2013 Fiscal Year Research-status Report
骨代謝に視点をおいた歯周病とメタボリックシンドロームの細胞生物学的関連性の解明
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24592842
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
前野 正夫 日本大学, 歯学部, 教授 (60147618)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川戸 貴行 日本大学, 歯学部, 准教授 (50386075)
田邉 奈津子 日本大学, 歯学部, 准教授 (10409097)
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Keywords | 骨代謝 / 歯周病 / メタボリックシンドローム / 骨芽細胞 / 破骨細胞 / 転写因子 / アンギオテンシンII / ニコチン |
Research Abstract |
骨芽細胞分化は,そのプロセスで複数の転写因子によって調節されている。Runx2,Osterix,Msx2およびDlx5は骨芽細胞分化を促進し,AJ18はそれを抑制する。しかし,これらの転写因子や細胞外マトリックス(ECM)タンパク発現に及ぼすアンギオテンシンII(Ang II)の影響については不明である。そこで,Ang IIがラット骨肉腫由来株化骨芽細胞(ROS17/2.8細胞)の転写因子とコラーゲン性および非コラーゲン性ECMタンパク発現に及ぼす影響を検討した。また,ROS17/ 2.8細胞による石灰化物形成とCa蓄積量に及ぼすAng IIの影響も併せて検討した。その結果,Ang II 刺激でRunx2,Msx2,オステオカルシン(OCN)発現は低下し,AJ18発現は増加したが,Osterix,Dlx5,I型コラーゲン,骨シアロタンパク,OPN発現にはその影響は認められなかった。また,石灰化物形成とそれに含まれるCa量はAng II刺激で減少した。さらに,losartanは,Ang II刺激によるRunx2,Msx2,OCNおよびAJ18発現変化を完全に抑制した。以上の結果から,Ang IIはROS17/2.8細胞のAT1受容体に結合し,Runx2とMsx2発現を減少させる一方でAJ18発現を増加させ,骨芽細胞分化を抑制すると考えられた。さらに,Ang IIはアルカリホスファターゼ活性とOCN発現を低下させて石灰化物形成を抑制することが示唆された。関連研究として,ニコチンは破骨細胞分化と炭酸脱水酵素 II発現を誘導してH+産生を増加させるが,V-ATPase発現とactin belt 形成を低下させてH+の細胞外放出と波状縁形成を抑制するため,破骨細胞による無機質溶解には影響を及ぼさないことが明らかになった。また,脳卒中易発症性高血圧自然発症ラットにLPSを継続的に投与すると,酸化ストレス指標TBAR値の上昇,脳卒中の発症の早期化,症状の重症化が認められ,脳卒中の遺伝的素因を有する個体への頻回なLPS暴露は,酸化ストレスを増加させ,脳卒中の発症と症状の重篤化を誘引する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アンギオテンシンII(Ang II)がラット骨肉腫由来株化骨芽細胞(ROS17/2.8細胞)の転写因子とコラーゲン性および非コラーゲン性細胞外マトリックス(ECM)タンパク発現に及ぼす影響を検討した。また,ROS17/ 2.8細胞による石灰化物形成とCa蓄積量に及ぼすAng IIの影響も併せて検討した。その結果は,研究実績の概要に記載の通り,当初の研究をほぼ達成することができた。本研究成果はArchives of Medical Scienceに投稿し受理された(現在印刷中)。関連研究として,骨吸収関連酵素の発現に及ぼすニコチンの影響を調べた研究成果は,PLoS One 8(3), e59402に掲載された。また,LPSが脳卒中易発症性高血圧自然発症ラットにおける脳卒中発症に及ぼす影響を調べた研究成果は,Clinical and Experimental Hypertension 35(1), 28-34に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
脂肪組織の拡大形成には,ECMタンパクのリモデリングが重要であることが知られている。そこで,歯周病由来の炎症性物質が,脂肪細胞の蛋白分解酵素(マトリックス金属プロテアーゼとプラスミノーゲンアクチベーター)とその内因性インヒビター(組織インヒビターマトリックスプロテアーゼとプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター)の発現に及ぼす影響を,細胞および分子生物学的に検討する。脂肪細胞には,脂肪細胞前駆細胞である3T3-L1細胞を,脂肪細胞分化誘導因子の存在下で培養した細胞を用いる。細胞を刺激する炎症性物質には炎症性サイトカインであるTNF-αとIL-6,ならびにC-reactive protein(CRP)を用いる。脂肪細胞の分化は,Oil-Red-O染色で評価する。マトリックス金属プロテアーゼ,プラスミノーゲンアクチベーター,組織インヒビターマトリックスプロテアーゼおよびプラスミノーゲンアクチベーターインヒビターの遺伝子発現はreal-time PCR法で,タンパク発現はWestern blotting法またはELISA法で調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
脂肪細胞は、4代継代までしか使用できなかった。そこで、新たな脂肪細胞の購入を計画したが、年度内に納入されることが困難となった。 上記の理由から、繰越金は新たな脂肪細胞の購入に充てる。また、翌年度の研究費は、細胞および分子生物学研究に必要な試薬、具体的には細胞培養に必要な培養液、脂肪細胞分化因子、遺伝子発現の検索に必要な一連の試薬、タンパク発現(Western blottingおよびELISA)の検索に必要な試薬と抗体等の購入に充てる。また、これらの実験に必要なプラスティック器具等の購入に充てる。
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