2012 Fiscal Year Research-status Report
眼球運動の軌跡解析によるヒューマンエラー削減のための効果的な教育法の確立
Project/Area Number |
24592891
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | THE NIPPON DENTAL UNIVERSITY COLLEGE AT NIIGATA |
Principal Investigator |
宮崎 晶子 日本歯科大学新潟短期大学, その他部局等, 准教授 (50240271)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 律子 日本歯科大学新潟短期大学, その他部局等, 准教授 (50178787)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 眼球運動 / ヒューマンエラー / 歯科衛生士教育 / ラバーダム防湿 |
Research Abstract |
本研究は,臨床教育現場で安全な医療を提供することを目的とし,器具の受け渡しという動作において,どのような因子がエラーを引き起こす要因となるのか,ヒューマンエラーのパターンから発生に関与する因子を明らかにすることである。その結果,エラーは患歯が上顎である方が多く,下顎の約2倍となった。これは上顎の場合,クランプをフォーセップスに装着する際のフォーセップスの向きと実際に渡す向きが一致しないことによるものと思われる。このように渡す動作一つに対し,エラーを誘発する因子は渡すという行為だけでなく,取り付けなどの準備段階も因子に含まれ,影響することが分かった。今回の研究の背景には『臨床経験の有無により補助者は術者の次の行動を予測して視線を移動させる』ということがある。安全かつ迅速な歯科医療を提供するには,術式を理解した上で術者の次の行為を予測し,確認しながらアシストを行うよう教育するのは当然のことといえる。しかしながら,確認行為を行った学生は全体の14.9%に過ぎず,ファントーム有無でエラー発生率に有意差は認められなかった。これはファントームがあったとしても一切患歯を確認せず,器具渡しを行っていることが一因として考えられる。また確認行為を行ったとしても何度も確認行為をすると逆にエラー発生率が上がる傾向が見られた。エラー削減のためには患歯の位置とフォーセップス先端の向きとの関係など,確認するポイントを明確に提示した上で取り付け,受け渡しを行うよう教育する必要がある。また,臨床経験があったとしてもエラー削減のため,どのタイミングでどこをみて確認するのか,日々の的確な指導が必要であることが示唆された。さらにYG性格検査により,性格とエラーのパターンとの関係を検討したが傾向はみられなかった。 以上については日本歯科衛生教育学会(平成24年12月にて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
歯科衛生士を対象として,臨床経験の有無で器具の受け渡しという動作において,どのような因子がエラーを引き起こす要因となるのか,ヒューマンエラーのパターンから発生に関与する因子を明らかにし,学生と比較するまでが平成24年度の予定であった。しかし,実際のエラーを引き起こす因子は単純なものではないことがわかった。そのため,テスト画像のVTRを制作し眼球運動を分析するのではなく,直接被験者がみている視野画像をFree Viewを用いて録画し,眼球運動を解析するシステムに変更することとなった。これにより,設定された架空の視野範囲だけでなく,より現実的な見方の解析ができると考える。そのため,あらかじめ設定された画像内の処理をする装置およびソフトではなく,受け渡しまでのあらゆる視線を解析する装置とソフトの解析が必要である。現時点で解析装置およびソフト(クランプ受け渡し動画解析装置一式)の制作は終了しており,調整段階に入っている。
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Strategy for Future Research Activity |
被験者が見ている視野画像を録画し,画像分析するソフトはすでにテスト段階に入っているため,今後は二次元的なテスト画像の解析ではなく被験者が見ている視野画像の解析を中心として眼球運動のデータ収集を行う予定である。 臨床経験のない歯科衛生士学生の視野画像と臨床経験のある歯科衛生士の視野画像を分析し,眼球運動を解析することにより見方の違いを明らかにするとともにエラーのパターン別発生率も比較する。また,臨床実習を経験した後の歯科衛生士学生の視野画像とも比較をし,見方の違いを分析する。これらの結果に基づき,エラー削減に最も有効な見方のポイントを検討する。その後,見方のポイントについて歯科衛生士教員が歯科衛生士学生に指導(声掛け)を行い,指導前後で眼球運動がどのように変化するのか分析を行い,有効な教育方法を確立していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度で制作したクランプ受け渡し動画解析装置一式が80万円となり,平成24年度予算では賄いきれなかったため,次年度予算と合算して支払うこととした。その補てん分の対策としては,被験者である『臨床経験のある歯科衛生士』を本学校友会会員から募り,ボランティアで協力をしてもらうこととする。 今年度は,より現実的な眼球運動を測定する動画解析装置を開発・制作したため,これについての発表を予定している。そのための学会発表や論文作成に係る経費を予定している。
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