2012 Fiscal Year Research-status Report
酸味・塩味受容細胞の味蕾内情報伝達系と分化制御機構の解明
Project/Area Number |
24592774
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
瀬田 祐司 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (90291616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊島 邦昭 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (10112559)
豊野 孝 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (10311929)
小野 堅太郎 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (40316154)
片岡 真司 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (80364149)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 味蕾 / 転写制御因子 / Mash1 / 発生・分化 / セロトニン / GABA |
Research Abstract |
我々はこれまでにbHLH型転写因子のMash1が味蕾の3型細胞において、セロトニンおよびGABAの合成酵素の発現に必須であることを明らかにしてきた。本研究では、酸味・塩味の受容を行っているマウス味蕾の3型細胞がもつ生物学的特性の解明を目的として、3型細胞が合成しているセロトニンならびにGABAの味蕾での機能の解析と味蕾細胞(特に3型細胞)の分化に関与する転写因子の探索を行う。 今年度は味蕾におけるセロトニン・GABA受容体のサブタイプの発現検索と味細胞の分化に関わる転写因子の検索を目的として、 RT-PCRならびにPCR-arrayを行った。PCR-arrayの結果、有郭乳頭上皮にはセロトニン受容体の中で5HT1bとGABA受容体の中でGABAA受容体γサブニットの発現が確認された。味蕾内でGABAA受容体γサブニットと味細胞のマーカーとの2重染色を用いて検索すると、味蕾におけるGABAA受容体γサブニット発現細胞は2型細胞のマーカーのgustducinと3型細胞のマーカーのGAD67をともに発現し、GABAA受容体γサブニット発現細胞は味蕾の2型細胞と3型細胞であることが確認された。このことから3型細胞によって産生されたGABAは味蕾内で、味細胞(2型・3型細胞)に働き、味覚情報伝達に何らかの機能を演じていることが推測された。マウスの有郭乳頭上皮と味蕾を含まない舌上皮、さらにMash1 KOマウスからそれぞれmRNAを抽出し、PCR-array法で神経細胞の分化関連する転写因子の発現を検索した。その結果、Mash1の他にNGN2とMath2の発現が舌上皮に比べて約10倍の発現が認められた。現在、NGN2とMath2のプローブを作製して、これらの転写制御因子が味蕾でどの細胞型に発現しているのかついて検索を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画していたセロトニン受容体・GABA受容体の検索・PCR-array による検索で結果を得られることができ、期間中の実験計画はほぼ目的を達成できたと思われる。現在、セロトニン受容体の発現量の比較をrealtime-PCRで検索中であり、味蕾に特異的に発現しているセロトニン受容体のサブタイプの検出が可能になると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.味蕾のおけるセロトニン・GABA受容体の発現の検索 ①前年度に引き続き、その他のセロトニン受容体・GABA受容体のサブタイプの発現をRT-PCR法で検索する。②①において味蕾で発現が認められたセロトニン・GABA受容体の味蕾における局在をin situ Hybridization、免疫染色を用いて検索する。特に発現が認められた受容体が、味蕾のどの細胞型に発現しているのかを各細胞型のマーカー(gustducin, PGP9.5, NCAM, serotoninなど)との2重染色により確認する。 2.味蕾細胞の分化に関わる転写制御因子の検索と機能解明 ①前年度に引き続き、PCR-arrayを用いて味蕾細胞の分化に関係する転写因子の検索を行う。 ②転写因子の発現ベクターの作製:これまでに発現が認められた転写因子の中で、発現ベクターが存在すれば供与を依頼、存在しなければ発現ベクターを作製する。 ③初代培養舌上皮細胞を用いた転写因子の機能検索:作製した発現ベクターを用いて初代培養舌上皮細胞に転写因子を強制発現させる。転写因子を強制発現させた上皮細胞と舌咽神経節から単離した神経細胞を共培養し、上皮細胞と神経細胞間で神経回路の形成がin vitro条件下において再現できるか検索する。舌咽神経との共培養により、上皮細胞に味細胞のマーカーや味受容体の発現が誘導されるか検索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究に関しては現有施設で十分対応できる。本研究では、経費として実験動物・遺伝子解析のための試薬・培養ディッシュなどのプラスチック器具などの消耗品費、学会での成果発表のための国内旅費を計上している。本年度では昨年度に引き続きMash1ノックアウトマウスの解析とマウスの舌上皮からの遺伝子発現解析を計画しているので、消耗品として実験動物(マウス20頭)、PCR-array、RT-PCRなどに用いる酵素類・形態観察に用いる抗体などの試薬、チューブなどのプラスチック器具を購入する。さらに、初代培養舌上皮を使用した遺伝子発現実験を計画しているので、消耗品として実験動物(マウス40頭)、培養用の培地・遺伝子導入用の試薬・発現ベクター作製のための試薬、培養ディッシュなどのプラスチック器具を購入する予定である。発現ベクターの導入効率が悪い時は、設備備品として遺伝子導入装置の購入を考えている。
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Research Products
(8 results)