2013 Fiscal Year Research-status Report
Dドーパクロムトートメラーゼが関わるインスリン抵抗性発症機序の多角的研究
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24592799
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
岩田 武男 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (10350399)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉本 勝彦 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (90201863)
水澤 典子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (80254746)
石本 恭子 徳島大学, 大学病院, 助教 (60579952)
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Keywords | アディポカイン / 肥満 / インスリン抵抗性 / 脂肪細胞 |
Research Abstract |
脂肪細胞から分泌されるD-dopachrome tautomerase(DDT)の組換え蛋白質を肥満マウスに投与するとインスリン抵抗性の改善が認められる。これまでにDDTは脂肪組織に作用し、1)cAMP-activated protein kinase (AMPK) を介する脂質代謝を抑制すること、2)インスリン抵抗性惹起因子である脂肪酸結合タンパク質aP2やセレノプロテインPの発現を抑制すること、3)インスリン抵抗性を改善することが報告されている血管増殖因子VEGF-AとIL-6の発現を高めることが確認されており、これらがDDTのインスリン抵抗性改善機序に寄与する可能性が考えられた。 脂肪細胞特異的にDDTを過剰発現する遺伝子改変マウス(TGマウス)では高脂肪食を摂取させた際にインスリン抵抗性の改善傾向が認められたが、体重には差異が認められなかった。またヒト前駆脂肪細胞株SGBSにDDTを作用させると脂肪脂肪への分化抑制能を示すが、マウス前駆脂肪細胞株3T3L1では認められなかった。最近、糖質コルチコイド依存性のLMO3遺伝子発現がヒト特異的に脂肪細胞への分化を促進させる報告がなされたため、SGBS細胞でのDDTがLMO3発現に及ぼす影響を検討した。DDTを作用させたSGBS細胞では糖質コルチコイドによるLMO3発現誘導が阻害されたことから、DDTはLMO3を介して脂肪細胞への分化を抑制すること、DDTの脂肪細胞分化抑制作用はヒト特異的である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂肪組織特異的にD-dopachrome tautomerase (DDT) を発現するマウス(TGマウス)を作製し、表現形の解析を行ったところ、DDTのインスリン抵抗性改善作用の再現性の確認と、その機序に関わる分子を幾つか絞り込むことができた。さらにヒトでは脂肪量とDDT発現量には負の相関があるが、TGマウスでは体重、脂肪量には野生型と差がないことから、ヒトとマウスでのDDTの作用に差異がある可能性を新たに見出した。さらに細胞株を用いた検討により、DDTの脂肪細胞分化抑制作用はヒト特異的であること、DDTはヒト特異的に脂肪分化に関与するLMO3の糖質コルチコイド依存性の発現を阻害することを見出したことは、この仮説を裏付けるものであり、今後の研究方針に確たる道筋をつけることができたと考えている。これらの点を考慮して本研究は概ね順調に推移していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
D-dopachrome tautomerase(DDT)のインスリン抵抗性改善機序と脂肪分化抑制機序の解明に向けてさらなる検討を行う。1)DDTのVEGFA発現促進機序を各シグナル分子阻害剤やsiRNA発現抑制系を用いて検討する。同様にaP2、SEPP1の発現抑制機序を検討する。2)DDTのLMO発現抑制の作用点についての検討を行う。3)TGマウスと肥満モデルマウス(db/dbマウスやob/obマウス)を掛けあわせ、インスリン抵抗性発症の有無を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物の繁殖・維持が効率よく行えたこと、既存の実験設備・器具を使用でき、効率よく実験が行えたことから、研究費の次年度への繰越が生じた。 遺伝子解析陽子役、蛋白質解析用試薬、免疫染色用試薬等の消耗品購入費や、学内共同利用施設に設置されている機器・動物施設を使用するための機器使用料、施設料、学会での成果発表のための旅費、外国語論文の校閲、論文投稿料を予定している。
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Research Products
(2 results)