2012 Fiscal Year Research-status Report
Dドーパクロムトートメラーゼが関わるインスリン抵抗性発症機序の多角的研究
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24592799
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
岩田 武男 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (10350399)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉本 勝彦 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (90201863)
水澤 典子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (80254746)
石本 恭子 徳島大学, 大学病院, 助教 (60579952)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 肥満 / インスリン抵抗性 / アディポカイン / D-dopachrome tautomerase / VEGF / sereno binding protein / 脂肪組織 / 肝臓 |
Research Abstract |
脂肪細胞から分泌されるD-dopachrome tautomerase(DDT)の組換え蛋白質を肥満マウスに投与するとインスリン抵抗性の改善が認められる。そのインスリン抵抗性改善機序を明らかにするために、脂肪細胞特異的にDDTを過剰発現する遺伝子改変マウス(TGマウス)を3系統作製し、それらの系統の繁殖及び、表現形の観察を行なっている。通常食で飼育したTGマウスでは体重、空腹時血糖値、耐糖能、血清中中性脂肪濃度に野生型との間に差異は認められなかった。一方、高脂肪食を与え、肥満誘導を行ったTGマウスでは対象マウスと比較検討では、体重には差異が認められなかったが、TGマウスで空腹時血糖値の上昇抑制が認められ、さらにグルコース負荷試験、インスリン負荷試験の結果より耐糖能の低下の抑制が認められた。これらの結果より脂肪細胞でのDDTは肥満により誘導されるインスリン抵抗性を抑制する作用があることが確認された。またマイクロアレイ解析とリアルタイムRT-PCR解析によりDDT発現抑制脂肪細胞と対照細胞間で発現変動する遺伝子の探索を行い、DDT発現抑制脂肪細胞で血管内皮成長因子(VEGF)の発現が低いこと、セレノ結合タンパク質(SEPP-1)の発現が高いことを見出した。さらに高脂肪食を与えたTGマウスの脂肪組織ではVEGFの発現上昇・SEPP-1の発現減少が、肝臓ではVEGFの発現減少及びSEPP-1の発現上昇がそれぞれ認められた。脂肪組織でのVEGF発現低下や肝臓でのSEPP-1発現上昇が全身性のインスリン抵抗性の発症を惹起することが近年報告されており、脂肪組織及び肝臓において、これらの因子の発現がDDTにより調節されている可能性があり、そのことがDDTによるインスリン抵抗性改善機序に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂肪組織特異的にD-dopachrome tautomerase (DDT) を発現するマウス(TGマウス)を作製し、実験に必要な数まで繁殖させることができた。そのTGマウスを用いた研究で、組換えDDT投与した肥満マウスの研究と同様に肥満によるインスリン抵抗性発症抑制作用を確認することで、DDTの抗肥満作用を確たるものとすることができた。またDDTのインスリン抵抗性改善機序に関わる候補因子を同定できたため、今後の研究方針に確たる道筋をつけることができたと考えている。これらの点を考慮して本研究は概ね順調に推移していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
D-dopachrome tautomerase(DDT)のインスリン抵抗性改善機序解明に向けてさらなる検討を行う。具体的には、1)前駆脂肪細胞、分化脂肪細胞、肝細胞の細胞株に組換えDDTを作用させた際の関連因子候補VEGF-A、SEPP-1の発現変動を検討する。2)脂肪組織特異的DDT高発現マウス(TGマウス)でのインスリン抵抗性抑制機序におけるVEGFの関与ついて、脂肪組織及び肝臓での血管新生評価を行う。3)TGマウスにVEGF―A、SEPP-1抗体を投与した際にインスリン抵抗性の抑制が阻害されるか否か検討する。これらの因子のDDT抵抗性改善機序が明らかになれば、DDTによるこれらの因子の発現調節機序についても検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物の繁殖・維持が効率よく行えたこと、既存の実験設備・器具を使用できたことから、研究費の次年度への繰越が生じた。次年度の研究費と合わせて、遺伝子解析陽子役、蛋白質解析用試薬、免疫染色用試薬等の消耗品購入費や、学内共同利用施設に設置されている機器・動物施設を使用するための機器使用料、施設料、学会での成果発表のための旅費、外国語論文の校閲、論文投稿料を予定している。
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Research Products
(1 results)