2012 Fiscal Year Research-status Report
炎症性痛覚過敏における三叉神経節ニューロンの興奮性に対するBDNFの役割
Project/Area Number |
24592819
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
武田 守 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (20227036)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 痛覚 / 三叉神経節 / 神経栄養因子 / 免疫組織化学法 / パラクリン |
Research Abstract |
平成24年度は,咬筋炎症においてこの部位を支配し三叉神経脊髄路中間亜核/尾側亜核 (SpVi/Vc) に投射するTRGニューロンのBDNF及びBDNF受容体(trkB) 発現が増強されるか否かを逆向性二重蛍光標識および免疫組織化学法を用いて検討した。麻酔処置ラットの咬筋にマイクロシリンジにて起炎物質(CFA)を投与してこれを炎症群とした。一方、溶媒(0.9% NaCl)投与群を対照群とした。同側の咬筋にFluorogold(FG)を注入により、この部位を支配するTRGニューロンを蛍光標識し、またMicrobead (MB)を左側SpVi/Vc領域腹側部に注入し、この部位に投射するTRGニューロンMBにより蛍光標識した。起炎物質投与2日後von Frey filamentsによる咬筋を覆う皮膚への機械刺激による逃避反射閾値は対照群に比較して有意に低下しており痛覚過敏を示した。正常対照群および炎症群ラットのFG標識TRGニューロンの半数はMB陽性を示した。両群のFG/MB標識率には有意差はなかった(44% vs 48%)。BDNF及びtrkB陽性TRGニューロンは主に中型(<40μm)から小型(<30μm)のTRGニューロンに集中していた。炎症群ラットのBDNF陽性細胞数は中型-小型のTRGニューロンにおいて正常群に対して有意に増加していた。またBDNF陽性ニューロンの多くはtrkB陽性であり、炎症群のtrkB陽性細胞は小型TRGニューロンにおいて正常群に比較して有意に増加していた。 これらの結果より炎症に起因した三叉神経節内小型及び中型TRGニューロンのBDNF産生増加とtrkBのup-regulationが深部組織炎症時に生じる炎症性痛覚過敏に重要な役割を演ずる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は深部組織炎症時、三叉神経脊髄路中間亜核/尾側亜核(SpVi/Vc)領域に投射し、炎症性痛覚過敏に関わる三叉神経節(TRG)ニューロンの興奮性に対するBDNFの病態生理的役割を明らかとするために咬筋炎症においてこの部位を支配しSpVi/Vc に投射するTRGニューロンにおいてBDNF及びBDNF受容体tyrosine kinase B (trkB) 発現が増強されるか否かを逆向性二重蛍光標識および免疫組織化学法を用いて検討を行った。 その結果、炎症誘導動物において痛覚過敏応答が観察され、またこの時期に炎症誘導に伴い三叉神経節内侵害受容性小型及び中型TRGニューロンのBDNF/trkBの産生増加が確認された。したがって深部組織炎症時に生じる炎症性痛覚過敏に三叉神経節内侵害受容性小型及び中型TRGニューロンのBDNF/trkBの産生増加が重要な役割を演ずる可能性が示唆され、当初予定していた次年度研究への基礎データは取得できたと判断できたため順調に進行していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の免疫組織学的解析により得られた成果をもとに、今年度は深部組織炎症時、三叉神経脊髄路中間亜核/尾側亜核領域(SpVi/Vc)に投射し炎症性痛覚過敏に関わる三叉神経節ニューロンの興奮性に対するBDNFの病態生理的役割を明らかとするために、FG/MBで逆向性標識された侵害受容性(小型ー中型)三叉神経節ニューロンの興奮性がBDNF投与により、どのように変調するかについてホールセルパッチクランプ法を用いてイオンチャネルレベルで電気生理学的に炎症動物と比較解析することにより、BDNFの機能的役割を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は研究が順調に進み、当初予定していた実験回数より少ない回数で済んだため、使用薬品、機材、動物など購入費(約22万)が次年度に繰り越せた。繰越額は平成25年度の実験計画であるホールセルパッチクランプ法を用いた電気生理学的解析実験に必要な電極材料や薬物投与機材や薬品の購入費用に充当し有効利用する予定である。
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