2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24592747
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鈴木 昌 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70265916)
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Keywords | 救急医療体制 / 救急車 / 救急患者数 |
Research Abstract |
1)救急車の濫用についての検討を行った。救急車の利用は公共サービスとして定着している。しかし、その濫用は必要な公共サービスがその需要増に対して適切な供給が滞るという現象を惹起しうる。そこで、救急隊が扱う最重症の病態、すなわち心肺機能停止患者のresponse time(救急車要請から救急隊が現場に到着するまでの時間)を検討した。本研究は先行研究として東京消防救急隊が扱った5,821件のRTを調査した。平均は8.0±4.2分であった。このresponse timeを時間帯別にみると、深夜には短く日中は長い傾向が認められた。このため、時間ごとの救急要請件数と心肺停止患者のresponse timeの関係を検討すると、response time=1608÷(279-時間あたりの救急隊出場件数)となり、rの2乗は0.83となった。つまり、救急要請が増えるほど救急隊が現場に到着する時間が延長し、重篤患者の生命予後に影響を及ぼしうるとの結果が示された。 2)病院における救急診療体制について検討する。従来の救急医療体制は初期から第3次にいたる層別化された救急医療機関によって救急患者の診療が行われてきた。救命救急センターをはじめとした第3次救急医療機関では少数の重篤患者を対象とし救命救急医療が施されている。一方、救急診療体制の整わないその他の病院では、内科や外科などの専門医が救急診療を兼任している。一方、近年、すべての救急患者を重症度に関わらず救急医が診療する北米ER型救急診療体制が注目されている。しかし、病院における救急診療体制が地域の救急医療体制に及ぼす影響についての検討は行われていない。そこで、本研究では、北米ER型救急診療体制をとる救急病院ととらない救急病院との比較を行うために時間帯別の救急受診患者数の調査を行ったので、その解析を平成26年度に行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の達成はおおむね順調であり、新たな視点での検討を加えることができたので、さらに公共の利益を高める結果になっていると自負する。①救急車の濫用についての検討は、当初、「コンビニ受診」や「不応需」の件数についてを検討することを想定していたが、すでにこれらの件数に関する検討は前年度で方向性を示しており、今年度はさらに進めてこれらがどのように患者転帰に影響するかを検討することができた。したがって、想定以上の結果となっている。②病院における救急診療体制について検討についても、データ収集を終えており、その解析を行うことにしている。解析が今年度中に間に合わなかったものの、次年度早期に終えることができるので、概ね順調な進展と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
①これまでの知見のうち、まだ公表に至っていないデータを早急に公表する。その内容は、1-1)救急車濫用による患者への直接影響について、1-2)救急診療体制と救急受診患者数との関係について、である。 ②前年度と今年度の結果から、医療圏ごとの人口、病院数、医師数を調査して、その地域の救急医療体制のモデルを作成する。 ③本研究は救急不応需の検討が端緒であった。この原因のひとつには救急医療体制が最適化されていないことを検証することがあった。これらは上記①②によって原因探究とその直接的影響を可視化することができると自負している。一方、不応需の原因には医師と救急隊員とのコミュニケーションが影響していると考えるべきである。そこで、救急車搬入患者の受け入れに際して医師はどのようなことを考え、救急隊員は何を伝えるべきかをも考慮する必要があるとの考えに至った。本件について、救急隊と医師との会話の解析を行う予定としたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究では、公的データや他研究等からの流用可能データをもちいた解析を行っているので、研究基礎となるデータ収集に費用が発生していない。すなわち、データ収集と解析に通常必要となる費用や現地調査などの経費が一切発生しなかったため、未使用額が発生した。 この未使用額を最も有効に活用することを考えれば、本研究成果を社会に還元することを最重要視すべきである。よって、研究成果公表の機会を増やし、内外での発表に利用する計画である。
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