2013 Fiscal Year Research-status Report
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24592903
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
上野 剛史 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (30359674)
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Keywords | 酸化ストレス |
Research Abstract |
炎症状態にある生体組織では、多くの活性酸素種が発生することが報告されている。過剰に発生した活性酸素種は、顎関節においては骨芽細胞や軟骨細胞の代謝に障害を与え、ひいては治癒の遅延、骨・軟骨の変性などを引き起こすことが知られている。まず本研究では、この活性酸素種により生じる酸化ストレスを実験的にシミュレートし、活性酸素種の細胞機能抑制効果を検討した。実験的な酸化ストレスの付与には、代表的な活性酸素種であり、入手および操作性の容易な過酸化水素を用いた。この過酸化水素を作用させると、接着や代謝などの、細胞の基本的な機能が阻害されるが、多量に用いると細胞死を引き起こす。そのような高濃度で全ての細胞を死滅させてしまうと実験が成立しないため、低濃度で用いて細胞死までは誘導せず、生体の炎症状態をシミュレートするような実験系を設定した。細胞は比較的入手しやすく、取扱いもそれほど困難ではないラット組織由来の軟骨細胞を用いた。本年度は、酸化ストレスにより抑制された細胞機能に対して、主にアミノ酸誘導体(AAD)を用いた機能回復効果を評価した。AADの投与には数種類の濃度を設定し、至適濃度の検討も行った。その結果、酸化ストレスにより低下した軟骨細胞の接着機能および代謝機能が、AADの添加により、回復することが示され、同時にある程度の至適濃度が存在することが示唆された。今後の課題として、分化能などの機能の評価や、AADの効果的な投与方法を検討することが必要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験的な酸化ストレスの付与には、代表的な活性酸素種であり、かつ入手および操作性の容易な過酸化水素を用いた。AADは抗酸化剤であることから、その付与により、直接的に活性酸素種を減少させているかどうかを検討したところ、その作用はごくわずかであることが確認された。つまり、AADが単純に活性酸素を消しているだけではなく、細胞に対して直接的に作用してその機能を亢進させている部分が大きいことが示唆された。今後、AAD単体の効果などによるメカニズムの検討や、投与方法の検討など、行うべきことはいくつか挙げられるが、少なくともAADによる酸化ストレスの回復効果は確認されており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
アミノ酸誘導体(AAD)の投与方法を検討する。現在、3段階の濃度勾配に設定したAADを付与したところ、直接的に作用させる場合には、有効な濃度が存在することが確認されている。しかし、実際に使用する場合には、担体を用いて、作用時間や濃度をコントロールし、効果的に作用させることが望ましいと考えている。担体をどのようなものにするかは検討中であるが、最終的にはAADと併用して、複合生体材料として、これを最適化することを目指して研究を進行させていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の実験は現有のもので行ったため、当初の予定よりも支出が少なくなった。また、予定していた学会発表も別の仕事と重なりキャンセルしたため、旅費分の支出も少なくなったと考えられる。 次年度はディスポーザブルの器具や試薬が不足しはじめているため、主にそういった消耗品を購入する予定である。またデータ解析のためのPCも必要になると考えられる。国内および海外での学会発表も予定しており、その旅費も申請させていただく予定である。
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Research Products
(2 results)