2012 Fiscal Year Research-status Report
歯周パラ・インフラメーションから脳をまもる髄膜―グリア防御システム破綻の解明
Project/Area Number |
24592802
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
武 洲 九州大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (10420598)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 博 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (20155774)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | パラインフラメーション / 脳炎症 / ミクログリア |
Research Abstract |
本研究課題の今年度の実施結果を下記の通り報告する。まず、マウスにPorphyromonas gingivalis(PG, 1x109CFU/ml)を局所投与することにより歯周病を惹起させ、マイクロCT解析により下顎歯槽骨の破壊ならびに歯周組織におけるIL-1β、TNF-αなどの発現が認められる歯周病モデルを確立した。次に、歯周病モデルの安定性は未だ十分と言えないが(20 %程度の発症率)、歯槽骨破壊が確認されたマウスのみを用い、脳炎症反応に関する経時的解析を行った。歯周病マウスから大脳皮質ならびに海馬の可溶分画を回収し、ウエスタンブロット法により炎症性因子の経時的な発現変化の検討を行った結果、歯周病罹患に伴って大脳皮質ならびに海馬におけるIL-1β、TNF-αならびにIL-6の発現が増大することが明らかとなった。さらに、大脳皮質ならびに海馬凍結切片を調製し、免疫組織化学的手法により脳内におけるIL-1β産生細胞の同定を行った結果、IL-1βなどの炎症性メディエーターの主な産生細胞はミクログリアであることが明らかになった。記憶の細胞レベルでの基盤と考えられている海馬LTPに関する解析に関して、歯周病マウスの発症率が現時点では低いため、先行実験としてアジュバント関節炎モデルラットにおいて若齢ならびに中年における海馬LTP形成の比較を行った。その結果、中年ラットではアジュバント関節炎に伴う海馬LTPの有意な低下が認められた。これらの研究成果はNeuroscience誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度実施した計画の達成度は下記の通りである。(1)歯周病モデルの作製に関して、マイクロCT解析により下顎歯槽骨の破壊ならび歯周組織におけるIL-1β、TNF-αなどの発現が認められる病態モデルを確立できた。その発症率は20 %とやや低いが、歯槽骨破壊が確認されたマウスのみを用い、末梢組織ならびに脳炎症反応に関する解析を行った。(2)末梢組織の炎症性メディエーターの動態解析関しては、ウエスタンブロット法により歯周病マウスの末梢血、肝臓におけるIL-1βならびにCOX-2の増加が認められたことから、解析目標を90%以上達成した。(3)歯周病マウスの脳炎症反応に関する解析に関しては、歯周病に伴って大脳皮質ならびに海馬におけるIL-1β、TNF-αならびにIL-6の発現増大が明らかとなり、さらに、大脳皮質ならびに海馬凍結切片を調製し、免疫組織学解析より脳内におけるIL-1β産生細胞の同定を行った結果、IL-1βなどの炎症性メディエーターの主な産生細胞はミクログリアであることが明らかになった。解析目標を90%以上達成した。(4)記憶の細胞レベルでの基盤と考えられている海馬LTPに対する歯周病の影響を解析する計画に関しては、今年度では歯周病マウスの発症率は現時点では少ないため、先行実験としてアジュバント関節炎モデルラットにおいて若齢ならびに中年における海馬LTP形成の比較を行った。その結果、中年ラットではアジュバント関節炎に伴う海馬LTPの有意な低下が認められた。これらの研究成果はNeuroscience誌に掲載された。よって、今年度では計画していた解析の大半が実施できており、70%以上の達成率である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に達成していない項目を検討し、次年度の推進方策を下記の通りに立てた。まず、歯周病の発症率を向上させる検討を継続的に行い、歯周病ならびにメタボマウスにおけるミクログリア機能の解析を同時に行う。また、ミクログリア機能の解析を円滑に進めるため、クロモグラニンA(CGA)刺激したミクログリアによるIL-1β産生に関与する細胞内シグナルに焦点を当てたIn vitro解析と、歯周病モデルマウスおよびメタボマウス脳からMACS法により単離したミクログリアの増殖能、遊走性ならびに炎症性メディエーター産生能に着目したIn vivoの解析を平行して効率よく行う。 具体的には(1)歯周病の発症率を向上させる検討を継続的に行い、さらにメタボモデルマウスを作製する。実験に応じて必要な動物数を増やす。(2)記憶の細胞レベルでの基盤と考えられている海馬LTPに対する歯周病、メタボの影響に関する解析を行う。(3)メタボマウスの脳炎症反応に関する解析を行う。大脳皮質ならびに海馬の可溶分画を回収し、ウエスタンブロット法により炎症性因子の経時的な発現変化の検討を行い、さらに大脳皮質ならびに海馬凍結切片を調製し、免疫組織化学的手法により脳内におけるIL-1β産生細胞の同定を行う。(4)歯周病ならびにメタボマウスにおけるミクログリア機能に関する解析を行う。In vitro解析では、CGA刺激したミクログリアのIL-1β産生に関与する細胞内シグナルに焦点を当てた解析を行い、In vivo解析として、歯周病、メタボマウス脳からMACS法により単離したミクログリアの増殖能、遊走性ならびに炎症性メディエーター産生能を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度では、(1)歯周病の発症率を向上させる検討を継続的に行い、メタボモデルマウスを作製する。(2)海馬LTPに対する歯周病、メタボの影響に関する解析を行う。(3)メタボマウスの脳炎症反応に関する解析を行う。(4)歯周病ならびにメタボマウスにおけるミクログリア機能に関する解析を行う。 そのため、消耗品、旅費ならびに謝金の金額は以下のように概算した。 実験動物: ¥200,000(動物平均単価 5,000 x 40匹 = 200,000)、試 薬:¥300,000(薬品平均単価 5,000 x12 = 60,000、抗体平均単価60,000 x 4 = 240,000)、謝金:¥ 300,000 (実験補助、動物飼育など 1200/時間 x25時間x10ヵ月)、旅費:¥200,000(外国での成果発表1回 200,000 x 1 = 200,000)、その他:¥200,000 (掲載論文英文校正、別刷代など、200,000 x1= 200,000)
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