2012 Fiscal Year Research-status Report
神経芽腫におけるTrkBを標的とした新規治療薬の探索とその機能解析
Project/Area Number |
24592703
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
中村 洋子 千葉県がんセンター(研究所), がん先進治療開発研究室, 主席研究員 (60260254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川原 章 千葉県がんセンター(研究所), 研究局, センター長 (50117181)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 神経芽腫 / TrkB / 低分子化合物 / BDNF / 細胞死 |
Research Abstract |
予後不良な神経芽腫で発現の高い遺伝子TrkB(神経栄養因子受容体)のBDNF (Brain-derived Neurotrophic Facter) が結合する領域を標的分子として、すでに300万個の候補低分子化合物仮想ライブラリーから、インシリコで60個の低分子化合物をスクリーニングした。その結果候補となった低分子化合物の中で、細胞増殖能に影響を与える化合物をさらにスクリーニングし、がん細胞の増殖抑制や分化制御に関わる最適化合物の探索を行い、その作用機序を解明することを目的とした。 インシリコでスクリーニングされた低分子化合物60個のうち入手可能な化合物37個について、神経芽腫細胞株[SH-SY5Y/TrkBおよびCHP134(TrkB発現あり)]に対する細胞増殖抑制能を検討したところ、両細胞とも化合物処理に伴って細胞増殖抑制能が顕著に認められた化合物は7個であった。また、IC50は、0.07~4.6μMであった。さらに、どのようなシグナル伝達経路を介して細胞死や細胞分化等が起きているか解析を行ったところ、TUNELアッセイ法では化合物処理により細胞は陽性染まり、ウエスタンブロッット法ではPARPやCaspase 9の断片化が検出され、さらには、p53のリン酸化が認められた。以上の結果から、p53を介した細胞死を誘導していることが示唆された。またSY5Y/TrkB細胞を化合物と同時にBDNF処理し、BDNF存在下、非存在下において、細胞増殖抑制速度を比較検討したところ、BDNF存在下の方が、細胞の増殖抑制速度は、遅くなっていることが判った。TrkBのBDNF結合領域を低分子化合物とBDNFで競合していると考えられる。 さらに、CHP134細胞をマウスに移植し、腫瘍形成が明らかであるマウスに対し低分子化合物を処理した。その結果、低分子化合物による抗腫瘍効果が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究実施計画に記載の項目「TrkBが発現している神経芽腫細胞株[SH-SY5Y/TrkB細胞およびCHP134細胞など]を用いて、すでにスクリーニングされた60個の低分子化合物を処理し細胞数を測定し細胞増殖速度および化合物の半数阻害濃度(IC50)を求める。」に対して、入手可能な低分子化合物37個をSH-SY5Y/TrkB細胞およびCHP134細胞に処理したところ、7個の低分子化合物で顕著に細胞増殖抑制効果が得られた。さらに、IC50は、0.07~4.6μMであることが判明した。 「低分子化合物がどのような細胞シグナル伝達経路を介して、細胞死や細胞分化を誘導するのか解析を行う。」に対しては、SH-SY5Y/TrkB細胞およびCHP134細胞を低分子化合物処理しTUNELアッセイやウエスタンブロット法を行ったところ、p53を介した細胞死であることが示唆された。 「TrkBのBDNFが結合する領域を標的としているため、この領域を介して化合物が効いているのか検討を行う。」に対しては、SY5Y/TrkB細胞を低分子化合物で処理するときに、BDNFを同時に処理し、BDNF存在下、非存在下において、細胞の増殖速度を比較検討したところ、BDNF存在下の方が、細胞増殖抑制速度は遅いことが明らかとなり、TrkBのBDNF結合領域を低分子化合物とBDNFで競合していると考えられた。 「神経芽腫細胞株をマウスに移植し、腫瘍が形成されるか否か検討を行う。」に対しては、CHP134細胞株をスキッドマウスに移植し、形成された腫瘍に対して低分子化合物2種類の抗腫瘍効果を検討した。その結果、化合物投与により腫瘍の形成は抑制された。 以上の解析結果より、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の結果より、抗腫瘍効果の認められた低分子化合物の原子や官能基を一部変換し、より効果的な薬剤を見出すことを目的し、さらに作用機序について解析を行う。 1) 一部変換した低分子化合物が、がん細胞の増殖抑制や分化制御に対してどのような影響を示すか検討する。具体的には、一部変換した低分子化合物を神経芽腫細胞株(SH-SY5Y/TrkB細胞等)に処理し、変換前の低分子化合物と比べて細胞増殖抑制、細胞死等の比較検討を行う。また、半数阻害濃度(IC50)を求める。 2) 一部変換した低分子化合物に生体毒性がないか、マウスを用いた毒性試験を行う。具体的には化合物をマウスに単回強制経口投与および単回静脈内投与し毒性試験と薬物動態を検討する。3種類の濃度で検討を行う。 3) ヒト腫瘍移植マウスモデルに、2)の結果より得られた生体毒性のない低分子化合物を静注あるいは経口投与する。そして、マウスに形成された腫瘍に対して抗腫瘍効果があるか否かを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度、SH-SY5Y/TrkB細胞およびCHP134細胞を低分子化合物処理し、細胞死判定やシグナル伝達経路等の解析のためにTUNELアッセイ法、ウエスタンブロット法を行ったが、その他、WSTアッセイ、FACS解析、RT-PCR法では行っていない。平成25年度は化合物処理による細胞死誘導のメカニズムをより詳細に解析する。さらに、平成24年度の解析結果から薬剤候補となった低分子化合物が2種類あり、その化合物の原子や官能基を一部変換した低分子化合物の培養細胞への影響を検討しその機能解析を行う。 また一部変換した低分子化合物の動物実験では、化合物の生体毒性や薬物動態について解析を行う。さらに、CHP134細胞株をスキッドマウスへ移植し、一部変換した化合物の抗腫瘍効果(形成される腫瘍の形状、大きさの測定)を検討し、組織学的染色等により腫瘍組織の特徴を解析する。 候補となった低分子化合物が他の抗癌剤等に比べてどの程度がん細胞に対して効果があるか検討を行う。 臨床試験への前段階を進める予定である。
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Research Products
(5 results)