2013 Fiscal Year Research-status Report
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24592809
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
根本 孝幸 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90164665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根本 優子 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (10164667)
伊藤 潔 九州保健福祉大学, 薬学部, 教授 (50201926)
馬場 友巳 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60189727)
小早川 健 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教務職員 (10153587)
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Keywords | 歯周病 / ペプチダーゼ / 基質特異性 / ジペプチジルププチダーゼ / オリゴペプチダーゼ |
Research Abstract |
歯周病原性細菌Porphyromonas gingivalisは糖非発酵性で、アミノ酸を炭素原およびエネルギー原としている。 従来、細胞外ペプチド分解の最終過程であるオリゴペプチドをジペプチドとする酵素(DPP)としてDPP4と DPP7が知られていたが,本研究開始前に全く基質特異性を異にするDPP11を私たちは見いだした。そのため平成25年度はさらなる酵素の存在する可能性に関して検討した。その結果,本菌の生育に寄与するに種類のS9ファミリーペプチダーゼが新たに2種類見いだすことができた。 ひとつはP1位置に疎水性アミノ酸を有するペプチドよりジペプチドを遊離するDPPであり、種々の検討からこれまでカビなど一部の真核生物に存在するとされていたDPP5と結論された。もうひとつはDPP4-5-7-11遺伝子を同時破壊しても残存するMet-Leu-MCA分解を担うS9ファミリー遺伝子であったが,実際にはDPPではなく、オリゴペプチダーゼ活性を有していた。S9ファミリーではこれまで塩基性アミノ酸を基質とするためオリゴペプチダーゼBと命名された遺伝子はあるものの疎水性アミノ酸を基質とするペプチダーゼの存在は報告されていないので新規の酵素の可能性がある。 従来DPP7のみで構成されていたS46ファミリーペプチダーゼの中に,基質特異性の異なるDPP11の存在を見いだした結果,S46ファミリー内の2DPPの分類が混乱をきたしていた。具体的には全体のアミノ酸配列による分類ではDPP7とDPP11が複雑に入り組み, あたかも分子進化の過程でDPP7とDPP11が独立に何度も出現したようにみえた。しかし,酵素活性と基質特異性に必須のC末側の1/3のドメインのみを比較することで両者がきれいに二分され,DPP7とDPP11が分子進化上一度のイベントで生じたことを示唆していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究申請時点では、われわれが2011に報告したDPP11を含めても本菌には3つのDPPしか同定されていなかった。 しかし,現在ではさらにひとつのDPP(DPP5)と新規の特異性を有すると思われるオリゴペプチダーゼを見いだすことができた。さらにDPP7においてはP2位置の基質特異性を明らかにすることで,新規に見いだしたDPP5との基質特異性の差から担当基質の違いも明らかにすることができた。 これらの機能遺伝子の発見が,もし他の菌に見いだされたペプチダーゼを,単に歯周病原性細菌P. gingivalisにも見いだしたというものであれば,本研究の進展速度はやや遅いと判断されるかもしれない。しかし,本研究では他のすべての細菌や真核生物でまだ見いだされていなかった機能未知遺伝子を初めて明らかにしたものである。その意味で,本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず第一に新たに見いだしたオリゴペプチダーゼの性質の決定をさらに進める予定である。われわれは従来知られているDPPのみでは分解が不可能なペプチド基質配列が存在するため,P. gingivalis菌のペプチド代謝がきわめて非効率的なものになってしまうと考え,その矛盾を解消するペプチダーゼ遺伝子を探索してきた。今回DPPではないこのオリゴペプチダーゼが見いだされたことで,この矛盾が一気に解消される可能性がある。実際に種々の生理活性ペプチドを用いて,リコンビナントDPP4-5-7-11と新規オリゴペプチダーゼを加えた系で基質ペプチドの分解効率を決定する予定である。 これらのペプチダーゼが本菌の細胞外基質ペプチド代謝の関わるすべての分子かどうかは不明だが,それでもかなり出そろってきたと思われるので,これらの中に,本菌が歯周病と深く関わっている現象を直接リンクさせるペプチダーゼが存在する可能性についてin vitroあるいはマウスモデル系を用いて検討する。具体的にはリコンビナント酵素群を,最初は試験管内でインスリンを誘導する小腸ホルモンであるインクレチン(GLP-1)を分解して不活性化可能かどうかを決定する。ついで,酵素をマウスの腹腔に注射して、インクレチン、インシュリン濃度,血糖値の変化をモニターすることで、これらの酵素が糖尿病と直接関わっているかどうかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
P. gingivalis菌での2種類の新規ペプチダーゼ遺伝子の発見があったためにその機能解析に力を注いだ。そのためより費用のかかるDPPと糖尿病の関係を明らかにするためのマウス実験が開始できなかったために,結果的に使用金額が押さえられることとなった。 次年度にマウス実験を開始するために当初計画の見込み通り全額を使用する予定である。
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[Journal Article] Identification and characterization of prokaryotic dipeptidyl-peptidase 5 from Porphyromonas gingivalis.2014
Author(s)
Ohara-Nemoto Y, Rouf SMA, Naito M, Yanase A, Tetsuo F, Ono T, Kobayakawa T, Shimoyama Y, Kimura S, Nakayama K, Saiki K, Konishi K, Nemoto TK.
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Journal Title
J. Biol. Chem.
Volume: 289
Pages: 5438-5448
DOI
Peer Reviewed
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