2013 Fiscal Year Research-status Report
顎関節滑膜表層細胞層におけるデスミン陽性B型細胞の血管新生への関与
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24592760
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
井上 佳世子 (野澤 佳世子) 新潟大学, 医歯学系, 特任准教授 (90303130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 健康 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40183941)
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Keywords | 顎関節 / 滑膜 / 滑膜表層細胞 / 血管 |
Research Abstract |
顎関節の関節腔を裏打ちする滑膜表層細胞はマクロファージ様A型細胞と線維芽細胞様B型細胞の2種類に大別される.このうち滑液成分を産生するB型細胞の形態は多様性に富み,異なる由来・機能をもつ細胞が混在すると推測されるものの,すべてB型細胞と総称されている.我々はこれまでにラット顎関節滑膜における一部のB型細胞が筋特異的中間径フィラメントであるデスミンを発現することを発見し,昨年度の研究により,この細胞が血管周皮細胞前駆細胞を標識するマーカーに陽性を示すこと,またその近傍の血管内皮細胞マーカー陽性の細胞がA型細胞であることを明らかにし,それらが滑膜表層の血管新生を促している可能性が考えられた.今年度はホールマウント作製に必要な強い光源(ファイバーオプティックライトソース;アズワン株式会社)を購入したことにより,滑膜表層における機能血管の観察が可能となった.蛍光標識トマトレクチンを成熟ラットに麻酔下にて静脈内投与し,5分後に灌流固定して脱灰凍結切片と滑膜および円板のホールマウント標本を作製し,共焦点レーザー顕微鏡にて観察した.血管腔形成に先立って血管新生端に発芽する内皮細胞も陽性を示すRECA-1と,血流のある機能血管の内皮細胞を標識するトマトレクチンとの二重標識により,滑膜表層の血管腔の断端にRECA-1のみ陽性を示す細胞が観察された.つまり正常な成熟ラットにおいても,その滑膜に血管新生が生じている可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度に予定していた血管の発芽先端に出現するtip cell の存在は,マーカーであるnineinやCXCR4抗体を用いて検索したが,今のところ確認されていない.しかしながら他の結果からtip cellの存在は強く示唆されるため,今年度も引き続き検索し,市販抗体に加えて抗体作製することも考慮する.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に継続して,血管新生時の周皮/内皮細胞の相互作用に関わる分子に着目したデスミン陽性B型細胞における発現をさらに検索し,その機能を考察するとともに,滑膜表層における生理的血管新生の有無をさらに明確にする.8週齢雄性ラットの顎関節滑膜において周皮細胞前駆細胞であると想定したデスミン陽性B型細胞における新たな関連タンパクの局在を免疫組織化学法により検索する.前述した血管の発芽先端に出現するtip cell の存在も引き続き検索する.tip cellが存在した場合,その微細構造をデスミン陽性B型細胞と比較検討する.また,滑膜表層におけるトマトレクチンを用いた機能血管の観察も引き続き行う. 並行して,発生過程の滑膜を対象として同様の実験を行う.我々のこれまでの研究で,ラットでは胎生21日目にHsp25陽性B型細胞が滑膜表層に出現することが明らかとなっているので,胎生19日から経日的に顎関節組織を採取し,滑膜における機能血管の発育観察,タンパク量の変化等の解析を行い,デスミン陽性B型細胞の出現と血管形成との関係を検討する. 3年度にわたる研究結果をもとに,滑膜表層における血管新生の有無,またデスミン陽性B型細胞のそれに関わる機能を考察する.これにより,線維芽細胞様B型細胞と総称される細胞を細胞生物学的に細分類する.これらの成果は平成26年9月の歯科基礎医学会および平成27年3月に米国ボストンで開催予定の国際歯学研究学会(IADR)で成果発表するとともに,論文投稿する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度,研究室の移転等の関係で,使用することができなくなった旅費が生じた.次年度には予定の使用計画で予算を執行可能である. 前述した推進方策に従い,必要な実験動物,試薬等の消耗品類を購入する.また,国内外の学会における成果発表の旅費に充てる.
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