2012 Fiscal Year Research-status Report
ジルコニア・歯質接着界面における機能性モノマーの分子制御
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24592914
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
長岡 紀幸 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70304326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 卓也 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40324793)
入江 正郎 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90105594)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ジルコニア / リン酸エステル / カップリング / 試適 / 唾液汚染 / 歯質接着剤 / 補綴装置 |
Research Abstract |
接着のためのジルコニア表面処理は、シランカップリング剤、または歯科用リン酸エステルモノマーによるカップリングで、高強度接着と高耐久性が得られる。ジルコニアに適応する市販の臨床用プライマーには、シランカップリング剤とリン酸エステルモノマーの両方を含有するものが散見される。シランカップリング剤とリン酸エステルモノマーの両方を含む処理剤を試作し、ジルコニアを処理したところ、十分な接着強度と耐久性が得られた。この処理剤で処理したジルコニアを十分に洗浄後、光電子X線分光(XPS)分析したところ、リン酸エステルモノマー由来のリンは検出されるものの、シランカップリング剤由来のシリコンは検出限界以下であった。シランカップリング剤のみで処理した場合、シリコンを検出できることから、混合溶液で処理した際にはリン酸エステルモノマーが優先的に吸着することが示唆された。 臨床において、補綴装置は試適され、唾液で汚染される。ジルコニア表面の唾液汚染は水洗だけで除去できず、水中での30分間の超音波洗浄でも除去できない。唾液汚染されたジルコニアを水洗後、リン酸エステルモノマーを含む市販のプライマーを塗布し、洗浄すると、リン酸エステルによるカップリングは認められるが、唾液汚染が残っていることが明らかになった。この唾液汚染の影響は、せん断試験の結果から耐久性に影響することが示唆された。リン酸エステルモノマーを含有するワンボトルタイプのセルフエッチング歯質接着剤をジルコニア表面に応用した。本手法は、せん断試験から、高強度接着、高耐久性を得られた。また、歯質接着剤塗布後に洗浄しXPS分析すると、唾液汚染が除去できていることが明らかになった。せん断試験による接着強度、耐久性試験と、ジルコニア表面のXPS分析結果に良い相関が得られた。本手法は簡便かつ効果的であり、分析結果による裏付けが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ジルコニア表面のカップリング処理法、唾液汚染の除去法について検討した。唾液汚染除去とカップリングを同時にでき、高強度接着と高耐久性を得られる、簡便かつ効果的な方法である。これらの結果は、せん断試験による接着強度試験と耐久性評価だけでなく、唾液汚染の影響、モノマーのカップリング状態を、ジルコニア表面のXPS分析で評価し、比較検討したものである。せん断試験の結果と、XPSの分析結果に良い相関が得られ、唾液汚染によるタンパクの吸着とリン酸エステルモノマーの分子レベル評価ができたといえる。この結果は、日本歯科理工学会、日本接着歯学会で発表し、優秀発表章を受賞することができた。 シランカップリング剤とリン酸エステルモノマーの両方を含有するセラミクス用プライマーをジルコニアに適応した評価では、試作処理剤を自作し、接着強度、耐久性試験と共に、ジルコニア表面のカップリングモノマーの分析をXPSで行った。この実験は当初、平成25年度以降に実施する予定であったが、平成24年度中に実施することができた。 大気圧プラズマを応用する研究は、1平方cmあたり1秒以下の処理時間でも親水性が得られ、表面に水酸基が付与されることが明らかになった。従来の減圧環境でのプラズマ処理、または紫外線照射による方法と違い、大気圧下で行えるために極めて簡便である。 平成24年度の研究は、当初の予定を完了し、十分な成果を得られたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
補綴装置を歯質に接着するには、歯科材料のカップリング処理、セメントによる合着、歯質接着、すべてにおいて十分な接着強度を得られ、耐久性を持つことが求められる。また、もしも補綴装置が脱離することがあっても、歯質に2次カリエスの発生を抑制することが重要である。 次年度以降は、①強い歯質接着と高耐久性をもつ歯質接着システムの解析、②2次カリエスを抑制する歯質接着剤の開発、③ジルコニア表面に対するリン酸エステルモノマーのカップリング化学状態解析、④ジルコニア以外の歯科材料のカップリング処理に対する材料解析の応用、を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
材料と歯質、または材料と材料界面の観察では、文部科学省のナノテクノロジープラットフォームを利用し、3次元観察を試みる。つくばの独立行政法人物質・材料研究機構(NIMS)に設置されている装置を使用する予定であり、使用料と観察場所指示のために出張旅費が必要である。2次カリエスを抑制する歯質接着剤の開発では、産業技術総合研究所・四国センターで開発された抗菌材料を使用する予定であり、材料購入費および、四国センターへの出張旅費が必要である。また、材料、歯質のTEM観察は、岡山大学工学部に設置されている収差補正STEMを利用するため、利用料金が必要である。観察試料作製費も必要となる。 3次元観察では、得られたデータ量が膨大になる。さらに、この3次元データの解析が必須なため、高速に大量のデータを処理できるパソコンが必要となる。データ解析を進める上で、必要になった時点で購入が必要になる可能性がある。 得られた成果は、日本歯科理工学会、日本接着歯学会での発表を予定している。また、日本顕微鏡学会と分科会での資料収集のため、出張旅費が必要である。
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Research Products
(6 results)