2013 Fiscal Year Research-status Report
歯髄の組織再生を促進させるための血管新生バイオマーカーに対する分子生物学的研究
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24592862
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
金子 友厚 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (70345297)
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Keywords | 血管新生関連バイオマーカー |
Research Abstract |
ラット下顎第一臼歯を被験歯とし、血管新生関連バイオマーカーが歯髄再生に対して果たす役割を免疫組織化学および分子生物学的手法を用いて検索し、速やかに歯髄組織再生を促すために最適な血管新生関連バイオマーカーを検証することを本研究は目的とした。 具体的には、ラットの下顎第一臼歯の歯髄腔内で血管新生関連バイオマーカーが歯髄再生に対して果たす役割を、in vivoおよびin vitroの実験系を通じ、免疫組織化学および分子生物学的手法を用いて検索し、歯髄を速やかに再生するために必要不可欠となる血管新生関連バイオマーカーを検証し、併せて、組織再生を生ずるために適した各種流動的スキャホールド(ペプチドハイドロゲル)の評価を行った。 以上のような研究を遂行し、流動的スキャーホールドとしてBD PuraMatrixペプチドハイドロゲル(米国ベクトン・ディッキンソン社)が、最も優れた歯髄組織再生能を示した。BD PuraMatrixペプチドハイドロゲルとpoly-L-lactic acidスキャホールドを組み合わせることで、さらに良好な組織再生を示した。再生した歯髄組織内の血管新生関連バイオマーカーをELISAあるいはリアルタイムPCR法を用いて検索したところ、VEGF、Bcl-2、NF-kBなどの血管新生関連因子に著名な発現の変化が観察されたため、またデコイ核酸や中和抗体を用いNF-kBの発現を減弱させると、Bcl-2発現が減少することがわかった。以上の結果から、歯髄組織再生にこれらのマーカーが需要な働きを有することがわかった。 以上の知見の一部は、国際組織学会などにおいて発表され、また国際誌Journal of EndodonticsやCell and Tissue Researchなどに印刷された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
正常ラット歯髄における血管新生関連バイオマーカー、angiogenin、angiostatin、FGF-2、VEGF、 rat IL-8、 NFkB、 GMCSF、Bcl-2、およびBaxの関連遺伝子(mRNA)、DNA、タンパク発現を、real-time PCR、ELISA法を用いて定量的に検索した。 次に、血管内皮細胞の活性化増殖に最も適している血管新生関連バイオマーカーを検索するとともに、血管内皮細胞を培養する細胞培養液に添加するVEGF, FGFの濃度を設定した。以上の結果から得られた培養液を用いて、poly-L-lactic acidスキャホールド、流動的スキャホールド (BD PuraMatrixスキャホールド)、およびpoly-L-lactic acidスキャホールドと流動的スキャホールドを組み合わせた足場の比較を行ったところ、流動的スキャホールド を単独で用いた足場、あるいはpoly-L-lactic acidスキャホールドと流動的スキャホールドを組み合わせた足場が、歯髄再生において最も良好な足場と考えられた。そこで、これらの足場と血管内皮細胞を組合わせ組織再生の実験を行い組織の再生を比較したところ、スキャホールドを組み合わせた足場が最も歯髄組織再生に有効であるという知見を得た。さらに細胞培養液にNuclear factor-kappa B (NFkB)デコイやFGF-2中和抗体を添加した培養液中で上述と同様の実験を行うと、血管新生因子のひとつであるBcl-2の発現が減少することが分かった。以上の研究結果から、歯髄の再生における血管新生の増進にはVEGF-NFkB-Bcl-2の遺伝子発現経路が、重要であることが考えられた。 上述のように、研究計画3年目まで研究が進行しており。当初の経過どおり研究が順調に行われていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、NF-kBやBcl-2が血管新生の増進に有力な血管新生関連バイオマーカーであることが示唆されたため、これらNF-kBやBcl-2の検索を中心に、引き続き行っていく。 具体的には、poly-L-lactic acidスキャホールドと流動的スキャホールドを組み合わせた足場を使用し、以下の3群に分け検索を行う。 ①.スキャホールドとラット血管内皮細胞移植群(第一臼歯を露髄し、歯髄腔内の歯髄を除去した後、スキャホールドとラット血管内皮細胞を歯髄腔内に移植するグループ) ②. スキャホールドと非ウィルス性に遺伝子組み換えを行いBcl-2の発現を増強させたラット血管内皮細胞移植群。上記の2グループの試料を、それぞれ以下の5種の培養液中で、 7日~14日間、組織培養する。 培養液として、DMEM培養液(VEGF, FGF-2添加)、Nuclear factor-kappa B (NFkB)デコイおよびDMEM培養液(VEGF,FGF-2添加)、FGF-2中和抗体およびDMEM培養液(VEGF,FGF-2添加)、NFkBデコイ、FGF-2中和抗体、およびDMEM培養液(VEGF,FGF-2添加)、DMEM培養液 (コントロール)の5種類を用いいる。 上記の試料に対し、CD31、VEGFR2(血管内皮細胞増殖因子レセプター2)、Bcl-2(アポトーシス調節因子、血管新生関連因子)などの抗体を用い、免疫組織化学的染色し、各種抗体の陽性反応に対する定量分析を顕微鏡下で行う。さらに、血管新生関連バイオマーカー関連遺伝子(mRNA)、DNA、タンパク発現を、RT-PCR、real-time PCR、ELISA法、およびwestern blotting法を用いて定量的に検索する。上記の定量的実験結果を統合し、 in vitroにおいてこれらの血管新生関連バイオマーカーの歯髄再生における役割を検索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3月末に購入した物品費5457円の実質的な支払いが事務手続きの関係で4月になったために、差額が生じました。 差額分は、全て3月末の物品の購入に使用いたしました。
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