Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根本 優子 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (10164667)
伊藤 潔 九州保健福祉大学, 薬学部, 教授 (50201926)
馬場 友巳 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60189727)
小早川 健 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教務職員 (10153587)
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Research Abstract |
歯周病原性細菌であるPorphyromonas gingivalis (Pg)は糖非発酵性で,アミノ酸を炭素源およびエネルギー源とする。菌体外でのアミノ酸代謝に係わる酵素として従来,ジンジパインとジペプチジルペプチダーゼ(DPP)IVとDPP7が知られる。最近,我々は新規のDPP11を発見したが,さらにゲノム解析からDPPIII, Ala-DPP, DPPVの存在が示唆された。本研究ではこれらによるPgの菌体外ペプチド代謝系を明らかにすることを目的として,全てのDPPを組換え体として発現し,それらの基質特異性とDPP遺伝子破壊菌株でのペプチダーゼ活性を比較検討した。 【結果】組換えDPPIII,DPPIV,DPP7,DPP11は,それぞれArg,Pro,疎水性アミノ酸,酸性アミノ酸を認識しジペプチドを産生したが,Ala-DPPには活性は認めなかった。DPP7では新たにP2位置の疎水性アミノ酸選択性が明らかになり,その場合P1部位に疎水性アミノ酸がない場合でも切断が可能になることが判明した(1)。この性質はPgの分解レパートリーに寄与していた。DPP11遺伝子破壊株ではAsp/Glu|-X結合を切断する活性が消失し,主要代謝アミノ酸であるAsp,Gluを含むジペプチド産生におけるDPP11の重要性が明らかになった。DPPIV-7-11 三重遺伝子破壊株は主だったDPP活性を消失したが, ML-, KA-, GF-, SY-MCA分解活性の一部が残った。その活性は,DPPVの活性に酷似し,実際PgのDPPV遺伝子破壊によってほぼ消失した。 【結論】Pgでは,DPPIV, DPPV, DPP7, DPP11の4種のDPPが主要なジペプチド産生を担っていることが明らかとなった。(1) Rouf SMA., et al., Biochimie 95, 824-832 (2012)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は我々が新規に発見したDPP11を中心に解析を進めていたが,その後DPP7の新規のP2部位基質特異性を発見し,P. gingivalisにおけるジペプチド産生機構の一端を明らかにすることができた。 さらに現在では第4のDPPであるDPPVの存在を認め,DPPVとDPP7によるレパートリーの機能的補完関係も明らかにしつつある。予備実験の結果,我々はすでにP. gingivalisにおいて発現しているすべてのDPPを捉えたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までにとらえた4種類すべてのDPPをノックアウトしたP. gingivalis株を作成してその性質を検討する。特に残存活性に注目し,その活性を担うペプチダーゼを同定する。一方で,4DPPをノックアウトすることで逆に一部のペプチダーゼ活性が逆に増加する可能性も検討する。そのようなペプチダーゼはP. gingivalisの生存に重要な酵素と誘導システムだと考えられるためである。 DPP7とDPP11はそのアミノ酸配列が類似しており、そのためともにS46ファミリーに分類される。しかしながらそのP1位置のアミノ酸選択性は全く異なっている。この機構や分子の進化過程を明らかにするために,まったく異なる親水性アミノ酸を好む人工DPPを作成する。現在DPP7遺伝子を元に変異体を構築することで可能になると考えている。 DPPV, DPP7, DPP11の立体構造の解析を進める。分担研究者伊藤潔以外にも、最近,Djinovicグループ(Max F. Perutz Laboratories, オーストリア)とも本研究において共同研究を開始している。
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