2013 Fiscal Year Research-status Report
臨床応用に向けた象牙質再生のための幹細胞分化促進と歯髄再生法の確立
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24592889
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
林 宏行 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (50098018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
好川 正孝 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (70148451)
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Keywords | アルギン酸 / ゲル / 幹細胞 / 骨形成 / 歯根 / ハイドロキシアパタイト / 気孔 |
Research Abstract |
歯髄および象牙質再生のため、多孔質ハイドロキシアパタイト担体内での骨形成に重要な因子としての気孔壁に骨髄幹細胞が接着し得る化合物を検討し、ラミニンやロイシン、デキストラン、あるいは、アルギン酸による担体のコーティングが有効であることを再確認した。さらに、担体気孔内全体への硬組織の緻密な形成を実現するため、担体気孔内に播種する骨髄細胞を気孔壁に接着させる化合物を利用する方法とともに、アルギン酸ゲルに懸濁した幹細胞を気孔内に播種して骨形成を図った。幹細胞を含む骨髄細胞を懸濁したアルギン酸ゲルを多孔質ハイドロキシアパタイト担体の気孔内に満たすことで、気孔に幹細胞を確実にとどめて増殖と骨芽細胞への分化を期待したが、有意に多くの骨形成は認められなかった。ゲル状のコンドロイチン硫酸あるいはヒアルロン酸とアルギン酸ゲルとの比較から、恐らくゲル内への組織液浸潤すなわち細胞への栄養供給が不十分であったためと推察される。 歯根に類似する形状の担体を開発するために、多孔質ハイドロキシアパタイト担体内を幹細胞を含むアルギン酸ゲルで満たして骨形成を検討したが有意に多い骨形成は得られなかったが、多孔質ハイドロキシアパタイト担体の中空部分に骨髄細胞を懸濁したアルギン酸ゲルで満たしてin vivoで検討した結果、骨髄細胞による骨形成量の有意な増加を認めた。その結果を踏まえて、多孔質ハイドロキシアパタイト担体の中空部分の径と骨形成量の関連を検討し、外径8㎜の多孔質ハイドロキシアパタイト担体でその中空部の径が3㎜であるときに有意に骨形成量の増加が認められた。この結果は、3㎜の中空部径を有する多孔質ハイドロキシアパタイト担体への骨髄細胞播種で最も多い骨形成を認めた過去のin vivoでの報告と一致している。 この形状の多孔質ハイドロキシアパタイトが歯根の再生にとって最も有効な担体になることを本研究で証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歯根に類似する形状の担体の開発、そして、in vivoでの歯根の再現が本研究の目的である。少数の骨髄細胞で効率的に多孔質ハイドロキシアパタイト担体気孔内に骨を形成させるために円筒状の担体が有効であり、その中空部分の径が骨髄細胞による骨形成量に影響することを明らかにした。すでに担体内気孔に緻密な骨形成を得るためには外形と中空部の径の関係が重要で、歯根に類する直径8㎜の円筒状ハイドロキシアパタイトにおいて3㎜の中空が最も有効な形状であることを明らかにした。このハイドロキシアパタイトの形状が歯根を再現する適切な形状の担体であり、今後の歯根の再生に密接に関連する結果を得たことは間違いないと確信するからである。
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Strategy for Future Research Activity |
中空構造を持つ多孔質ハイドロキシアパタイト(HA)担体を歯根と想定して、その中空構造に幹細胞を線維芽細胞およびコラーゲンとともに混合して挿入、ラット背部に皮下埋入して異所性にin vitro で歯髄組織を再生させる。外表面には線維芽細胞を担体気孔に播種し、ラット背部において歯根膜組織の再生を図る。 歯根に類似するHAハイブリッド担体を作製する。そのために、外層のHA構造に骨形成性細胞を播種し、HA内部の中空構造に担体の一部としてスポンジを挿入する。このスポンジはCあるいは非生分解性の双方を使用し、その長所と欠点を有効に利用する考えである。生分解性スポンジには外層を成すHA構造内血管内皮細胞および線維芽細胞を播種して歯髄の再生に努める。生分解性スポンジでHA中空構造に血管が再生されなかったとき、非生分解性スポンジを基質に擬してコラーゲンコートし、ここに血管内皮細胞を播種して血管再生を誘導し、歯髄組織の再現に近づける。 歯髄組織再生のため、血管上皮細胞と骨髄細胞を含むアルギン酸ゲルを担体中空部に播種する。また、非生分解性スポンジにも血管上皮細胞と線維芽細胞を播種する。 これらの歯髄を含む歯根の再生を図るための試験はFischer 344 ラット背部皮下への各細胞を播種された担体を埋入し、6週を実験期間と定めて摘出した担体の組織学的検討、そして、オステオカルシン定量で歯根再生の過程のどの位置に達しているかを確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
例年、物品費の支出が多いために予算額を大きくしていたところ、メーカーのキャンペーン等で支出を抑えることができ、結果として繰り越した次第である。 最終年度であり、投稿のための費用あるいは学会発表の旅費等に使用したいと考えている。
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Research Products
(5 results)