2013 Fiscal Year Research-status Report
歯周病起因性動脈硬化における歯周病原性細菌の動態及び制御機序についての解析
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24592845
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
橋爪 智美 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (50419785)
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Keywords | 歯周病 / 動脈硬化 / A. actinomycetemcomitans / P. gingivalis / GFP / IL-17 |
Research Abstract |
本研究の目的は、歯周病原性細菌の感染後の生体内における動態解析を行う事によって、歯周病原性細菌感染に起因する動脈硬化促進メカニズムを解明する事である。当該年度では前年度に引き続き、GFP発現Aggregatibactor actinomycetemcomitans(A.a.)の組換え体の作製の実施、及び、動脈硬化モデルマウスであるApoe欠損マウスにPorphyromonas gingivalis(P.g.)を経尾静脈投与しT細胞サブセットに関する解析を行った。 前年度に作製したplasmid4 (A.a.のロイコトキシンプロモーター:ltxp、及びGFP遺伝子領域を含む)の一部改築を行った。plasmid4からltxp領域以外を切り出し、新たにリボゾーム結合排列を含む様設計したプライマーを用いて再度A.a.の染色体からltxp領域をPCRで増幅させ、両者をライゲーションし大腸菌に形質転換を試みた。しかし、制限酵素サイトに問題がありうまくいかなかった。従って、再度GFP遺伝子領域を別のベクターに入れ直した(plasmid5)。A.a.の染色体からltxp領域を再度PCRで増幅し、plasmid5のGFP遺伝子領域の上流に挿入し大腸菌に形質転換した(plasmid6)。plasmid6からltxpとGFP遺伝子領域を切り出し、A.a.と大腸菌のシャトルベクターに挿入後エレクトロポレーション法を用いて大腸菌に形質転換した(plasmid7)。この大腸菌を培養しplasmid7を精製した。今後はA.a.にplasmid7の形質転換を実施する。 Apoe欠損マウスにP.g.を経尾静脈投与したところ脾臓においてCD4+IL-17A+T細胞数及びIL-17の産生が有意に増加した。Th17応答が誘導されることで炎症反応が引き起こされ動脈硬化促進につながる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は歯周病並びに動脈硬化制御につながるメカニズムの解明であり、歯周病原性細菌感染性動脈硬化促進におけるT細胞サブセットの解析と、歯周病原性細菌の感染後の生体内における動態、局在を解析することを目的としている。 歯周病原性細菌であるP. gingivalisを動脈硬化モデルマウスであるapoe欠損マウスに経尾静脈投与した結果、P. gingivalis感染マウスの脾臓において、CD4⁺IL-17A+ T細胞、IL-17の産生が増強されており制御応答より炎症反応誘導に傾いていた。さらに詳細な解析を加え動脈硬化抑制効果について検討していく。 歯周病原性細菌の感染後の動態解析に関しては、当初の研究計画では、GFP発現A.a.の組み換え体の作製完了後に実際に動脈硬化モデルマウスであるapoe欠損マウスに感染させトレーサー実験を開始する予定であった。しかし、前年度までに組み換え体の作製が完了しなかったため、前年度までの問題を踏まえて、A. a.由来のロイコトキシンプロモーター領域とGFP遺伝子をA. a.と大腸菌のシャトルベクターにクローニングするところまで再度遂行した。今後はA. a.に形質転換し、生体内実験に移行していく。
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Strategy for Future Research Activity |
動脈硬化促進モデルマウスであるapoe欠損マウスに歯周病原性細菌の一種であるP. gingivalisを経尾静脈感染させた時の炎症反応関連分子(IL-1beta、IL-10、IL-21、IL-23、STAT3、RORgammat、T-bet等)に関して遺伝子レベル(リアルタイムPCR、PCR、DNAマイクロアレイ)、タンパク質レベル(サイトカインELISA、フローサイトメトリー)、組織レベル(組織染色)で解析を加え、動脈硬化制御につながるメカニズムについて検討を行い、研究成果をまとめる。 また、GFP発現A. a.組換え体の作製を継続して行い完成させる。ロイコトキシンプロモーター領域とGFP遺伝子が組み込まれたプラスミドを持った大腸菌とA. a.を共培養することによって組換え型GFP発現A. a.を作製する。または、精製したplasmid7をA.a.にエレクトロポレーション法で形質転換する。作製した組換え型GFP発現A.a.の遺伝子レベル、蛍光顕微鏡での確認を行う。次に、組換え型GFP発現A. a.をapoe欠損マウスに経尾静脈、経口投与し一定時間後に心臓、大動脈、脾臓、肝臓を取り出し組織切片を作成し蛍光顕微鏡で分析し、生体内における歯周病原性細菌の動態について解析する。また、in vitroの系において血管内皮細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞の立体培養及び単級系細胞に組換え型GFP発現A.a.を感染させ細胞内局在について共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度中に、GFP発現A. actinomycetemcomitansの遺伝子組み換え操作が完了しなかったため、動脈硬化モデルマウスであるApoE欠損マウスにGFP発現A.a.を投与する実験、及び、in vitroにおける平滑筋細胞、血管内皮細胞、繊維芽細胞、単球系細胞を用いた実験系を開始していない。遺伝子組み換え操作に使用する消耗品、またT細胞サブセットに関する実験に関する物品は平成24年度から継続して購入しており、平成25年度の支出額で充分であった。 GFP発現A.a.の作製が完了次第、動物実験、細胞培養実験を行うため、次年度使用助成金が生じた。 GFP発現A.a.の最終段階での遺伝子排列の確認のためシークエンサーにかける(シークエンサー関連試薬 150,000円)。ApoE欠損マウス(10,000円×50匹)にGFP発現A.a.を感染させ、組織切片を作製する(組織切片作成用試薬200,000円)。血管内皮細胞(100,000円)、平滑筋細胞(100,000円)、繊維芽細胞(100,000円)、単球系細胞(100,000円)の重曹培養システム(プラスチック器具200,000円)にGFP発現A.a.を感染させる。マウスからの組織回収、細胞調整等にシャーレ、遠心管等のプラスチック器具(50,000円)を使用する。 T細胞サブセットの解析:real-time PCR関連試薬(100,000円)、フローサイトメトリー用蛍光標識抗体(50,000円×4本)。
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