2012 Fiscal Year Research-status Report
グラフト肝虚血再灌流障害の飛躍的改善:間葉系幹細胞導入による臓器保存液の開発
Project/Area Number |
24592694
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡本 晋弥 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00329377)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上本 伸二 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40252449)
寺谷 工 自治医科大学, 医学部, 講師 (70373404)
藤本 康弘 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80335281)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 肝移植 / 臓器保存 / 間葉系幹細胞 |
Research Abstract |
我々の研究グループにおいては、間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cells;MSC)が、肝臓において虚血再還流障害の抑制効果をもたらす(Kanazawa H, 2011)事を見出し、また他研究グループの検討から(Popp FC, 2008)、MSCにより臓器移植に伴う拒絶反応の抑制や免疫寛容が誘導される可能性を仮定し、既に提示の計画に基づいた研究を開始した。以下実施状況につき提示する。 現在MSCの産生するExosomeに注目して研究を進めている。Exosomeは血液や尿、腹水などの体液や細胞培養の上清などから採取可能な直径40-100nm前後の分泌小胞で、母細胞の細胞膜及び内部に存在する各種蛋白質やマイクロRNAなどを豊富に含み、細胞間でのシグナル伝達や遺伝情報の伝達に関与している(Valadi H, 2007)。このExosomeは、由来する細胞により免疫抑制作用を持つ事が知られており、マウス及びラットを用いた実験的臓器移植モデルにおいて、ドナー樹状細胞培養液由来のExosomeを移植前に経静脈投与することにより、移植臓器の生着期間の延長が報告されている (Peche H, 2003)。 我々の研究グループは上、MSCを含む各種の培養細胞上清よりExosomeを分離採取する技術を確立した。透過型電子顕微鏡にて直径約100mで二重膜構造を持つExosomeと考えられる小胞が確認されている。続いて、このExosomeが異種抗原に対する反応において抑制的に働くことを証明するため、リンパ球交叉反応試験を用いた実験を実施した。同系異種細胞間での免疫反応に関するExosomeの効果を調べたところ、Exosome存在下に培養した樹状細胞を用いた系では、Exosome非存在下で培養を行った樹状細胞を用いた系に比して、同系異種細胞間での免疫反応の抑制が認められる事が確認出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、LEWラットの脂肪組織より樹立した間葉系幹細胞から培養液濃縮液を抽出した。具体的には、100mm-dishに0.1% 血清含有培地にて脂肪組織由来間葉系幹細胞を培養し、培養開始48時間後に培養液のみを回収し、市販されている濃縮カラムを用いて細胞分泌成分を回収する。濃縮の有無はFUJI Dry Chem(富士フィルム社)を用いて総タンパク質量を測定すると共に、ローリー法による吸光度計を用いた定量を行い確認する。という手法にて、用意した濃縮液を実験に用いたが、予備実験にて、毒性が強く、治療濃度域が極めて狭いと考えられた。ここで、exosome抽出により、研究を進めることとし、前記のごとく分離採取、効果判定できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、ラット移植モデルを用いた評価を行う。先ずドナーとなるLEWラットの肝臓をET-Kyoto液にて還流し、摘出後に同保存液に浸す。既に我々は4度冷保存時における肝臓保存限界時間を明らかにしている事から、肝臓の保存時間を24時間と固定する。24時間保存した肝臓をレシピエントラットに移植し、「生存率の算定」「血液生化学の測定」「肝臓病理の解析」などを行う。この項目ではET-Kyoto液による最適な「保存温度(4度・23度・37度)」を決定する。当該実験は京都大学にて実施する。24時間保存で保存温度間で有意な差が確認されなかった場合には、ドナー肝臓の保存時間を18時間、12時間と6時間づつ短くして実験を遂行する。 ET-Kyoto液にexosomeを添加し、ドナー肝臓を保存、その後レシピエントラットに移植して生存率や血液生化学データ等にて評価を行う。一方、Luciferase-Tg LEWラットの肝臓を同条件にて保存し、同一個体や組織を経時的に発光輝度の追跡が可能であるIVISを用いて肝臓の保存状態を評価する
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞培養、exosome分離のための、試薬類などに予算の1/3を用いる予定である。また、ラット移植モデル作成、検体作成、標本作製に残り2/3を用いる予定である。
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Research Products
(2 results)