2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24592747
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鈴木 昌 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70265916)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 救急不応需 / 救急医療体制 / 救急病院 / 都市問題 / DPC制度 |
Research Abstract |
1)救急不応需と救急搬送件数に関して検討した。救急不応需の発生率は総務省消防庁から都道府県別に公表されている。過度な都市化の進行と単位人口あたりの医療資源の不足とが救急不応需の原因となる2要因と考えられた。いわば需要と供給とのアンバランスが原因といえる。このうち最も大きな原因は過度な都市化の進行であった。都市化の進行がなぜ、救急不応需の原因となるのかについては、各種の都市化の指標(人口構成、産業構成、および治安情勢を含む)が一般外来受診から救急受診へのシフトと相関しており、救急医療増大がいわば都市問題のひとつといえることが判明した。 2)救急病院における入院件数を検討した。単位人口あたりの医療資源の多寡も救急医療体制に影響していると考えられる。厚労省が公表しているDPC資料を基に救急患者の入院診療の実態を調査したところ、ほぼ400ある日本救急医学会救急科専門医指定施設がその救急車入院の半数を占めており、中核的機能を有すると考えられた。一方、小規模病院では入院件数の多くが緊急入院で占められれ、大病院では予定入院で占められていることから、日本救急医学会救急科専門医指定施設のような救急医療を専門に行うことのできる中規模以上の病院では、予定入院によって病床が占有され、緊急入院に病床をさくことができない問題点のあることが判明した。また、空床は病院経営に密着する問題であり、空床を少なくすることは緊急入院を可能にする余地を狭めることになる。したがって、中等症以上の救急患者の搬送先選定困難を発生させることになると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に予定した検討項目は上記のとおり、救急不応需と救急搬送件数の検討であり、これから需要と供給のミスマッチが原因であることを明確化できた。一方、DPC制度に関して公表されている全国の入院医療についての検討では、救急患者が利用可能な空床を確保することが医療経営上のマイナスになるような制度設計がなされていることを明らかにできたことは想定以上の結果であったと考えている。したがって、本研究はおおむね順調に進展している。ただし、これらの成果の学会発表(国際学会での発表を含む)と論文公表が遅れており、これらについて、迅速に行う必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)当該年度に行いきれなかった学会発表と論文公表とを迅速に行う。 2)救急車や救急受診の濫用について検討する。いわゆる「コンビニ受診」についての客観的根拠や指標について検討する。本邦全体で発生する急病や外傷の患者数が毎年ほぼ一定と仮定すれば、一般外来受診患者数と救急外来受診患者数の合計はほぼ一定となるはずである。このような仮説に基づき、一般外来受診患者数と救急外来受診患者数を検討し、いわゆる「コンビニ受診」についての客観的根拠や指標を作成する。 3)病院における救急診療体制について検討する。従来の救急医療体制は初期から第3次にいたる層別化された救急医療機関によって救急患者の診療が行われてきた。救命救急センターをはじめとした第3次救急医療機関では少数の重篤患者を対象とし救命救急医療が施されている。一方、救急診療体制の整わないその他の病院では、内科や外科などの専門医が救急診療を兼任している。一方、近年、すべての救急患者を重症度に関わらず救急医が診療する北米ER型救急診療体制が注目されている。しかし、病院における救急診療体制が地域の救急医療体制に及ぼす影響についての検討は行われていない。そこで、本研究では、北米ER型救急診療体制をとる救急病院ととらない救急病院との比較を行い、地域救急医療体制における病院の救急診療体制の影響を検討する。 4)救急車で搬入された帰宅可能な軽症患者の医療費を調査する。救急患者の診療は人手と様々な医療機器とを使用し、長時間にわたる外来診療を必要とするにも関わらず、収益性が低いといわれる。これについて、他の診療科外来患者との比較を行う。適正な医療収入がなければ救急医療を行う病院の減少に対処できないと考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
成果発表のための学会出席(国際学会を含む)と論文作成に必要な経費に充当する。データ収集のほとんどは、政府等公表データを用いる予定でおり、それについての経費を必要としない。 なお、未使用額の発生は効率的な物品等調達に努めた結果であり、翌年度の消耗品購入に充当予定である。
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Research Products
(10 results)