2012 Fiscal Year Research-status Report
顎関節滑膜表層細胞層におけるデスミン陽性B型細胞の血管新生への関与
Project/Area Number |
24592760
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
井上 佳世子(野澤佳世子) 新潟大学, 医歯学系, 特任准教授 (90303130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 健康 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40183941)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 顎関節 / 滑膜 / 滑膜表層細胞 / 血管 |
Research Abstract |
顎関節の関節腔を裏打ちする滑膜表層細胞はマクロファージ様A型細胞と線維芽細胞様B型細胞の2種類に大別される.このうち滑液成分を産生するB型細胞の形態は多様性に富み,異なる由来・機能をもつ細胞が混在すると推測されるものの,すべてB型細胞と総称されている.我々はこれまでにラット顎関節滑膜における一部のB型細胞が筋特異的中間径フィラメントであるデスミンを発現することを発見し,この細胞が滑膜表層の血管新生を促す可能性が考えられた.本研究において,今年度は特にデスミン陽性B型細胞の血管周皮細胞マーカーの発現や,滑膜表層の毛細血管網との関係を形態学的に検討した.その結果,デスミン陽性B型細胞にはNG2の他に,新たな血管周皮細胞前駆細胞を標識するPDGFRβの発現が認められた.また,RECA-1抗体を用いて血管内皮細胞を標識したところ,デスミン陽性B型細胞の近傍には多数の毛細血管が存在したことに加え,血管腔を形成しない滑膜表層細胞の一部が血管内皮細胞のマーカーであるRECA-1陽性を示した.そのため本年度の当初の予定にはなかったが,この細胞の本態を探るべく,試料を免疫電顕法に供したところ,A型表層細胞であることが明らかとなった.一般的に,血管新生時には新生端のtip cellと呼ばれる細胞をマクロファージが引き寄せること,また新生端の活性化した周皮細胞が内皮細胞を誘導することから,滑膜表層においてRECA-1陽性A型細胞とデスミン陽性B型細胞が,各々マクロファージと活性化周皮細胞の役割を担い,ともに血管新生に関与している可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫組織化学の結果から,当初の研究計画の優先順位を変更し,次年度の計画であった電顕的免疫細胞化学的検索を一部繰り上げて遂行した.一方,今年度に予定していた計画の1つであるホールマウント標本における機能血管の観察については準備にとどめた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も血管新生時の周皮/内皮細胞の相互作用に関わる分子に着目して,デスミン陽性B型細胞における発現をさらに検索し,その機能を考察するとともに,滑膜表層における生理的血管新生の有無を明らかにする.本年度に続き,8週齢雄性ラットの顎関節滑膜において周皮細胞前駆細胞であると想定したデスミン陽性B型細胞における新たな関連タンパクの局在を免疫組織化学法により検索する.血管内皮細胞の標識には引き続きRECA-1抗体を用いるとともに,RECA-1陽性A型細胞の詳細な形態を免疫電顕法を用いて明らかにする.さらに血管の発芽先端に出現するtip cell の存在を,そのマーカーであるninein抗体を用いて検索する.また,滑膜表層における機能血管の観察を行う.具体的には蛍光標識トマトレクチンを静脈内投与し,5分後に灌流固定して脱灰凍結切片と滑膜および円板のホールマウント標本を作製し,共焦点レーザー顕微鏡にて観察する.RECA-1は血管新生端の機能していない内皮細胞も陽性を示すため,トマトレクチンとの二重標識により血管新生の可能性を探る. 並行してRECA-1陽性細胞と同様に,これまでに発現を見出した分子について,免疫染色を行った切片を樹脂包埋し,超薄切片を透過型電子顕微鏡にて観察する.各々の抗体に免疫陽性反応を示したB型細胞,および周囲の血管内皮細胞についても微細構造学的特徴を明らかにする.ninein陽性tip cellが存在した場合,その微細構造をデスミン陽性B型細胞と比較検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の推進方策に従い,必要な実験動物,試薬等の消耗品類,レーザー顕微鏡および電子顕微鏡撮影によるファイルサイズの大きい画像データ保存・解析用にパーソナルコンピュータを購入する.また,国内外の学会における成果発表,研究打ち合わせの旅費に充てる.前述した通り,次年度の研究計画を一部繰り上げたため,機能血管の観察に用いる予定であった本年度の未使用額を次年度に合わせて使用する.
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