2012 Fiscal Year Research-status Report
口腔扁平上皮癌の発生・進展における炎症の役割と制御法の開発
Project/Area Number |
24592841
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
水口 純一郎 東京医科大学, 医学部, 教授 (20150188)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 口腔扁平上皮癌 / 炎症 |
Research Abstract |
口腔扁平上皮癌の発生・進展には癌遺伝子や癌抑制遺伝子などの遺伝要因およびタバコ、アルコール、ウィルス、及び炎症などの環境要因が協同的に作用していると推定されているが、その詳細については不明の点が多い。本研究では、扁平上皮癌の発症・進展における癌遺伝子・癌抑制遺伝子産物などの細胞内シグナル伝達分子の役割、さらにこれらの分子の機能発現に対する炎症反応の影響を遺伝子操作動物および細胞株を用いて検討し、扁平上皮癌の発生・進展における炎症(免疫)反応の役割を明らかにすることを目的としている。 PI3キナーゼ抑制剤であるLY294002を前処理すると、口腔扁平上皮癌細胞株の浮遊細胞塊(スフェアー)形成能の減弱および化学療法剤に対して高感受性を示した。一方、活性化Aktを高発現させた口腔扁平上皮癌細胞株では浮遊細胞塊形成能の亢進、化学療法剤抵抗性、および癌幹細胞のマーカーであるCD24(-)/CD44(-)の割合の増加を示したことから、癌遺伝子Aktが癌幹細胞の分裂・維持に関わっていると推測された。Aktは細胞生存、細胞分裂、および遊送などの機能を有していることが知られており、この方面の解析も行った。 腫瘍の増殖や転移に関する研究は細胞株を用いたものが多いが、細胞株を用いた結果は必ずしも臨床データと結びつかないことも多いことが指摘されている。腫瘍の発生・進展における炎症の役割を解析するために、野生型およびIL-10などの抗炎症性サイトカイン欠損マウスに腫瘍誘導物質DMBA/TPAを長期間塗布し、誘導されてくる腫瘍細胞の数、サイズ、および転移の有無を観察している段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
口腔扁平上皮癌細胞株を用いて、癌遺伝子Aktが腫瘍細胞の増殖、特にがん幹細胞の維持・増殖に関わっていることをin vitro系で示すことができた。また、Akt機能を修飾している細胞内シグナル伝達分子の機能も明らかにした。現在、これらのAkt高発現癌細胞および野生型癌細胞株を免疫不全マウスに移入し、in vivoにおける腫瘍形成能および転移能を調べている。これらの細胞株を用いた実験系に加えて、DMBA/TPA化学発ガン系を用いて、自然発症してくる口腔扁平上皮癌の数、サイズ、および転移能を検討している。これらのin vivoにおける腫瘍形成および転移能の測定には長いインキュベーションタイム(30~35週程度)が必要であることから、現在経過観察中である。
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Strategy for Future Research Activity |
口腔扁平上皮癌細胞株を用いたin vitroの解析により、Aktが腫瘍の発生に関わっていることが示されている。活性化Aktが高発現している口腔扁平上皮癌細胞株を免疫不全マウスに移入し、in vivoにおける腫瘍形成や転移能などを調べる。次に、腫瘍形成マウスにおける炎症・免疫細胞の種類をフローサイトメーターにより測定する。これらの炎症細胞が発現しているサイトカイ・ケモカイン、特に炎症性サイトカイン(IFN-γ, IL-6, TNF-αなど)や抗炎症性サイトカイン(IL-2, IL-10, IL-35, TGF-βなど)に着目し、炎症細胞および炎症細胞由来サイトカイン・ケモカインの役割を検討する。 これらの細胞株を用いた解析に加えて、癌患者の病態に近いと想定される化学発癌モデルを用いて、口腔扁平上皮癌の発症・転移に及ぼす炎症の影響を調べる。特に、免疫不全マウスに細胞株を移入することによって得られる腫瘍形成に関わっていると想定される炎症性細胞あるいは炎症性サイトカインが化学発癌系においても機能しているか否かを明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウスを用いたin vivo実験系における腫瘍形成および転移を測定するには、1回の実験あたり30~35週間程度の期間が必要であり、初年度に予定したin vitroアッセイ系を十分に稼働させることができなかった。次年度は、複数の異なった遺伝子操作動物を同時にスタートさせ、効率的に腫瘍発生および転移能を検討する予定である。このような計画を遂行することにより動物および腫瘍発生に伴う炎症反応を測定するための試薬が必要とされ、消耗品が計画通り消費されることになる。
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Research Products
(6 results)