2013 Fiscal Year Research-status Report
歯根膜から得た細胞を用いた三次元再構成培養組織を併用する歯の再植法に関する研究
Project/Area Number |
24592886
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
五十嵐 勝 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 教授 (90168104)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北島 佳代子 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (00177841)
新井 恭子 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 講師 (10434143)
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Keywords | 再生医学 / 歯根膜 / 三次元培養 / 再植法 / 移植 / 抜歯窩 / 歯根 / セメント質 |
Research Abstract |
5週齢のウイスター系雄性ラット52匹を入手し、実験環境に慣らした後、6週齢について実験に供した。全身麻酔を施し、上顎第1臼歯周囲の局所麻酔を併用し歯を抜去後、圧迫止血を行った。抜去した歯の近心舌側根をバーで切断後、根尖部をメスで切除して長さ約2mmの歯根に整形した。その後、根管内の歯髄をKファイルで除去し、さらにNiTiロータリーファイルで根管拡大形成を行った。歯根表面に付着している歯根膜組織をディスポーザブルメス(#15)を用いて可及的に剔削除去した後、歯根軸に沿って縦割断し、1/4の小片状にした。小片は4℃ PBS中に投入し、埋入移植まで冷蔵保管した。 抜歯4週後に歯肉創面の治癒を確認した後、麻酔下で歯肉の切開を行い、抜歯窩に深さ1mmの骨欠損を形成した。形成された骨窩洞内に、冷蔵保管しておいた抜去歯小片を1個挿入し、歯肉を復位下後、手術用シアノアクリケート系接着剤で切開部を接着閉鎖を行った。 象牙質片埋入2,4週後に動物をサクリファイスし、上顎骨を摘出して10%中性ホルマリン中に浸漬固定した。EDTAにて脱灰した後、通法に従いパラフィン包埋を行った。現在パラフィン連続切片を作製中で、抜歯窩に埋入した歯根象牙質周囲の治癒過程を観察する予定である。 抜歯後の創傷面の治癒は速く、抜歯後4週で歯肉の閉鎖と歯槽骨の骨添加が明らかであった。骨削により骨窩洞を形成後、移植を行った。歯槽骨の骨空洞部にコラーゲンゲルを填入後に歯根片を移植した例と、歯根膜由来細胞を含んだコラーゲンゲルを用いた場合の違いを検索する目的で、現在ラット抜去歯の歯根膜由来細胞の初代培養中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
歯内療法分野における脱臼歯治療法の一つに再植術がある。その処置では、正常な歯根膜が残存することと脱臼後に可及的に迅速に再植を行うことが要求される。また歯根膜の汚染や損傷がある場合、完全なdebridement を行齲事が必要となり、歯根膜を失った歯は後に外部吸収を起こすことがしばしば見られる。再植後に歯根膜組織が再生した場合、周囲組織との接合が再度生じ、再生した線維組織に保護されることにより破歯細胞の出現によるセメント質吸着が防止され、その結果外部吸収や骨性癒着、置換性歯根吸収を回避することができると推察される。本研究の目的は、脱臼歯から得られた線維芽細胞や上皮細胞を用いて三次元再構成培養組織を作製し、冷蔵保存しておいた脱臼歯を培養組織で包んで皮下組織や顎骨内に埋入した後の歯根表面の治癒経過について経時的に観察することである。 そこで実験にはラットを使用し、抜去歯の歯根膜から線維芽細胞を分離後、コラーゲンゲル応用の三次元再構成培養を行うこととしたところ、抜去歯が非常に小さく、歯根膜組織からの初代培養が上手く奏効する事がなかった。すなわち、十分な量のsこんまく細胞が得られないことにより、コラーゲンゲルに細胞を含んだ再度併用することは難しくなり、実験計画に遅れを生じた。一方、その後、歯根膜を分化に適した細胞数を知るためにラット皮下組織に抜去歯と共に埋入し、経時的に組織標本を作製することとしたが、抜去歯は歯根膜を全て剔削除去し、コラーゲンゲルで被包した形で埋入を行うところが、細胞の獲得ができないまま実験が進行した。本研究の3年間という実験期間の中で、初めに一定量の細胞を確保することが難しく、至適細胞数の確立がまだできていないこと、2年度目の移植実験が無細胞コラーゲンを用いたこと、他家移植へと実験が困難なことが明らかとなってきたものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在パラフィン包埋を行った抜去歯歯根の移植片に対し、連続切片を作製の後、移植後の組織変化について考察を行う予定である。 ラット切歯から歯根膜細胞を獲得する方法を確立させ、抜歯窩に再植する際に歯根膜をすべて失った歯根小片が周囲組織とどのような反応を示すかについて検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞の初代培養に時間を要したため、ラット骨窩洞への移植実験に遅滞事項が生じ、標本作製が遅れてしまった。そのため、染色用薬品等の購入がなく、また標本作製費用が生じなかったため次年度送りになったためである。 現在の標本作製、ならびに継続中の細胞培養経費として支出する予定である。
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