2012 Fiscal Year Research-status Report
抗菌界面活性剤のアクリルレジンへの安定分散とレジンのバルクおよび表面物性への影響
Project/Area Number |
24592927
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
根津 尚史 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (40264056)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 抗菌界面活性剤添加アクリルレジンの調製 / 抗菌物質分散方法 / 機械的強度評価 |
Research Abstract |
種々の衛生用品で抗菌性と安全性が認められている陽イオン界面活性剤の塩化セチルピリジニウム(CPC)をアクリルレジンに添加し、安定に分散させる方法を検討した。当初、比較的長い炭化水素鎖を有するCPCはモノマーであるメタクリル酸メチル(MMA)に溶解すると予想して臨んだが、実際には非常に溶解度が低いことが確認された。そこで、(1)粉末状のCPCをポリマー(PMMA)粉末と混合して粉液重合を行う(単純添加法)、(2)CPC、MMAの双方に親和性の高い共溶媒を見出し、CPCを溶液状態でMMAに添加して粉液重合を行う(共溶媒法)、二つの添加方法を試みた。 板状のアクリルレジン重合体を調製し、蒸留水への37℃/24時間浸漬前後の重量変化と浸漬液の溶出成分の紫外可視分光分析から吸水および成分溶出挙動を調べ、板状試料の機械的強度(ビッカース硬さ、曲げ強さ、弾性率)測定を行い、CPC添加の影響と水中浸漬の影響を評価した。曲げ強さ、弾性率測定には、初年度に本研究費で導入した小型卓上試験機(島津EZ-XL5kN)を用いた。 直接添加法では水中浸漬後、未重合のMMAの溶出が認められた。添加CPCの溶出は予想よりも少量であったが、添加量が多いほど増加した。機械的強度へのCPC添加および水中浸漬の顕著な影響は認められなかった。レジン重合体内部にはCPCが粉末状態で分散している様子が認められた。これに対して、共溶媒法でCPCをレジンに添加した場合、吸水による重量増加が顕著であったが、CPCの溶出は直接添加法に比べてごくわずかであった。機械的強度は直接添加法に比べ著しく低下したが、水中浸漬の影響はほとんどなかった。レジン重合体中にCPC粉末の分散は認められなかったが、褐色の着色が認められた。現時点では強度、審美性(非着色性)、CPCの自然溶出の各面から直接添加法が共溶媒法よりも有利であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度に遂行を計画した事項は以下のとおりである。 1.アクリルレジンモノマーへの抗菌界面活性剤の分散方法の検討 2.陰イオン化アクリルレジンポリマーと陽イオン界面活性剤の塩の調製 3.1および2で得られた材料を用いた改良アクリルレジンの重合 このうち1および3をほぼ計画どおり実施できた。2および3の実施が遅れているが、計画では2の重要度を1に比べて低く設定しているので、全体として遅れは深刻ではなく計画研究は概ね予定のとおりに進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
抗菌性界面活性剤を共溶媒に溶解後、MMAに添加する方法(共溶媒法)で生じた褐色物質の同定を行う。このために現有の赤外分光光度計、X線光電子分光光度計等を用いた化学分析を2年次に実施する。 当初計画では、界面活性剤の別の配合法として陰イオン性レジンと陽イオン性界面活性剤の混合も検討していたが、実施には至っていない。そこで、ポリメタクリル酸/ポリメタクリル酸メチルコポリマー(陰イオン性レジン)を用いて陽イオン性界面活性剤の吸脱着挙動を調べる実験を2年次に計画している。なお、異なる3級アンモニウム基をもつ界面活性剤として塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)についてもCPCと同様の実験を行う予定である。 一方、試作レジンについては抗菌性評価が必要であり、Streptococcus mutans、Candida albicansなどの口腔内常在菌への作用を評価する生物学的実験を、2年次もしくは3年次に計画している。ユニークな方法として、試作レジン表面を持つセンサーを作製し、水晶発振子マイクロバランス(QCM)法で試作レジンの抗菌性を評価する方法も検討している。また、最終的には本課題遂行期間内に試作レジンを用いた義歯床の製作を試みる。この場合、必要になれば連携研究者を追加することもありうる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
レジンの化学分析(重合度、着色物質の同定など)に現有の赤外分光光度計を使用しているが、装置の故障が生じたため修理費を急遽確保する必要が生じた。然るに、サービス技術員のスケジュールの事情で年度内の修理が実施できなかった。これを2年次の交付が確定次第執行し、化学分析にかかわる2年次の計画研究を円滑に実行したいと考えている。
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