2013 Fiscal Year Research-status Report
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24592818
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
近藤 真啓 日本大学, 歯学部, 講師 (50312294)
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Keywords | 神経回路 / 感覚 |
Research Abstract |
感覚の質に特異的な神経回路の可視化およびその細胞群の摂食行動への関与について解明することを目的として本研究を開始し、当該年度は以下の結果を得た。 1.温度感受性Trpチャネル(TrpA1)、チャネルロドプシン(ChR2)、ナトリウムチャネルを甘味受容細胞へ異所性に発現させたトランスジェニック動物を作製し、30℃の温熱刺激、吻部光刺激などにより味細胞を活性化させた後、脳を摘出してERKリン酸化(pERK)およびFOS発現を指標(=免疫組織化学的)に活性化したニューロンの同定を試みた。TrpA1を発現させ、温熱刺激を与えた群で甘味受容細胞の投射先である食道下神経節においてpERKの免疫活性が観察できたが、単一細胞の同定が可能な強いシグナルではなかった。 2.甘味または苦味受容細胞、ドパミンニューロンでそれぞれ特異的にナトリウムチャネルを過剰発現させたトランスジェニック動物を作製し、一晩絶食させた後、各種味溶液に対する摂食量について解析をおこなった。甘味受容細胞またはドパミンニューロンでナトリウムチャネルを過剰発現させた場合、5mMスクロース水溶液の摂取量が対照群と比較して有意に上昇した。一方、苦味受容細胞で過剰発現させた場合は対照群と有意差は見られなかった。さらに、キニーネ混合スクロース溶液に対する摂食量はいずれのトランスジェニック動物群においても対照群と差はなかった。これらの結果は、感覚受容ニューロンの活動性およびドパミンニューロンの興奮性が摂食量を調節していることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
味細胞特異的な外来刺激では脳内におけるFOS蛋白の発現を誘導することができなかった(少なくとも免疫組織化学的に検出できるレベルには至らなかった)ことから、FOS-GFPラインの作製は一次中断とした。 その代替実験として、マイクロアレイ解析により神経活動依存的に発現量が増加する分子の同定を試み、現在順調に進行中である。また最近、ドパミンニューロンの神経活動誘導実験をおこない、このニューロン群の中の少なくとも一部が、摂食量の調節に関与している可能性を見出し、味覚依存的な摂食行動に関連する神経回路の足がかりを得た。
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Strategy for Future Research Activity |
1.脳内に散在するドパミンニューロンのサブセットがスクロース溶液の摂食量を増加させる上で重要か否かを明らかにするため、一部のドパミンニューロン特異的にはたらくドライバーを複数準備し、UAS-GAL4システムによりナトリウムチャネルを異所性発現させたトランスジェニック動物を作製して摂食行動(摂食量と味弁別行動)を解析する。そして、脳内のどの領域に存在するドパミンニューロンが摂食調節に関与しているかを明らかにする。 2.神経細胞特異的ドライバー(elav-Gal4)でTrpA1を異所性発現させたトランスジェニック動物に温熱刺激を与えたのち、脳を摘出してmRNAを調製する(対照群として温熱刺激なしの動物からもmRNAを単離しておく)。両群から得られたmRNAを異なる蛍光物質(Cy3, Cy5)を用いて標識し同一マイクロアレイで競合的ハイブリダイゼ-ションをおこない、蛍光輝度を測定、比較することで神経活動依存的に発現が誘導される遺伝子群を網羅的に同定する。同定された遺伝子の上流領域のシークエンスを比較して、保存性の高い転写調節領域が見つかれば、その配列をサブクローニングして活動依存的にはたらくドライバーとして使用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
組換え体の作製を一時中断し、行動学的実験およびマイクロアレイ実験の準備を先行させたため、組換え体作製に関わる分子生物学試薬の予算が、次年度へ繰り越しとなった。 本年度分の助成金と併せて、マイクロアレイ解析において使用する。
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Research Products
(1 results)