが明らかになった。そこで今後は、CEACAM1/6が、肝芽腫で発現変動する理由を探る目的で、以下の解析を行う方針である。 (I) 肝芽腫の臨床検体におけるCEACAM1/6 mRNAの比較検討: RT-PCR法、in situ ハイブリダイゼーション組織化学法を用いて、肝芽腫検体における両因子の発現レベルを、特にmRNAアイソフォームの変動に着目して解析し、予後・転移との相関を検討する。 (II) 肝芽腫細胞におけるCEACAMメンバーの解析: 本研究で明らかになったCEACAM1/6以外のファミリー因子が肝芽腫の病態に関与している可能性を検討する目的で、細胞培養株における細胞内局在・細胞増殖/遊走能との関連性を検討する。 (III) CEACAM1/6 発現異常と病態悪性度との相関機構の解明:RNA干渉による分子生物学的手法を用いて、肝芽腫細胞培養株におけるCEACAM1/6発現パターンを人為的に変動させることを通して、どのタイプのアイソフォームmRNAが、最もがん細胞の悪性度に影響するのかを解析する。本解析を通して、将来的には、肝芽腫に対するCEACAM遺伝子療法の可能性をも探りたいと考えている。 (V) アイソフォームmRNA別のCEACAMファミリー因子による肝芽腫予後マーカーの探索: 上記(III)の研究結果を基にして、CEACAM因子のアイソフォーム、特に膜貫通ドメイン・細胞内ドメインに該当するmRNA遺伝子の欠失・増加が生命予後に与える影響を単変量解析(Kaplan-Meier method、log rank test)、多変量解析(Cox proportional hazards regression model)により解明する。最終的には、得られた研究成果を国内外学会で発表し、論文発表に繋げる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該施設では、本研究開始以前より、免疫染色キット・PCR解析試薬および機器が充分に充足されており、本年度内においては、消耗品に関する経費は寡少であった。また、次年度からは、培養細胞へのCEACAM遺伝子RNA干渉実験を行う予定であるため、分子生物学的解析の準備を行う目的で、次年度へに繰り越し額を設けた。 繰り越した予算額は、以下の研究計画の実施に充てる方針である。 (I) CEACAM1/6 mRNAの比較検討: RT-PCR法、in situ ハイブリダイゼーション組織化学法を施行する。この際、PCRプライマー・mRNA抽出試薬・タンパク抽出試薬の購入する予定である。(II) 肝芽腫細胞におけるCEACAMメンバーの解析: 本研究で明らかになったCEACAM1/6以外のファミリー因子が肝芽腫の病態に関与している可能性を検討する目的で、CEACA1-8の特異抗体・pan-CEACAM抗体を購入し、また肝芽腫細胞培養株を購入して、培養実験に予算額を割り当てる予定である。(III) CEACAM1/6 発現異常と病態悪性度との相関機構の解明:RNA干渉による分子生物学的手法を用いて、肝芽腫細胞培養株におけるCEACAM1/6発現パターンを解析する目的でsiRNA遺伝子鋳型を購入し、遺伝子分析解析を行う予定である。
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[Journal Article] Risk of subsequent biliary malignancy in patients undergoing cyst excision for congenital choledochal cysts.2013
Author(s)
Ohashi T, Wakai T, Kubota M, Matsuda Y, Arai Y, Ohyama T, Nakaya K, Okuyama N, Sakata J, Shirai Y, Ajioka Y
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Journal Title
J Gastroenterol Hepatol
Volume: 28
Pages: 243-247
DOI
Peer Reviewed