2013 Fiscal Year Research-status Report
眼球運動の軌跡解析によるヒューマンエラー削減のための効果的な教育法の確立
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24592891
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Research Institution | THE NIPPON DENTAL UNIVERSITY COLLEGE AT NIIGATA |
Principal Investigator |
宮崎 晶子 日本歯科大学新潟短期大学, その他部局等, 准教授 (50240271)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 律子 日本歯科大学新潟短期大学, その他部局等, 准教授 (50178787)
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Keywords | 眼球運動 / ヒューマンエラー / 歯科衛生士教育 / ラバーダム防湿 / 視線 / 歯科診療補助 |
Research Abstract |
ラバーダム防湿を行う際のクランプの試適を想定して得られた画像および映像分析から器具の受け渡し時に生じるエラーが「渡す」という行為だけでなく,クランプをフォーセップスに取り付ける作業など,その前の準備段階や学習時期も因子に含まれることを明らかにした。今年度の目的は,器具の受け渡しの一連の動作を眼球測定装置と動画測定カメラを用い,歯科衛生士学生の実視野から見たエラーを起こす際の視線の配り方を動画として測定し,分析するソフト(Free View-HMS 視野映像測定データ取り込みソフト)を開発することである。 上記ソフトを使用してパソコンに取り込み,任意に指定した領域内の視線データ(軌跡,注視時間)を抽出した。抽出したデータから注視時間を算出し,その結果を一覧表に表示するようにした。その結果, 再生画面の視線の軌跡から検出したい動画を指定し,検出区間と検出領域を設定することで,対象者の視線を①クランプの取り付け作業中の手元,②取り付け作業中のファントームの確認,③器具渡し時の術者の手の確認,④器具渡し時のファントームの確認,⑤器具渡し時のファントームと術者の手の同時確認の5つに検出することができた。視線データは,区間内の注視時間,角度,視線の移動速度,瞬きに分析することができた。 器具の受け渡しの一連の動作を眼球測定装置と動画測定カメラを用い,実視野から視線の配り方を科学的に解析することが可能となった。これにより,器具の受け渡し時に生じるエラーを“どのタイミングで何を見てエラーが起こるのか”を視線の軌跡からより詳細な分析できると考える。 以上については日本歯科衛生教育学会(平成25年12月)にて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に開発した動画解析ソフトを測定に導入することで,以前の2次元的なテスト画像の解析と比べて格段に素早く,且つ被験者が見ている実視野を再現して分析できるようになった。すでに臨床経験のある歯科衛生士の眼球運動のデータと従来型の教育を受けた学生の眼球運動のデータの測定は終了している。また,このデータから歯科衛生士と学生のエラーの発生率も分析済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
ラバーダム防湿を行う際のクランプの試適時の視線の配り方について,実視野から抽出した臨床経験のある歯科衛生士の眼球運動データと従来型の教育を受けた学生の眼球データを比較し,ヒューマンエラー発生率と影響を与える因子を分析した結果,以下のことがわかった。 ヒューマンエラー発生率は歯科衛生士55.6%,学生60.0%とそれほど大きな差はみられなかった。しかし,エラーのパターンは歯科衛生士が「渡す」段階のエラーが大きな割合を示したのに対し,学生はクランプをクランプフォーセップスに取り付けるという準備段階も含む複合型のエラーが多く発生した。 このことから,正解者とエラーを起こした者の視線の配り方を分析し,エラーを起こさない教育法(『どこを見れば間違わないのか』,『どこをどのタイミングで見れば間違わないのか』)を確立する。この教育法に基づいた講義を受ける学生を実験群とし,従来型の教育に基づいた講義を受ける学生をコントロール群とし,受講後1か月経過した後にラバーダム防湿を行う際のクランプ試適を想定して器具渡しを行ってもらう。その際の視線の配り方の眼球運動データを測定し解析を行うとともにエラー発生率も比較する。これにより,ヒューマンエラー削減に有効な教育法が確立できると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
被験者として、臨床経験のある歯科衛生士は歯科医院に勤務している歯科衛生士を予定していたが、『ラバーダム防湿を通常の診療で実施している』という条件では規定人数が確保できなかった。そのため、本学敷地内の日本歯科大学新潟病院に勤務している歯科衛生士を被験者として協力してもらったため、謝礼分の人件費が予定より減額となった。 次年度は通常の眼球運動の測定のほかに、測定1か月前の講義受講を実施するため、被験者には2回の時間的拘束が生じる。また、実験群とコントロール群に分けて講義を行うため、被験者の数が倍になる。今後は第一段階で従来型の教育法の講義、視線の分析データから見るポイントを絞った新教育法の講義を各群に実施し、1か月後に『ラバーダム防湿の試適』を想定した器具渡し時の眼球運動の測定を行い、分析する予定である。
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