2013 Fiscal Year Research-status Report
口腔がんの発生にかかわるRNA結合タンパクの分解制御機構解明
Project/Area Number |
24592824
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石川 誠 北海道大学, 大学病院, 准教授 (10202970)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 哲也 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (00451451)
進藤 正信 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (20162802)
東野 史裕 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50301891)
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Keywords | 口腔がん / pp32r1 / pp32 / ARE-mRNA / HuR / 核外輸送 / 安定化 |
Research Abstract |
申請者らは最近、ARE-mRNAの安定化が細胞をがん化することを証明し、口腔がんなど多くのがんでもHuRが核外輸送され、ARE-mRNAも核外輸送・安定化されていることを見出した。さらに口腔がん細胞のHuRをノックダウンすると足場非依存性増殖能や浸潤活性も低下することを見出し、これらの成果に基づき申請者らは、ARE-mRNAの核外輸送システムの破綻による、新たな発がん機構を提唱している。本研究では、ARE-mRNAに結合するRNA結合タンパクHuRが分解制御されることによりどのように細胞のがん化に寄与しているかを解析している。これまで、口腔がん細胞のpp32ファミリーおよびHuRの発現を検討し、さらにpp32r1の口腔がんにおける役割を解析した。本年度は、pp32ファミリーによるHuRタンパクの分解、さらにpp32のノックダウンを行い、HuRの分解制御機構の解明を行った。 1. pp32ファミリーによるHuRタンパクの分解:pp32を強制発現させた細胞では細胞質に存在しているHuRの発現量が低下していたのに対し、pp32r1を強制発現させた細胞ではpp32r1は細胞質にも局在し、それらの細胞では細胞質のHuR発現量が上昇していることが口腔がん細胞を用いた実験で明らかになった。 2. pp32のノックダウン:pp32とHuRとの分解についても解析を行うために、がん細胞のpp32のノックダウンを行った。その結果、細胞質に存在しているHuR量が顕著に増加した。 以上の結果よりpp32r1が過剰に発現されると、おそらくHuRの分解制御機構が抑制され、細胞質のHuR量が増加し、またpp32がノックダウンされてもHuRの分解が阻止されることが示唆できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口腔がん細胞におけるARE-mRNAの核外輸送・安定化を解明する目的のため、ARE-mRNAに直接結合してその輸送に関わるHuRタンパクと結合するpp32とそのファミリーpp32r1について口腔がん細胞を用いて解析した。 これまで本研究で主にがん細胞でpp32r1 (pp32r1は細胞がん化に関わると考えてられている)の発現が高かったことや、またpp32r1を発現させた細胞の足場非依存性増殖能が上昇したことは、pp32r1の発がん活性を別の角度から証明したことになるため貢献度が大きいと考える。 さらに本年度はHuRの分解抑制機構詳細に検討し、pp32r1の発現が高い細胞では細胞質に存在するHuRの量が多いことを解明した。pp32発現細胞ではHuRの量は低下することがわかっていたため、我々の発見は非常に興味深い。さらに、pp32をノックダウンすることにより口腔がん細胞の細胞質でのHuR発現の増加が明らかになった。これらの現象より、おそらくHuRの分解制御機構が抑制され、細胞質のHuR量が増加したものと思われ興味深い。これらの事実をまとめると、本研究では様々な新しい知見が明らかになることによりHuRの分解機構およびpp32r1のもつ細胞がん化機構の一部がより詳細にわかるようになった。この点については達成度が高いと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究ではpp32r1高発現細胞やpp32をノックダウンした細胞では、なぜHuRの分解が阻害されたか不明であるので、今後この点について解析する必要がある。 また、本研究の結果を応用すると、がん細胞で高発現しているpp32r1をノックダウン等で処理すると、HuRの安定化が低下し、がん細胞の悪性度が減弱できる可能性がある。また、pp32を強制発現させても、細胞質のHuRが減少することになり、やはりがん細胞の悪性度が制御できる可能性がある。ノックダウン及び強制発現に必要なウイルスベクター等はすでに市販されているため、これらのベクターを応用してがんの治療に貢献できるシステムができるかもしれないと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
経費の節約、および学会等の出張回数が予定より少なくなったことによる。 経費節約により生じた未使用額279,162円については、より積極的な学会発表等の旅費や高騰している実験試薬の購入等に充てる。
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Research Products
(6 results)