2012 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫疾患発症に関わる口腔レンサ球菌の病原因子の解明
Project/Area Number |
24592833
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
弘田 克彦 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (60199130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 圭史 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (10335804)
岡村 裕彦 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (20380024)
三宅 洋一郎 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (80136093)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ケモカイン / IP-10 / IL-8 / THP-1 / 自己免疫疾患 |
Research Abstract |
基盤研究C (平成14,15年度)研究課題名(難治性疾患を惹起する口腔レンサ球菌のDNA結合タンパク質の解析)で、S. intermediusのhlp geneをクローニング後、rSi-HLPを大腸菌で発現誘導させることを確立し、大量に当教室で凍結分注保存した。基盤研究C (平成21,22,23年度)研究課題名(自己免疫性肝疾患に関わる口腔レンサ球菌の病原因子の解明)において、その一部を使用しBio-plex測定法を用いて、rSi-HLPがTHP-1細胞のサイトカイン発現バランスに及ぼす影響について検討した。本年度は、その結果を確認することを目的とした。予備実験結果と同様にインターフェロン誘導タンパク質-10(IP-10、CXCL10)のmRNA発現およびタンパク質産生量が共に異常なほど上昇することを明らかにすることができた。今回得られた実験データは、臨床報告されている多くの症例報告でみられているデータと合致するものであり、特に興味が持たれる。最新の知見では、IP-10は、形質細胞様樹状細胞(Plasmactoid dendritic cell;pDC))の遊走因子であり、pDC,単球/マクロファージ,リンパ球の集積異常が種々の自己免疫反応の始まりと考えはじめられている。現在までの我々の多くのヒトおよび動物を含めた免疫組織化学染色結果とあわせて考察すると、原発性胆汁性肝硬変(PBC)にもIP-10,pDCが関与する可能性が非常に高く、これらを含めたケモカイン動態変化が、PBCおよび関連自己免疫疾患の免疫寛容破綻機構に関与する可能性が推測された。是非ともさらに詳細に解析することでこれらの関連性を解明したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自己免疫疾患発症の機序、すなわち免疫寛容破綻機構に、ケモカイン動態が関与することが報告され始めた。原発性胆汁性肝硬変(PBC)の傷害胆管でもケモカインとの関連性が指摘されている。基盤研究C (平成21,22,23年度)、基盤研究C (平成24年度)の研究結果から、我々は大腸菌に発現させた口腔レンサ球菌のrSi-HLPで培養ヒト単球マクロファージ細胞を刺激することで、IP-10,IL-8などのケモカイン測定値が臨床報告例と同様に異常に高いレベルまで上昇することを示すことができた。本年度の研究結果より、数種の培養ヒト細胞をrSi-HLPで刺激した際に得られるケモカイン動態を可能な限り網羅的に解析し、rSi-HLPがPBCおよび関連する自己免疫疾患の免疫寛容破綻機構と関係する因子となりうることも示唆できた。現在この結果を論文にまとめて出来るだけ早く英文雑誌に投稿できるよう用意している。 近年、肝での小胞体ストレスを軽減することで、 インスリン抵抗性が改善されることが示唆されており,小胞体ストレスの機序をより詳細に解明することが新しい糖尿病治療の開発につながるものと期待されている。我々も、本実験動物に自己免疫性膵炎が生じることを見出しており、現在この発症機序に関してもケモカイン動態が関与すると考えている。 PBCは約25%の症例で糖尿病、慢性甲状腺炎、シェーグレン症候群等の自己免疫性疾患が合併されることが厚生省「難治性の肝炎」調査研究班の診断基準に示されている。また,S. intermedius重症感染症患者には糖尿病患者が多いことも知られている。そのため本研究はPBCだけでなくこれら疾患のメカニズム解明の一助になる可能性も期待される。そのためβ細胞の実験も開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
コンピューターシュミレーションによるSi-HLP構造解析より、分子表面に露出するアミノ酸が特定できた。それによるとアルギニン(Arg,R)、リシン(Lys,K)のほとんどが表面に露出してクラスター構造をとっていた。構造表層に露出していた16―merのペプチド配列をウサギに免疫して得られた抗Si-HLP抗体を使用した免疫電顕法により、S. intermedius ATCC27335のHLPは菌体内部だけでなく菌体表層にも存在していることを見出した。rSi-HLPには塩基性のアミノ酸(R,K,H)に富む配列が存在し、その配列をヘパリンの硫酸基(負電荷)を認識し、相互作用すると考えらる。糖鎖固定化アレイを用いて、rSi-HLPとの反応特異性を評価する予定である。糖鎖固定化アレイにrSi-HLP(25,50μg/ml)を添加し、1時間反応させた後、1次抗体には抗Si-HLP抗体を、2次抗体にはAlexa Fluo 546を使用し、rSi-HLPのレセプター解析を行う。rSi-HLPは、Heparin、De2s Hep(IdoAの2位が脱硫酸化されたHeparin)、De6s Hep(GLcNH2の6位が脱硫酸化されたHeparin)に強く結合した。DeNS Hep(GLcNH2の2位のアミノ基が脱硫酸化されたHeparin)、DeNS/Ac Hep(GlcNH2の2位のアミノ基が脱硫酸化後にアセチル化されたHeparin)には結合をしなかった。rSi-HLPがHeparinと結合するためには、GLcNH2の2位のアミノ基が重要な役割を果すことが示唆されている。これを確認するため更に詳細に研究する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
rSi-HLPには塩基性のアミノ酸(R,K,H)に富む(正電荷を有する配列でヘパリン結合配列とも呼ばれる)配列が存在し、その配列をヘパリンの硫酸基(負電荷)が認識し、相互作用すると考えられている。しかしその詳細は不明である。糖鎖固定化アレイは、生体分子の非特異的な吸着を抑制する特殊な表面処理を施したプラスチック表面に糖鎖を固定化でき、糖鎖を介した相互作用の解析を簡便かつ高感度に行う事ができる。本研究では、糖鎖固定化アレイを用いて、rSi-HLPとの反応特異性を評価する。糖鎖固定化アレイにrSi-HLP(25,50μg/ml)を添加し、1時間反応後、1次抗体には抗Si-HLP抗体を使用し、2次抗体にはAlexa Fluo 546を使用し、レセプター解析する。そのため、29種の糖鎖固定化アレイを購入に60万円を必要とする。また、ヘパリンと結合するからヘパラン硫酸とも結合する可能性があるためヘパラン硫酸の濃度分布を変化したヘパラン硫酸固定化アレイを別注し検討する必要がある。これに40万円必要である。本年度得られた結果をもとに国際または国内学会に参加し発表するのに30万円を予定している。次年度への繰越額371,878円は、シアリルルイスX固定化アレイの購入費として使用予定である。
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Research Products
(7 results)