2013 Fiscal Year Research-status Report
骨代謝制御における未知の分子基盤を解き明かす新規分子の機能解明
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24592804
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松田 美穂 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40291520)
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Keywords | 骨芽細胞 / 破骨細胞 / BMP / MCSF / 骨代謝 |
Research Abstract |
骨代謝制御における新規分子PRIPの機能解析を通して未知の分子基盤を明らかにすることを目的として、今年度は「PRIPが及ぼす骨芽細胞、破骨細胞分化への影響とそのメカニズム」について解析を行った。 骨芽細胞について、野生型、PRIP遺伝子欠損(PRIP-KO)マウスの頭蓋骨から調製した骨芽細胞前駆細胞を用いて前年度に引き続きBMPシグナリングの解析を進めた。PRIP-KO において、BMP刺激によるSmad1/5/8のリン酸化状態の持続が見られたため、その脱リン酸化や他の関連分子のリン酸化や転写活性について検討した。その結果、リン酸化Smad1/5/8の脱リン酸化程度に違いはなく、BMP刺激による転写活性はPRIP-KOでより上昇したが、Smad4や6など他の細胞内分子の発現量やリン酸化程度に差は見られなかった。Wnt刺激による骨芽細胞分化においても両者に有意差はなかった。以上より、PRIP-KOにおける骨芽細胞分化の亢進は、PRIP欠損によりBMPを授受するBMP受容体の機能に何らかの変化を来たしているものと考えられた。 野生型、PRIP-KOマウスの大腿骨から調製した骨髄細胞を用いて、破骨細胞分化に関わる受容体分子の発現を、リアルタイムPCR、ウエスタンブロッティング、FACS等にて検討した。すると、野生型に比べPRIP-KOにおいて、RANKLの受容体であるRANKの発現が減少しWnt5aの受容体であるRor2の発現が増加していた。この変化は、mRNAレベルでも同様に観察されたので、PRIPがこれらの受容体の遺伝子発現に関わるシグナリングに関与することが示唆された。特に、RANKの発現量低下はRANKL刺激以前のMCSFのみの刺激でも観察され、RANKL刺激後にできた破骨細胞数もPRIP-KOで少ないので、破骨細胞分化初期の情報伝達制御にPRIPが関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の結果を踏まえて今年度は、より分子レベルでのメカニズムの解明にせまったが、マウス個体から調製した初代培養を用いた実験系では安定しない結果が得られ、再現性を取ることに時間を要することが時々あった。また、骨芽細胞分化におけるPRIPの機能については、BMP受容体の機能調節に関与するであろうところまで絞り込めたが、BMP受容体を検出できるよい抗体がなく、リン酸化セリン・スレオニン抗体や受容体に結合する分子の抗体による免疫沈降やphos-tagを用いたりと、BMP受容体やそのリン酸化を示すのに様々な方向からトライしたがなかなかうまくいかず、かなり苦戦していたこともあったが、マウスがコンスタントに産まれ、初代培養用細胞の調製に不便が生じなかったので、おおむね予定通りに進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.破骨細胞分化初期の細胞内情報伝達機構におけるPRIPの役割・・・これまでの結果から、PRIPが破骨細胞分化初期の情報伝達に関わることが示唆されたので、MCSFの受容体であるc-fmsやその下流のSrcやGrb2、Akt、Erkなど関連分子の発現量やリン酸化程度を解析し、インヒビターによる情報伝達抑制やリコンビナントPRIPの遺伝子導入実験などを通して、どこにPRIPが作用しているかを明らかにする。 2.骨吸収機能及びその機能活性化に重要な接着への影響・・・PRIP-KO由来の破骨細胞はアクチンリングの形成が不十分なので、破骨細胞の接着について、インテグリン、Rho、Cdc42、 WASP、PIP2、種々のアクチン結合分子等の発現量や局在をウエスタンブロッティングやリアルタイムPCR、免疫染色等の手法を用いて検討する。また、これらの分子が関与するシグナリングについても、PRIPの関与の有無を分子生物学的手法にて解析する。また、骨吸収機能として重要なカテプシンK やプロトンポンプ等についても同様にPRIP欠損による影響を解析し、上述の接着機構の解析で得られた結果と合わせて骨吸収機能の活性化へのPRIPの関与を追究する。 3.骨芽細胞分化制御におけるPRIPの機能・・・PRIPがBMP受容体の機能制御に関与することが予想されたので、Smad6、7など受容体に作用する分子の発現量や結合量などを野生型とPRIP-KOマウスについて初代培養を用いて比較検討する。BMPシグナルの開始においてSmad6のアルギニンのメチル化の重要性が報告されているので、メチル化とBMPシグナルの進行とのバランスについても検討する。PRIPが、Smad6またはBMP受容体と直接あるいは間接的に作用する可能性もあるので、免疫沈降等で検討しPRIPの作用点を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
骨密度等の計測を委託で出す予定だったのが、本学の共同施設にマイクロCT機器が導入されたため費用が抑えられたことや購入予定だった抗体が欠品だったことなどから次年度に繰り越せる金額が生じた。 ・設備備品費: 本研究において使用する機器・設備は、研究室所有或いは共有の備品として現有しているので経費はかからない。 ・消耗品費: 薬品類、培養用血清等の消耗品費に大部分の費用を割く。特に今年度の結果から、これまで検討予定になかった関連分子についても新たに解析を行うので、新たな各分子のリン酸化抗体、非リン酸化抗体や、MCSFやWntなどのELISA キットも購入する予定であり、そこに次年度使用額を当てる。(培養細胞用培地 500円x10-15本、血清30,000円x1-2本、各種ホルモンアッセ イキット100,000円x4~6、市販の抗体 50,000円x8-10 他) ・ 旅費: 関連分野の国内外での学会参加および成果発表のための旅費を計上する。・ その他: 論文校閲費や資料送付費、動物飼育委託費は、従前の支出実績に基づいて計上する。
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