2012 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病歯髄の病的石灰化および炎症反応に及ぼす最終糖化産物(AGEs)の影響
Project/Area Number |
24592869
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
稲垣 裕司 徳島大学, 大学病院, 助教 (50380019)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 俊彦 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (10127847)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 最終糖化産物 / AGE / 歯髄 / 病的石灰化 / 糖尿病 |
Research Abstract |
【研究目的】糖尿病患者では動脈硬化を合併して血管壁に粥状石灰化物を形成する場合が多く,近年,最終糖化産物(AGE)の蓄積が血管の石灰化に促進的に作用していることが明らかにされている。一方,糖尿病患者の歯髄では高頻度で歯髄腔の狭窄や歯髄結石の形成が認められる。本研究ではAGEが歯髄の病的石灰化に影響を及ぼすかどうかを検証するために,ラット培養歯髄細胞の石灰化誘導能に及ぼすAGEの影響をin vitroで調べた。 【材料および方法】実験には6~9週齢の雄性Wistar系ラットを用いた。歯髄細胞は上顎切歯より採取し,50μg/mlアスコルビン酸,2mM β-グリセロリン酸および10% FBS含有EMEM培地に,AGEを50~1000μg/mlの濃度で添加して細胞培養を行った。AGEはTakeuchiらの方法に従いBSAとグリセルアルデヒドを用いて作製した。AGE添加開始後,14日目および21日目にAGE受容体(RAGE)や石灰化関連マーカー(OPN,OCN)についてRT-PCR,real-time PCRおよびELISA分析を行い,mRNAとタンパクの発現の変化について調べた。また最長21日まで細胞培養を継続し,アルカリフォスファターゼ(ALP)活性測定およびプレートに形成された石灰化骨様結節に対してvon Kossa染色を行い,石灰化物形成の変化を調べた。 【結果】ラット培養歯髄細胞にAGEを添加すると,RAGE,ALP活性,石灰化骨様結節形成量および石灰化関連マーカーの有意な増加が認められた。 【結論】AGEが培養歯髄細胞の各種石灰化マーカーを上昇させることから,歯髄の病的石灰化の進展にAGEが直接的に作用している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,①糖尿病の歯髄組織でAGE受容体(RAGE),オステオポンチン(OPN)やオステオカルシン(OCN)などの骨基質タンパクの発現が増強していること,②歯髄細胞培養系にAGEを添加するとALP活性,石灰化骨様結節などの石灰化指標が上昇するとともに骨基質タンパクの産生量も増加することを明らかにし,糖尿病の歯髄の石灰化に対するAGEの関与を見出すことであった。 ①については現在研究が進行中であるが,ほぼ期待していた結果が得られている(研究実績の概要に記載せず)。また②については今回実験的に証明することができた。以上のことから,本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は以下の2項目について研究を行う。 ①「ラット由来の歯肉線維芽細胞における,AGE添加培養条件下での石灰化指標の変化および骨基質タンパク質発現の検討」 AGE添加によるラット歯髄細胞培養系の石灰化が,歯髄細胞に特徴的なものであることを調べるために,糖尿病で口腔内に石灰化を生じない歯肉の細胞を用いて歯髄細胞と同じ実験を行う。歯肉由来の線維芽細胞はKataokaらの方法に従い下顎臼歯部の歯肉より採取,AGEを濃度変化させて添加し,細胞培養を行う。引き続き,ALP活性の測定およびプレートに形成された石灰化骨様結節に対してvon Kossa染色を行い,歯肉線維芽細胞と歯髄細胞の石灰化指標の変化を比較し,石灰化が歯髄細胞に特徴的か否かを検証する。 ②「ラット由来の歯髄細胞における,AGE添加培養条件下でのS100A8,S100A9および炎症性マーカーの発現の検討」 糖尿病歯髄では微細慢性炎症(Micro-inflammation)が生じ,それがAGEによって亢進しているかを検証するために,炎症関連マーカーの発現について検索する。実験にはWistar系ラット由来の歯髄細胞を用いる。AGEを濃度変化させて添加し,細胞培養を行う。炎症反応を惹起するために1μg/ml LPSを培地に添加し,経持的に細胞からtotal RNAを抽出する。そしてS100A8,S100A9,IL-6およびIL-1βなどの各種炎症性サイトカインについてRT-PCR,real-time PCRを行い、mRNAの発現の変化を調べる。AGEによってこれら炎症性マーカーの発現が増加し、炎症反応が亢進するかを検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度への繰越額は試薬・キットなどの物品費に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)